第6話
「いや、エリス帰ってこないし……転移魔法使えなかったのに転移魔法でどっか行ったし……」
「私に!教えてって!言った!」
「でも2時間くらい帰ってこないし……結構待ったんだけど……」
「…………ご、ごめんなさい……」
謝罪の後、また腕に強く抱きついて絶対に離さんと言わんばかりに締め上げてきている。だから痛いって。
「緩めて」
「いや……」
「痛いから」
ちょっとだけ緩んだ、素直ではあるんだよな。
「私が……教えたかった……のに……」
「俺もエリスが教えてくれたらよかったよ」
待ってる2時間は他の魔法も覚えたとはいえ転移魔法に苦戦していた時間は結構長かったように思う。俺は一つでも多くの魔法を覚えておかないとどうなるかわからない。ジョブなしだしね!
魔法使い系の専門ジョブはないかもしれないが……勇者パーティー唯一のジョブなし!魔法イマイチで荷物持ちとか追放されそうで普通に嫌だ。エリスは庇ってくれるかもしれないが……いない時に追放されるのも前世のお約束みたいなもんだからな。流石にエリスは変心しないだろ、しないよね……?そこのお約束は流石に心が折れる気がするぞ。
「♪~(ニコッ)」
なんかすごく機嫌が良くなってるな。さっきは殺されるとすら思ったんだが……
「なんでも……聞いて……教えるから」
「といっても、色々読んだからな……また新しい本を漁って魔法を覚えないと」
「何を読むの?」
「今からまた探すんだよ、手分けして探そう」
「(ギュウ)」
手分けする気がないな……。
「手分けをして……」
「いや!また……いない間に大司教様に魔法教わるんでしょ!」
「魔法の本が理解できなければ教わるかもしれないけど……」
「私が……教える……」
「それでいいから手分けして探そう……」
エリスは数度の浮気をした後の旦那を見るような疑いの眼差しを向けながら、そっと抱きしめていた俺の腕を離し俺が向かう本棚の反対側へ向かっていった。その過程で何度も振り向き疑いの眼差しを向けてきたが俺は微笑み返し続けた。
俺そこまでのことやったか?
軽く読みつつ、水の浄化魔法やら加熱魔法やら振動魔法やらを覚えながら他にめぼしいものはないかと魔法書の棚を順番に読んでいるとエリスがやってきた。
効果音があったらむふー!!みたいな感じだな。ない胸を張って腰に手を当てさぁほ褒めろ、頭を撫でよとしてくる子どもそのままだ。前世の姪っ子を思い出す。
「いろいろあつめた!」
「おう、ありがとうな」
「じゃ……じゃあ教えてあげる!」
「うん、読んで理解できなかったらな」
まだ胸を張ってるエリスの頭をなでながら、一度場所を取っていた机に戻ることにした。また腕に抱きつかれなんだか移動しづらい。
「えーと……音を増幅する魔法、馬車の揺れを抑える魔法、真贋を見極める魔法?」
「(じーっ)」
音の増幅はアンプみたいなもんか?もしくは拡声器みたいな……馬車の揺れは板バネみたいな感じかな?衝撃吸収とかじゃダメ?真贋は……えーと……いわゆる鑑定魔法か?真贋魔法だけピンとこないな……何を持って表すんだ?本物かどうかを。
「エリス、この真贋魔法……」
「これはね、これはね!その物の正体を明らかにする魔法だよ!」
「明らかにする?」
「あなたは何なのって聞くの!」
どういうことなんだ……?直接物に聞くのか?試そうにもなんかないものかな……。
俺達の席の裏棚にあるタイトルのない古書で試してみるか、真贋魔法!
心霊事件のあった物件王都編Part3~買ってはいけない最悪物件~
成功だ!すごい不穏な本だな……一応確かめてみるか……。うん、あってたな……エグい事件起きてるな……心霊の概念はあるんだな。除霊魔法とか探しておこう。
「ありがとうエリス、成功したよ」
「えへへ……えへ……えへへ……そうでしょ?」
名誉のためにえへへと言ってたようにしておくけど実際はデヘヘェー……見たいな感じなんだよな。
「また探してくるね!」
「あっ……」
そっちは俺が探してたほうなんだけど……仕方ない、さっきまでエリスが探してたほうを見に行くか
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