第46話 世界の終わり③ ~祖父母世代による蹂躙~

 四つのチームに分かれた一行は、イリュテの転移術によってそれぞれの場所へと転移した。

 四方向から同時に攻め込みルオスを討伐するという作戦である。これを作戦と読んで良いかは微妙なところである。なぜなら四チームすべてが"取り敢えず吹き飛ばせばいいだろ"という感覚なのだ。

 

 ルオス達に取ってみれば誠に不幸なことに四つに一行が分散したことで、自分達も軍勢を四つに分ける必要があるのである。戦力分散は愚行ではあるが、自分達もその愚行をおかさねばならないという妙な状況になっているのである。


「さて、そろそろ始めようかな」

「腕がなるわい」


 ゴルザーとギルノーはそう言うと異空間へ手を突っ込むとそれぞれ武器を取り出した。ゴルザーとギルノーが取り出したのは両方とも片手剣と盾である。


「それじゃあ、合図を送りますよ」


 イリュテはそういうと上空に向けて光の珠を放った。放たれた光の珠は上空で破裂するとまばゆい光を放った。


 イリュテが光の珠を破裂させて数秒後、巨大な岩石が数十個降り注ぐのが見えた。ほぼ同時刻に別方向から巨大な水竜が現れると凄まじい咆哮と共に大瀑布を放つのが見えた。


「あっちはシルヴィス君達、あっちの水竜は、マルト達のはずだからシャリアスさんかアルティミアさんの術じゃな」


 ゴルザーの言葉に三人はうんうんと頷く。


「いやはや、まさかあんな強い者達がいるとはのう。世界はやはり広いわい」

「まさかこの歳になって同レベルが何人も現れるとはおもわなんだわ」

「そうじゃのう。マルト達にも友人が出来て良かったのう」

「みんな性格も良いし良かった良かった」

「うんうん」


 ゴルザーとギルノーはそう言ってうんうんと頷き合った。マルトもミューレイも他者とは明確に実力に差がありすぎて、お互い以外に同格の者がいなかったのだ。そこにそれぞれに同格の者が現れたのだから嬉しいのは当然である。


「ほらほら、しみじみと話していないで行きますよ」

「もう始まってるんですからね」

「そうだった。そうだった」

「まだまだ若いもんには負けんわい」


 四人はそういうと侵攻を開始した。既に"天照降臨"と"裂昇滅壊"によって城壁は消しとんでいる。都市に入り込んだ四人は大混乱に陥っている天界の住人達の姿を見た。


 所々に炭化した死体、瓦礫の合間に見え隠れする肉片が天界に深刻な被害をもたらしたことがわかる。


「ヒィィィ!!」


 四人の姿を見た住人達は恐慌状態に陥った。今の今まで魔族達にはどのような事をしても報復はないと高をくくっていたのだが、それが単なる幻想である事を思い知ったのだ。


「さて、我々は諸君達を皆殺し・・・にするつもりだ。降伏したければすれば良いが我々がそれを受け入れる事は決してないぞ。お前達は我々を舐めすぎた」


 ゴルザーの言葉は淡々としており、それが逆に自分達の命が終わることをどうしようもなく実感させた。


「さて、狩るか」


 ゴルザーの言葉通り、ゴルザーは手にしていた剣を横に無造作に薙いだ。その瞬間、数十メートル先までの全てが切り裂かれ胴を両断された死体が量産された。


「化け物め!!」


 一人の神が弓をつがえる。だが、ギルノーの剣の鋒が伸びると弓を放とうとした神の顔面を刺し貫いた。ビクンビクンと痙攣し明らかに致命傷である。


「ハミシュ様が」

「ヒィィ!!」


 どうやらギルノーが顔面を刺し貫いた神は最も実力が高かったのだろう。


「うるさいのう」


 ギルノーは鋒を向けると剣を伸ばし、叫ぶ神や天使達を容赦なく串刺しにしていった。同時にゴルザーも同様に剣を縦横無尽に振り、次々と斬り殺していく。


 イリュテ、エルマースも全く容赦なく次々と風術、光術を連発し次々と神や天使達を骸へと変えていく。


 抵抗は無意味と悟って逃げ出す者達もいたが、四人は背後から容赦なく必殺の攻撃を放ち死体へと変えていった。


「くそぉぉ!!」

「いくぞ!!」


 逃げられないことを悟った神や天使達は全員で四人に襲いかかったが結果は同じである。四人に近づくことも出来ずに細切れとなり地面に撒き散らされることになった。


 まさに草を刈るようにという表現そのままの蹂躙である。


 四人はそのまま突き進む。その間に見つかった神や天使達は一瞬で細切れにされていく。そして気配を察知された者も同様の運命であった。


「ひ……助けてください!!お願いします!!せめて弟だけでも!!」


 そこに一人の女神が土下座して命乞いをした。その背後には十歳くらいの容姿をした男子の神が震えていた。


「わかった」

「断る」


 ゴルザーとギルノーは同時に答えるとゴルザーが女神の首を刎ね。ギルノーは男の子の顔面を刺し貫いた。


「化けるならもう少し上手く化けるのだな」


 ギルノーの言葉通り、男の子の神の死体が大人の姿へと変わった。


「いつまで子どもの振りとは情けないやつめ」


 ゴルザーはそう言って皮肉気に嗤う。神は永遠の寿命を持っている。そのために自分の好きな年齢の容姿に変える事など簡単なことである。逆に言えば実年齢と容姿が釣り合っていないなど至極当然のことであり、いくら子どもの振りをして難を逃れようとしてもそのような事に騙されるような四人ではないのである。


「あなた、これでも一生懸命考えた策なんですから少しはのってやるのも優しさというものの気がしますよ」


 ゴルザーはイリュテの苦言にややバツの悪そうな顔を浮かべる。


「そうはいってもなぁ。めんどうじゃし」

「あらあら、仕方ないですね。まぁ面倒だという意見には賛成ね。エルマース一気に片付けてしまいましょう。手伝って」

「うん、どれにする?」

「そうね。エクレンガムとヘキシロメイヌにしましょう。私がエクレンガムを精製するからエルマースはヘキシロメイヌを頼むわ」

「わかったわ」


 イリュテとエルマースは即座に二つの物質を精製すると結界を張り、神や天使達を閉じ込めた。そして次の瞬間には転移術で結界の外へと転移した瞬間に二つの物質が混ざり合い結界内を毒霧が覆う。


「さぁ、終わりよ。ルオスの所へ急ぎましょう」


 イリュテの言葉に全員が頷くと先を急ぐ。


 四人が侵攻した区画の者達で生き残れた者は誰もいなかった。 

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