第50話 世界の終わり⑦ ~衝撃の事実~
「ふふふ、
ルオスは
ルオスはかつてゴルザー達を追放した。ゴルザー達は権力などにまったく興味を示さず悠々自適な生活を営んでいた。
そのため天界を追放した際もあっさりと受け入れて下界の方へと移住していった。あまりにも天界に興味を示さなかったことでルオス達は自分達の価値を軽く見られた気がしてより不愉快になった。
下界へ追放した(ゴルザー達にしてみれば移住した感覚)がルオス達は目障りで仕方がなく何度も配下の者達をけしかけたが、いつも結果は同じであった。
ゴルザー達は天界の者達を殺すことはしなかった。まだ幼児であったマルトとミューレイを人質にしようとしたこともあったが、幼少時からマルトとミューレイの実力は凄まじく天界の討伐軍は蹴散らされてしまった。
何百回も討伐軍を送り続けているうちに
ゴルザー、ギルノー、イリュテ、エルマースの四人で作り上げた
そして、この度全員が村から離れるという好機を得て
ルオスは少しずつ自分の体に
「くくく…見ていろ」
ルオスの脳内でゴルザー達が跪き命乞いをする光景が浮かび歪んだ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ルオスが
突然、天界全土を揺るがす衝撃が襲った。
「何事だ!?」
ルオスは側に控える天使に問いかけると天使もまた動揺していた。
「ち……」
動揺を示すだけの天使達に苛立ちを覚えつい舌打ちをしてしまう。ルオスの舌打ちを受けて天使達はビクリと身を震わせた。
「ルオス様!!」
そこに側近であるイリュケが駆け込んできた。
「イリュケ何があった?」
「敵襲です!!」
「何だと!?」
イリュケの敵襲という言葉にルオスは驚きの声を上げる。天界には侵入を防ぐためにルオスが直々に結界を張っているのだ。その結界を破れる者などいないはずであった。
「まさか
「御意!!」
「く…まさか攻めてくるとは……いや、それだけこの
「はっ!!ルオス様、あとどれくらいで
「あと三時間と言ったところだ。それまで全員で時間を稼げ!!」
「御意!!」
ルオスの命令をイリュケが了承した瞬間であった。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォ!!
凄まじい爆発と熱風が都市を襲った。都市を覆う結界をあっさりと突き破り襲った爆発にルオスやイリュケ達は呆気にとられた。
しばらくしてルオスの元に神が数柱駆け込んでくる。
「こ、小型の太陽が落ちてきました!!」
「東部区画の被害甚大!!」
「犠牲者は数万単位と思われます!!」
神達の報告にイリュケは顔を青くして、ルオスは怒りの表情を浮かべた。
「ル、ルオス様…」
「おのれ…ここまで問答無用で来るとは」
「まさか無差別に…?」
「やつらは我々を皆殺しにするつもりだ!!」
「みなごろ…し」
ルオスの皆殺しという言葉に全員の顔が引きつった。
「私の準備が整うまであと三時間ほどかかる。お前達は時間を稼げ!!」
「はっ!!」
ルオスの指示を受けてイリュケ達は慌てて出て行く。
「いくら化け物共が相手でも全軍であたれば三時間くらいは持つはずだ」
ルオスがそういった瞬間に凄まじい風が建物を揺らした。ルオスは遠視の術を使い、原因を見ると東部区画を巨大な竜巻が蹂躙しているのが見えた。救助のために到着し、活動していた天使や神達が竜巻に呑まれ圧倒いう間に細切れになっていくのが見えた。
「く……何という化け物共だ」
ルオスの口から忌々しいという呪詛が吐き出された。ここまで容赦なく蹂躙するとはルオスは思っていなかったのである。
「ん、四つに分かれた? 四方向から攻めてくるつもりか……愚かな奴らめ戦力分散など愚行中の愚行というものだ」
ルオスはニヤリと嗤う。少数が戦力分散など愚行でしかない。もちろん、ゴルザー達の実力の高さは理解しているだが、それでも戦力分散の愚を嗤わざるえない。もちろん、天界側も分散することになるがそれでも絶対数は絶対に有利なのだ。
しかし、しばらくして入ってくる報告は凶報ばかりである。
「北部区画に現れた水竜が周囲を瓦礫に変えております!!六剣が討伐に向かいましたが全員戦死!!アンデッドが大量発生し住民を襲っております!!」
「東部区画に現れた魔族四人が毒霧を撒き散らしました。生存者は絶望的です」
「南部区画に大量の岩石が落下!!被害甚大!!」
「三戦神全滅!! ティレンスも戦死した模様!!」
「
「イリュケ様が戦死!!」
もたらされる凶報にルオスは顔を引きつらせた。四つに分かれたことは戦力分散などではなかったことがこの段階でルオスは理解した。
「ふざけるな!! まだ三十分ほどではないか!!いかにあの化け物共が相手とは言えここまで一方的になるはずがない!!」
「お言葉ですが、あの魔族と一行は強すぎます…。あれは異常です!!」
神の返答には間違いなくルオスを責める響きがあった。異常な強さを容赦なく振るう魔族達一行は恐ろしすぎる存在だ。
「なにぃ?」
「う…」
「文句があるのか?」
「ひ…」
ルオスの圧力に神はガタガタと体を震わせた。
「報告!!イリュケ様達を討ち取った一行が神城へ侵入しました。現在総動員で防ごうとしていますが強すぎて止められません!!」
そこに新たな凶報を持ち込んできた神が現れる。
「くそ!! 役立たず共が!! お前達も言って時間を稼げ!!」
「じょ、冗談じゃない!!あんな化け物止められるはずない!!俺はゴメンだ!!抜けさせてもらう!!」
「そ、そうだ!!そもそもあんたが
「だまれ!! お前達はとにかく時間を稼げ!!さっさとしろ!!」
「ふざけるな!!あんな奴等相手に時間なんか稼げるわけない!!」
ドガァァァ!!
ルオスと神達が無駄な諍いをはじめた時、扉が弾け飛んだ。
「あんたがルオスとかいうコソドロ共の親分?お望み通りに売られた喧嘩を買ってやったわよ」
「おお、あなたがルオスさんですか! 先日この世界に召喚された者です!魔王リフィは別に人族を滅ぼそうとなんかしてなかったですし、家族の方々も同様でした。これで人族の平和を乱すのはリフィ達には当てはまりません!!よかったですね!!」
リフィとヴェルティアが同時に対称的な内容の言葉を発する。
「な、何を」
ルオスも流石に二人から真逆の内容の言葉が発せられれば戸惑うというものである。
「さールオス。やろうか」
「うんうん。私の準備も良いですよ」
しかし、リフィとヴェルティアからの言葉は自分との戦いを告げるものである。
「ま、待て!!そこの娘!!」
「なんですか?」
指を差されたヴェルティアは首を傾げた。
「お、お前はこの世界に勇者として召喚されたといったな」
「ああ、そういうことをティレンスさんが言ってましたね」
「ならば、お前はそのとなりにいる魔王を斃すべきではないのか?」
「いえ、それはありません!!」
「な、なぜだ!!」
「既にリフィとは勝負を行い。私の勝利で前回の戦いは終わりました。その際にリフィ達は別に人族に興味など無かったことがわかりました。それにリフィは大事な友人ですので殺し合うつもりなんか全くないんですよ」
ヴェルティアの返答にルオスは口をパクパクとさせていた。
「どうしたんです?」
ヴェルティアは首を傾げてルオスに尋ねた。
「だ、だがお前達はシュレーゼントや近隣諸国を…」
「あーあれですか。あれはうちの実家の判断に基づく軍事行動でして、ルオスさんにはまったく関係の無いことなんですよ」
「何?」
「私、元の世界でアインゼス竜皇国という国の皇女なんです。その皇女を誘拐したということで国を挙げて討伐すべしという状況になったみたいなんです。まぁ私のような絶大な人気を誇る皇女が誘拐されたともなれば当然の反応なのです!!」
「人族の平和を乱しているのはお前達ではないか!!」
「といわれましても、私が受けた依頼はリフィの脅威を何とかしろと言う話でしたからリフィと戦い
「は?」
「アインゼス竜皇国軍からの脅威を何とかしろというのは別問題なんですよ」
ヴェルティアの返答にルオスは愕然とした表情を浮かべた。ヴェルティアの論理の飛躍が凄まじすぎて返答できなかった。
「ん?ルオスさーーん?聞いてます?」
ヴェルティアは手をぶんぶんと振りルオスの意識を戻そうとした。
「ま、私達も別にあんた達なんかに興味は無かったんだけど、
「やはり、これはお前達の力の源泉というわけか!!」
「いえ、違うわよ」
「は?」
リフィの返答はあまりにもルオスにとって予想外だったのだろう。ついつい間抜けな声がでてしまった。
「
「面倒…?」
「ええ、一日中魔法陣に魔力を流し続けないといけないのよ。暇で暇で仕方ないんだから」
「……」
「よくよく考えたら、うちの家族があんたらを甘やかしすぎたのよね。定期的に何か襲ってくる連中がくるけどまったく被害がないからって放っておいたら今度は
リフィの言葉にルオスは呆けた表情を浮かべた。脅威だから滅ぼすではなく面倒だから滅ぼすというのは天界に住む者達にとってこれ以上無い屈辱である。
「というわけであんたをギッタンギッタンにして他の連中もまとめて始末する事になったのよ。わかった?」
リフィが言い終わると立ち上る殺意が数桁跳ね上がった。
「ひ」
「う、うわ」
ルオスに報告に来ていた神達があまりのリフィの殺意に怯えを見せ、それに耐えきれずに背を向けて逃げだそうとした。
ドン!!ドン!!
そこに容赦なくリフィの光術が神の頭部を貫いた。
「ふざけるなぁぁ!!ゲス共め!!まとめて相手してくれる!!」
ルオスは虚空から剣を取り出すと鋒をリフィとヴェルティアに向けた。
「さーて、ルオスもやる気になったということで始めよっか」
「そうですね~神々のボスと言うことでどれほどの強さか楽しみです」
ヴェルティアとリフィは構えをとった。
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