第2話 天使と悪魔

そうしてまた現実世界に戻ってくる。ふと、読んでいた本に目がいった。


就職するまでまともに読書なんてした事はなかった。だが退職後病状が落ち着いた時に、試しに美少女ゲームに出てきた小説・哲学・心理学の本を図書館から借りてきて読み始めたら、いつしか本に魅了されるようになったのだ。




「読書は飽きないな…自称ASDのこだわりが出ているかも」




時計を見る。


「やべ、もう寝る準備をしないと!」


天使と悪魔について語るのは後にして、いつものルーティンをこなし、寝床につく。




「…寝て起きたら、当時の顧問と部員を交えた飲み会か」


「飲み会…お酒は飲めないけど、楽しみだな」




僕は中学生時代に、とある部活に所属していた。部活があったからこそ、学校に行けたと言っていいだろう。イジメられるのが日常なら、部活はまさに非日常であり、とても楽しい時間だった。何より、”全てを忘れて”熱中して取り組めたのだから…これで精神が保たれていたと言っても過言ではない。


でも顧問の先生は精神論者故にとても厳しく、それが原因で高校では部活に入らなかった。


だが、人生として見たときに、中学生時代の部活は僕の人生にプラスの意味で大きな影響を与えた事に異論はない。




今回の飲み会は 同じく部員であり同い年の親友である『M(仮名)』が飲み会を企画し誘われた形だ。参加するのは僕とMと中学生時代の顧問の先生の三人だ。




Mは高校卒業後、地元の大学に進学し、今年で卒業する。遠方に就職するとの事で、お世話になった顧問の先生に挨拶という名の飲み会を開くとの事。その飲み会に近場に住む僕も誘われた形だ。




顧問と会うのは、数年ぶり。最後に会ったのは高校を卒業する時か。ちなみに僕の境遇についてはMから直接話したらしい…無職がバレる事は別に構わない。




それにしても、楽しみだ。




その誘いを受けた僕は、同じく同学年の部員であり今は遠方に住んでいる『H(仮名)』と『O(仮名)』にLINEした。二人ともビデオ通話で参加可能との事だった。他にも部員はいるのだが…この歳になると連絡できる人間も限られる、という訳だ。




「今から寝て起きたら、18時前には家を出て、友達Mと合流。18時30分から顧問の先生と共に飲み会開始、飲み会に来られないHとOはビデオ通話で参加出来る。Oは19時半から20時までの間で10分間参加可能、Hはその前後あたりで…か。よし!」




  『楽しみだね』




天使の声が聞こえてくる。




「ああ、とても楽しみだよ」






俺の心には、”天使”と”悪魔”がいる。


いつからいたのだろうか…姿形に関してはおおよそ、不老不死の美少女ゲームのヒロインみたいな感じだと思って貰って構わない。




まず始めに、天使から紹介したい。




天使はいつも側にいてくれる、そして僕の背中をそっと後押ししてくれている。まるで聖母のような安心感だ。だけど困ったことに、『その行動はダメ!』って感じで注意はしてくれない。ずっと”起きた事に対してのみ”言及し、助言をするだけだ。それでも絶大な安心感には変えられない。




 『ありがとう。天使としてこの上ない幸せです』




「本当に天使は頼りになるよ。そう言えば…悪魔とは仲良く出来ているかい?どうやら僕とは口を利いてくれないんだ」




 『…たまに喧嘩する事もあるけど、基本的には仲良くしていますよ』




「それなら良かった」



一方の悪魔は…おや?僕とは口を利かないハズの悪魔が出てきたそうでうずうずしている。(『人間のクズはすこーし黙りなさい!』)抑えようにも(『ふん!アタシは悪魔なんだから抑えられる訳ないでしょ!』)無理なので、小悪魔キャラのヒロインが話すという体で聞いて欲しい。




この小悪魔は僕との会話を好まず、徹底的に貶してくる(『小悪魔じゃなくて悪魔なんですけど~ひっどーい!ま、もうすぐ乗っ取るからいっか!』)。何だか眠くなってきたし、僕が寝ている間気の済むまで喋らせてやるとするか。


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