第52話 世界の終わり⑨ ~主神ルオス最後の戦い(後)~
「ギルノー……」
ルオスが憎しみを込めてギルノーの名を呼んだ。
「あ…」
ギルノーはルオスの言葉には答えずに苦笑を浮かべた。
「き、きさ……」
ルオスが怒りの声を上げようとした瞬間にリフィが延髄を容赦なく蹴りつけた。その威力は凄まじくルオスは吹き飛びまたも壁を突き破った。
「ギルノー、お前ルオスに何をしたんじゃ?あそこまで憎悪を向けられるのはただ事ではないぞ?」
ゴルザーが尋ねるとギルノーは首を傾げた。
「うーん、覚えがないぞ。単に儂が最初に目に入っただけじゃないのか?」
「その可能性はあるのう。あいつは昔からネチネチとした性格じゃったし」
ギルノーとゴルザーはそう言って互いに思い至るところがあるようでうんうんと頷いた。
「親父、義父さん、そんなの
そこにマルトが上世代に声をかける。
「ネチネチと
シャリアスもマルトの意見に賛同して言う。
「だろ?所詮器の小さいやつとわかり合うことに対して意味があるとは思えないんだよな」
「まぁ、俺も個人的にはそうなんだけどな。国を率いる以上、言ってばかりはいられないんだよな」
「立場があるやつって大変だな」
「まぁな。そうそうこいつら全滅させたらお前が統治するのか?」
「アホらしい。俺はお前のように責任感が強い立派な人格を有してないの」
「まぁ、お前基本的にちゃらんぽらんだからな」
「失礼なおおらかと言え」
シャリアスとマルトは戦闘の場とは思わないほど呑気な会話を交わしている。これは完全に精神的優位に立っている証拠だ。一対一であればこのような余裕は絶対にしない。
「おのれ……」
ルオスは顔を歪めて戻ってきた。
「おい、ルオス。もう
シルヴィスがとんでもないことを言い出した。
「な、なんだと?」
「いや、お前にこの窮地を乗り切るだけの手段はないだろ?」
シルヴィスの言葉にルオスは怒りの表情を浮かべた。さすがにシルヴィスの提案は受け入れられるわけがない。
「無いと思うか?」
「ああ、ここにはヴェルティアと同格の者ばかりだぞ。ヴェルティアとリフィの二人の相手でも完全に勝ち目無いだろ。もう諦めたらどうだ?」
「ふ、愚か者が」
「ほう、するとこの事態を乗り切る切り札があるというわけだ?」
「私が
「卑しいコソドロだからだろ。よっぽど躾のなっていない家庭で育ったんだな。哀れなやつだ」
シルヴィスの無礼極まる言葉にルオスはビキリと青筋を浮かべたが、それ自体に反論するような事はしなかった。
「私はある術を開発した」
「あっそ」
「その術は我ら神をもう一段階上の存在へと引き上げることができるのだ!!」
「でも完成してないんだろう?そんなものをほしがる人がこちら側にいるかな?」
「貴様はその術の情報を命乞いに使うとでも思っているのか?」
ルオスは醜く表情を歪めてシルヴィスを嘲笑する。
「私が
「要するに力が足りなかったからコソドロを働いたわけか……真面目に聞いた自分が情けないな」
「な、何」
シルヴィスの反応にルオスの威圧感が増した。
「ああ、そうそう。一つ教えておいてやらねばならんことがある」
シルヴィスはものすごく意地の悪い表情を浮かべてルオスへと言う。
「お前、もうすぐ死ぬぞ」
「は?貴様気でもくる……」
シルヴィスの煽りにルオスは理解出来ないという表情で返答しようとした。
シュパァァ!!
ドガァァァ!!
その時、ルオスの背後にユリとディアーネが音も無く現れるとそのまま必殺の斬撃を繰り出した。ユリの剣閃がルオスの延髄を容赦なく斬り裂き、ディアーネの
ルオスが崩れ落ちる瞬間にヴェルティアとリフィが一瞬で間合いを詰めると同時に顔面に拳を叩き込んだ。
ルオスの顔面は二人の拳により大きく陥没し、そのまま吹っ飛び床に転がった。
一拍遅れてクレナが倒れ込んだルオスの上空に現れるとそのまま双剣をルオスの心臓と鳩尾に突き立てた。
すでにルオスは死んでいるのだろうピクリとも動かない。
コロン……
ルオスの懐から
「ルオスさんの注意を引くために煽るなんてさすがはシルヴィスですね。でもどうしてわかったんですか?」
「いや、ディアーネさん達がここにいなかったからさ。何か狙ってるんだろうなと思ってさ」
「おお!! よくぞ見抜きましたね!!」
「一対一の試合というわけじゃないし、普通に想定してしかるべき事だろ」
「ですねぇ。それにしてもルオスさんの一段階上に引き上げるという秘術ってどんなものだったんでしょうね?」
「大したことないと思うぞ」
「どうしてです?」
「こいつは
「なるほどですね。よく分かりました!まぁいずれにせよ我々の大勝利というやつです!!」
ヴェルティアが胸を張って勝利宣言を行う。
天界は戦闘開始からわずか一時間で滅亡したのである。
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