第53話 戦い終わって……
「さて、それじゃあ帰るとしましょう」
リフィが大きく伸びをしていうと全員が頷いた。
「あ、そうそう。ちゃんと後始末しておかないといけないわね」
アルティミアはそういうとポンと手を叩くとルオスの死体を光の檻に閉じ込めた。そして次の瞬間に光の檻の中に炎が巻き起こりルオスの死体を数秒で灰にした。
「じゃあ私もちょっとやっておこうかな」
ミューレイはそう言うと魔法陣を虚空に描くと都市全体を覆った。黒い柱が数百本地上に降り注ぎ、突き刺さる。
「これくらいでいいわね」
ミューレイはそう呟くと都市全体を闇が覆った。
「これは?」
「どこかに天使と神の生き残りがいると思うから逃げれないように閉じ込める結界を作ったのよ」
「なるほどね。ここから出られなければ、そのうち
「そうね。それが狙いよ。何十匹も探して駆除するよりも最後に生き残った一匹を駆除した方が楽と思わない?」
「それはそうね」
ミューレイの言葉にアルティミアはうんうんと頷いた。
例え生き残った最後の一匹がそれなりの強さになったとは言っても魔族七人全員で事にあたれば問題なく駆除することが出来るという算段であった。ある意味、傲慢の極致というべきものであろうが、それを可能にするだけの実力を魔族七人は有しているのである。
「それじゃあ、帰るとしようか」
マルトがそう言うと全員が転移術で天界を後にした。
一時間前までは栄華を誇っていた天界は、闇に覆われアンデッド達が跋扈し、天使や神達が互いに殺し合う地獄へとなったのである。これからどれくらいの年数をかければ神や天使達の中からミューレイの結界を破ることができる者が現れるのか誰にも分からない。そして出てきたところで魔族達七人に手を出せば間違いなく駆除されることになるのである。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
地上に戻った一行は取り戻した
「よしよし、これでちゃんと動くことじゃろう」
「これで楽が出来るな」
「お疲れ様」
マルト達は和気藹々という様子で
「ヴェルティア達はあとどれくらいこっちにいるの?」
「そうですねぇ。今妹のレティシアとシュレンさんが人族の国々を攻めてますから、それを考えればあと三日という所でしょうね」
「うーん、意外と早く帰るのね」
「ええ、何だかんだ言ってもう私は二ヶ月くらいアインゼス竜皇国を離れてますからね。みなが寂しかっでいることは間違いありません」
「そっか、そういえばヴェルティアって皇女様だったわね」
「はっはっはっ!!そうなんです!!」
ヴェルティアは楽しそうに胸を張って言う。
「さびしくなるわ」
「え?」
「ヴェルティア達が帰ったら寂しくなるって言ったの」
「そうなんですね…私も寂しいですよ」
「ヴェルティア……いつでも遊びに来てね」
「もちろんです!!」
ヴェルティアとリフィはそう言って抱き合った。
「あいつら、なにやってるんでしょうね?」
「ええ、なぜあそこまで哀愁を漂わせてるのかよくわかりません」
「お嬢とリフィも別に哀愁漂わせる理由なんか無いことくらい分かってると思うんだけどね」
ヴェルティアとリフィの様子を見てシルヴィス達が呆れたように言う。
ヴェルティア達が元の世界に戻った時に、すでに皇城の一角に家が建てられることが決定しており、その家とこの村の家を術で繋げ固定させることが確定しており、その家を通して自由に行き来できるのである。
「もう、冷静なツッコミはやめてよ。今悲劇の親友ゴッコしてるんだから」
「そうですよ!!せっかく楽しんでいたところに現実を見せつけないでくださいよ。シルヴィスもディアーネもユリもこの楽しさが分からないなんて心の機微がわかってませんね」
「いや、普通に考えて何やってんだこいつら?という感想しかわかないぞ」
シルヴィスの言葉に二人は大きくため息をついて可哀想な者という表情を浮かべた。
「クレナは私達の意見に納得してるわよね?」
「ふぇ!?」
突然、話を振られたクレナはわかりやすくビクリと身を震わせた。何となくこの場にいることが危険であると判断してこの場を離れようとしたのだが、リフィに呼び止められてしまったのだ。
「クレナ……心して答えなさい。上の身分に苦言を呈することは立派な忠誠だと思うんですけどね?」
ディアーネの言葉にクレナは直立不動になった。
「はっ!!このクレナ=ギルネア!!忠誠を誤るようなことはいたしません!! 私はヴェルティア様とリフィのやりとりは疑問であります!!」
クレナの返答にヴェルティアとリフィは口を尖らせた。
「みんな、ご飯よ」
そこにミューレイが声をかけてきた。
「あっご飯ですか!!ミューレイさん!!今日のご飯はなんですか!」
ヴェルティアがミューレイの元に駆けつけるとミューレイに楽しそうに尋ねている。
つい数時間前には天界を蹂躙していた一行であったが既に天界での戦闘など忘れているかのようである。
ある意味、この一行にとって取り立て話すようなレベルのことではないのだろう。
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