第54話 かくして災厄は終わりを告げた
天界が滅亡して三日後に、人族の国家もすべて滅亡していた。もちろん人族を絶滅させたわけではない。アインゼス竜皇国が滅ぼしたのは支配者層である。アインゼス竜皇国は容赦なく支配者層を滅ぼしていったのである。
アインゼス竜皇国軍の戦死者数はなんとゼロであった。アインゼス竜皇国軍の将兵の実領が飛び抜けて高いというのは確かにあるが、それにしても戦死者数がゼロというのはあり得ない事だ。
ではそれがなぜ可能であったのか?
答えはシュレンが用意した
レティシア達は捕虜とした支配者層を容赦なく処刑していった。
ヴェルティアの誘拐、そしてヴェルティアへの扱いに対してレティシアは激怒していたのだ。
シュレーゼント王国は最低な方法でヴェルティアを利用した。だが他国はどうか?連合軍に参加せずヴェルティアに全てを押しつけようという根性が気にくわないのだ。
レティシアにしてみれば出兵を行わなかった段階で、間接的にヴェルティアを利用しようとした犯罪者でしかないのである。そのため自分達は無実だという意見などレティシアにしてみれば"何をほざく"という思いしかないのだ。
「これだけ人族を痛めつければもう二度と異世界から誘拐しようなんて考えないでしょうね」
「普通に考えたら天界が滅亡したからもう異世界から誘拐は出来ないよな」
「ええ、そうなんですけど、異世界の方々を誘拐しようなんて二度と思わないでしょうね」
「それじゃあ、戻るとしよう」
「ええ」
レティシアとシュレンはそう言って一〇〇万のアインゼス竜皇国軍は転移門を通って人族の領域から姿を消した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おお!!レティシア無事でしたか!!それにみなさんも!!再び会うことが出来て私は嬉しいですよ!!」
転移してきたレティシア達にヴェルティアがかけよると嬉しそうにレティシアの手を握りぶんぶんと上下にふった。
「お姉様達もご無事で何よりでした!!」
「何という出来た妹なんでしょう!!自分が大変だったというのに私達の事を心配できるところなんてさすがは私の妹です!!」
ヴェルティアはそう言ってレティシアを抱きしめた。その様子を見た者達はみな顔をほころばせる。自分達の皇女達が仲が良いというのはアインゼス竜皇国の安定に繋がることをわかっているのである。
「よし、それでは……」
シャリアスがヴェルティアとレティシアの様子を見て微笑むが竜帝としての責務を果たすことにしたのである。
「竜帝シャリアスである!!」
シャリアスが話し始めると一〇〇万の兵士達が一斉に直立不動の姿勢になった。
「私は諸君等の功績に敬意を持ち、かつ誇らしく思う」
シャリアスの言葉に将兵達は誇らしいという表情を浮かべた。実際にアインゼス竜皇国軍は無敗であり、その強さはこの世界の者達に深く刻まれたと言って良いだろう。
「諸君らの名誉に対して竜帝の名において存分に報わせてもらおう。そして、家族に伝えるがいい。妻に子に親に祖父母に自らの功績を誇るが良い!!諸君らにはその資格がある!!」
『うぉぉぉぉぉぉぉ!!』
シャリアスの言葉に将兵達は一斉に歓声をあげた。歓声は大気を振るわし将兵達の誇らしいという感情が爆発していた。
シャリアスはもちろん今回の遠征に参加した者達全てに十分な恩賞を出すつもりでいたし、遠征に参加しなくても準備を整えた者文官達にも動揺に恩賞を行うつもりであったのである。
アインゼス竜皇国軍の将兵達は軍規を守るのは、きちんと恩賞を出すからである。シャリアスは現実的な利益を与えることで軍規を守るという図式を軽視することはない。現実的な利益を与えずに人を動かすなど無理なのだ。
「よし凱旋する!!」
シャリアスがそう言葉を締めくくると一際大きい歓声が起こった。
「それじゃあ、とりあえず我々は戻ることにする。またなマルト」
「ああ、お疲れさん。今度お前の国の美味いものを教えてくれ」
「もちろんだ。ミューレイさんの料理に負けない料理を用意しておく」
シャリアスとマルトはそう言って互いに笑う。
転移門が開きアインゼス竜皇国軍一〇〇万は異世界を後にした。
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