第4話 人間の本性

 「違う!主人は悪くない! 悪いのは全部いじめた奴…あいつらが主人を奈落の底に突き落とした!」




だまれ!天使という名の偽善者め! このアタシが一番ご主人様の事を思いやってるのよ!


ご主人様の天使を気取っているが、貴方だってイジメられている奴がいれば傍観するに決まってる。



大体、保身に走るのが人間の本質なの。「イジメ反対!」と声高らかに叫んでいる承認欲求お化けのクズな連中も、身近にあるイジメは黙認する。もし身内がイジメ加害者になろうもんなら、「○○が悪いから私の娘は悪くない!」とか言って全力で保身に走る!アタシ知ってるもん。ご主人様はイジメ加害者よりも、そんな”偽善者”が真っ先にこの世から始末されて欲しいと願っている事を!



だからなのかなぁ?ご主人様がとある美少女ゲームをプレイした時の話だけど、やってた時は感動して(笑)それなりの点数をつけていた。でも後から思い返すと、シナリオは偽善っぽいし、登場人物は全員偽善者ばかりに思えてきてだんだん吐き気がしてきたんだよね(爆笑)だからシナリオ0点!理由は気分が悪くなるから!イラストや音楽や声優さんは良いけど、0には何をかけても0。でもそんな事は言えない!言ったら叩かれちゃう。それでも外に吐き出さないと気が済まない!だから苦し紛れに出たご主人様の言葉は「この作品は読みにくいけど…感性の問題かな」だって!美少女ゲーム如きで自己欺瞞に陥っているのアタシ知ってるよっ!




でも全ては感性の問題。美少女ゲームすら満足に楽しめなくなっちゃったご主人様!一体誰のせいなんだろうね~



 「…主人をこんな感性にした社会を恨む。賠償金でもいいけどそんなのは証拠が無くて無理…、復讐…社会に復讐してやる!!!!」




ふーん、天使がそんな物騒でキチガイじみた言葉を言っていいの?



人間という生き物は自分勝手なの。


金や承認欲求を満たすためなら、他人を晒す事だって厭わないんだからっ!




勿論、アタシのご主人様も例外ではない。



中学時代のご主人様は、イジメられていた事ともう二つ、何をやるにも石橋を叩いて渡るくらい慎重だったし、怒られたくないという特性があったから、分からない事があっても誰にも聞けなかった。


中一か二…のどっちだったかな~忘れたけど、とにかく日常的にイジメられていた時に、ご主人様は他人が作った成果物を盗むという罪を犯したの!そしてその成果物を、「僕が作りました」と言ってその科目の先生に見せて、それを自分の評価にしたの!だったら、自分の成果物は?…恐らく全体の1割も進んでいなかったはず!でも居残りになるのを恐れた。だって大好きな部活にまで悪影響を及ぼすから!だから苦し紛れで盗んだ!今でも盗まれた被害者である生徒(しかもイジメとは関係のない他クラスの生徒!)の名前はハッキリと覚えているし、当然ご主人様も…ね。 




その時のご主人様は、クラスメートの中に友達なんていないから誰にも聞けなかった。だったら先生に質問すれば良いじゃん!…ってなるけど、その科目の先生って頭丸坊主の長身だったから怖くて聞けなかったんだよね。




ご主人様が日常的にイジメられていたとは言え、いくらなんでもこれはあんまりにも酷い事だと思う!アタシはこの出来事以降、ご主人様とは口を利かないし、今でも軽蔑してる…イジメられた悲惨さを充分に打ち消せる程の事件だったわ!




今じゃあり得ないでしょ?絶対にバレるはずでしょ?多分石ころのような存在価値しかなかったから、誰も気にとめてすらいなかった。お陰で完全犯罪は成立したわ!




アタシ、実は本気でバレたら良いと思ってた。




そこからちょっとだけ改心したらしく、高校からはちゃんと、同級生や先生に教えてもらえるようになったらしい。大学では話せそうな人を捕まえて、上手く立ち回っていた。働き出したら積極的に質問しだして、そこはちょっとだけ感心した。




でもそんな時に、ご主人様は新聞を見たの!


ご主人様のせいで被害にあってしまった生徒さんが、今年から学校の先生をやると知った時!ねぇねぇ~どんな気持ちになった?




あの忌々しい成果物を壊そうとでも思った?でも出来ないよね!だってあれはもう、”自分の成果物”として認識しているはずだから!






あ、そう言えば、ご主人様が一人寂しく醜態を晒していたの、思い出しちゃった!




二ヶ月程前に、こんな事があったの。その発端は、大量の質問を送りつけた幼馴染みの友達のある呟きだったね。21個もの文章や写真を一気に送りつけた人と同じね。




小中学校が同じだったその人がある時こう呟いたの!「小二までイジメられていて、小三以降はイジメもなくなり快適に過ごせました」だってさ。


それを偶然知った時、ご主人様は何したと思う?






本気で死にたがっていたの!でも怖くなって『死にたくない…死にたくない』って一人ベッドの中でずーっともがき苦しんでいたの!




因果関係なんて不明だし、小学生の頃なんて詳細に覚えてるはずないのに。




ご主人嫉妬してる!友達が栄光を手にしている中、自分の境遇があまりにも惨めすぎて死にたくなったんだ!


ホントならさ、『Fが全ての不幸を肩代わりして、幼馴染みの友達が栄光を手にする』というなんて誇らしいストーリーなのに!ま、ティンコンカンコンしないだけまだマシね!あ、ご主人様は有名人じゃなかった、てへ。




あ、まだあった。


ご主人様ったら、大切な妹さんにも嫉妬してる!




妹さんってよくご主人様に学校で楽しかった事を話してたよね?


そう、話すだけなら、まだいいんだよ。




でもでも、《お兄ちゃんは、中学校で楽しかった思い出とかある?》とか聞かれたら…部活以外、無いよね(笑)




『話すな』とか言えないから、部活ネタが尽きたら『よく覚えてない、忘れた』とか言ってごまかしてる惨めさ!


『そんな事を聞くから僕は不幸になるんだよ!』なんて、愛おしい妹さんには死んでも言えない言葉だからね~




あ、ご家族の事については触れない方が良かったかも。とりま毒親じゃなくて良かったね~とだけ言っておこうかな。






醜い勇気や信念のおかげで得した事なんてなーんにもない!勇者や悲劇のヒロインにでもなったつもり~?


逆にマイナスな事にしかなってないじゃん!変な感性になっているし、対人関係は拗らせてばかり、すぐに退職して立派な親不孝者にもなっている。…挙げ句犯罪行為までしてるし!…





…結局、勇気や信念ってそんなものなんだよ。


人間ってそんなもんなんだよ。


ただただ、醜い…






ご主人様はもう忘れているだろうけど、部落差別って言葉…聞いた事ある? もちろん今は無いよ。でも聞くところによると、差別があった地域がある学校ってイジメがないらしいよ。小学校一年生から”ちゃんとした”人権学習を行っているから、差別はダメっていう意識は他の地域より高いみたい。




だからたとえ学校が荒れていたとしても、イジメはほぼ聞かないらしいって。




でもご主人様が生きているのは都会だから!当時の校長や教育委員会なんて皆保身ばかりしか考えない!問題があったら首が吹き飛んじゃうから隠蔽ばかりだよね(笑)だからイジメは見過ごされちゃいがち!犠牲者が出ないと動かないなんてどうかしてるわ…今は知らないけど。




『そんな事言ったり思ったりしたらダメですよ』と皆口にはするけど、内心では差別意識満々、平気で人を見下す…これが資本主義の本質ってやつかな?教えて!インフルエンサーとかいう社会のデブリみたいな人達!

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