第7話

 エリスが探していた側にもいろいろな魔法の本があった。サビ取り魔法とか地味に便利じゃないか?私生活が大分楽になる気がする、村の水車周りとか活躍できるじゃないか。覚えておこう。いや、勇者の旅ですぐ使うことはないかもしれないけど。


 硬度を上げる魔法、ニオイ取り、方向がわかる魔法……地味だが役に立つな、魔法を作るまでが大変なんだろうな。ここまで読んでも自力で1から開発できる気がしない。考え方で既存魔法を応用する感じかなぁ……。

 いい香りになる魔法?覚えておこう。除霊魔法!じゃあ本当にいるんだな……亡霊とか……。俺がさっきまでいたところの棚と比べるとなんかより一層主婦のための魔法みたいな……女性向けっぽいのが多いなこっち。


 なんかここだけ別に分けてあるな、エリスか?魅力的に見せる魔法?異性にモテる魔法、胸が大きくなる魔法……。後は魔法じゃない本だな、パス。

 前の2つは見ておこう。常時発動は出来ないタイプだな……いつでも魅力的に魅せる方法も考え方とか浮かばんしな……常時異性にもてるも想像ができないが……。

 まぁ、一応試しで使っておくか。


「クロくん♪」

「おぅ、何かあったか」


 異性にモテる魔法を使っていたせいかビビって変な声が出てしまった。なんか咎められてるみたい……効いてるんだろうか……。


「異物を選り分ける魔法と異物を取り除く魔法!どう?どう?」

「お、便利だな」


 早速覚えよう!それにしてもこの異性にモテる魔法効いてないかもしれんな。機嫌がいいエリスのままだ。この元気でハキハキしているSSRエリスはよほど機嫌が良くないと会えないやつだ、久々に見たな。


「うん、覚えられたぞ」

「(ムスー)」


 すぐに機嫌悪くなってしまった、だって出来たから……。機嫌直してくれよ、異性にモテる魔法!異性にモテる魔法!だめそう……


「(じーっ)」

「どうかした?」

「ううん、難しい魔法探してくるね!私の助言が必要なやつ!」


 あれ?まだ機嫌がいいな、魔法のおかげ?いやこの感じは違うな、不発か。まぁ仕方がない前世でもモテるという経験はないしな。どうせ俺のレベルではモテるということが想像できなかったんだろう。魔法に頼るようじゃダメだな、まぁ頼れなかったんだが。


 そこからコケを落とす魔法や食材のアクを取り出す魔法を覚えていた。というか攻撃系魔法あんまないな。隕石魔法って見ても想像力の問題かなんかで使えないから置いてあったのかな?とか考えていたらマクイラさんがすっと現れた。


「クロ様、この地震魔法、分解魔法と言う魔法なのですが」

「物騒ですね……」

「まぁ……今では使える人間もいないので……」

「ちょっと試してみます」


 といっても前世は地震大国、この世界にプレートの概念があるのかわからないが魔法自体がふわっとしてるので使えるだろう。そもそも名前がついてる時点で地震はあるんだろうし。


「おお!これが地震魔法!勇者様!?」

「クロく…………」


 すごい速度で腕に抱きついたと思ったらマクイラさんを見て固まってしまったエリス、石化魔法か?


「大司教様……」

「勇者様、どうかマクイラとお呼びください」

「……」

「立場があるからエリスから様付きで呼んでほしくないんだって」

「……わかった……」


 何だこの空気は……エリス、いつもより感情の上下が激しくない?


「ところでエリス、どうしたんだ?」

「なんか……ゆれた…‥」

「それは……」

「ああ、今は試した地震魔法だ、成功した」


 それを聞いた瞬間エリスは片手で腕を抱きしめたままもう一方の手でぽかぽかと俺を叩き始めた。


「怖い……怖かった……」

「わかった、わかったから……」

「私が……クロくんのそばにいる時……それ以外使わないで……」

「わかった、約束するよ」


 ようやくぽかぽかと叩いてる行動をやめて再び両手で抱きつき始めた。魔法探すのはどうしたんだ?地震怖いのか。


「あの……分解魔法の方を試して頂いても……」

「ええ、わかりました」


 分解魔法って微生物による分解とかかな?それとも腐敗に寄る溶解の感じ?もしくは分子にして散らせるとか?とりあえず使ってみるか……。

 マクイラさんから差し出された謎の塊を分解魔法で分解しようと試す、がうまくいかない。もしかして原子だったっけ?原子と分子ってどっちだっけ?まぁ最小の物質にして分解すると考えてやってみよう。


「おおおおお!破壊すれば封印された魔物ごと殺せる封印石がこうもあっさり!」

「え、それは何ですか!?なんですか!?」


なんで急にそんな設定があること聞かせてくるの?今後石ころ見ても疑ってかからなきゃいけないじゃん……王都の石ころが大昔の魔王とかだったらどうするの?


「大昔にいた強い魔物を封印魔法で閉じ込めたものです、壊せば中身ごと殺せるのですが……封印魔法も失われまして……さりとてあまりの硬さに壊すことも出来ずで各地の教会にはこのような封印石がたまにあるのですよ」

「失われたのですか?」

「クロ様の考えで言うのならなぜ封印できるのか知識がないのでわかりませんから……」


 たしかに理論的に魔法で封印できるのはなぜとか言われるとわからんな、でも硬度を上げる魔法とか原理もわからんのに使えるしな。何が違うんだろう?イメージの強さ?


「ちなみに何が入ってたかわかります?」

「口伝だとその当時の魔王軍四天王ですね、まぁ口伝ですので信用はできませんよ、たまに封印石状態で封印を破る事例があるのですが……四天王が破れないとも思えませんし……まぁよくある盛った話でしょう」


 じゃあ俺は別に過去の四天王を倒したわけではないんだな。まぁ正直助かった、勇者パーティー過去の魔法軍四天王討伐とかハードルが上がって仕方ない。王都の石ころに魔王がいることもこの分ではあるまい。

 あれ?エリスは?


「勇者様ならクロ様が分解魔法で封印石を砕いてる間に本を探しに行きました、私も大司教用図書をまた探してきます。時間も時間ですし今日はこれで終わりにしましょう、夕飯の支度をさせます」


 と、いうことは昔の大司教様たちはその手の魔法が使えたわけだ。どういう思考回路で使ったんだろうな?原子やら分子やらも知らないであろうに……

 じゃあエリスを呼び戻すか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る