第45話 世界の終わり② ~チーム分け~

 イリュテの先制攻撃に落ちた小型の太陽は地上に落ちた瞬間に大爆発を起こした。


「うわぁ……」


 クレナの声はあまりの威力に引いていたという感情が溢れていた。


「おお!!すごい威力ですよ!! イリュテさん!!」


 一方で無邪気な声で喜んでいるのがヴェルティアである。


「さすがの威力ね。久々に見たけど昔よりも威力が上がったんじゃない?」

「そうね久しぶりだから心配したけど威力的には十分ね。それじゃあ、次はエルマースの番ね」

「うーん、イリュテが"天照降臨"なら……それじゃあ、私はこれにしようかしら」

「あーあれね」


 イリュテの言葉にエルマースはにこりと嗤い。掌に魔法陣を描き出す。するとエルマースの掌の上に風の珠が現れた。


「えい!!」


 エルマースは風の珠を放つと凄まじい速度で飛んでいった。エルマースが放って数秒後に巨大な竜巻が発生した。


 発生した竜巻は進行先にある全てを砕き巻き上げながら進んでいく。発生した竜巻は直径五百メートルを越えるほどのものである。風速は軽く二〇〇メートルを越えている可能性すらある。


「やっぱり"裂昇滅壊"だったわね」

「イリュテが天照降臨で落としてきたから私は吹き上げる方を選んだわ」


 イリュテとエルマースの声は鏡の夕飯は何が良いかしらというような世間話そのものだ。


「さて、宣戦布告は終わったと言うことで行こうか」


 マルトの言葉に全員が頷いた。


「うぅ……何としても生き残らないと」


 クレナの言葉に頷いたのは意外なことに七柱であった。神である七柱であってもシルヴィス達とはレベルの差がありすぎて攻撃の余波で消し飛んでしまう可能性があるのだ。


「しょうがないわね。あんたはヴェルティアと一緒にいれば大抵の危険は避けられるでしょ」


 リフィがクレナに呆れながらいう。ヴェルティアの周囲にはシルヴィス、ディアーネ、ユリという強者がいるのだから、そこについていけばやられることは決してない。


「その一緒にいるというのが中々大変なのよ」

「しょうがないわね」


 クレナの言葉にリフィは手を振ると偽魔王と黒騎士十体が現れた。


「クレナを守りなさい」


 リフィの命令に偽魔王達はクレナの周囲に立つ。


「あ、ありがとう。リフィ」


 リフィにクレナは礼を言う。魔族達と仲が良くなったのはシャリアス達親世代だけではない。リフィとクレナもすっかり友人となっていた。


「ここに一人残るより一緒に行った方が遙かに安全よ」


 そこにジュリナが声をかける。ジュリナもまた同様にリフィとクレナと仲が良くなっていた。


「そ、そうよね!!ここに一人いて爆発に吹き飛ばされるよりも遙かに安全よね!!」


 クレナが気合いを入れた。半ば自分に言い聞かせているような感じである。別の表現を使えば自己暗示とも言う。


「うんうん。それでは予定通りにチームに分かれて向かいましょう!!」


 ヴェルティアの言葉に全員が頷いた。敵地に置いて戦力分散など愚の骨頂であるがそれは一般的な実力者にのみあてはまることだ。大軍に用兵無しと同様に超越者もまた用兵など不要なのだ。


 Aチームはヴェルティア、リフィ、ディアーネ、ユリ、クレナ

 Bチームはシルヴィス、キラト、リューベ、ジュリナ、七柱

 Cチームはシャリアス、アルティミア、マルト、ミューレイの親世代

 Dチームはゴルザー、イリュテ、ギルノー、エルマースの祖父母世代


 の4チームである。数は少ないがどのチームも世界を滅ぼすだけの力を有してるという極めて凶悪なチームなのだ。


 ヴェルティアとシルヴィスが別チームなのはヴェルティアの提案であった。リフィの母であるミューレイのアイディアである。


『いい、ヴェルちゃん。シルヴィス君ともっとイチャイチャしたくない?』

『え?イチャイチャですか?』

『そうよ。私の見たところあなた達二人は本当にお互いを大切に想い合っている』

『もちろんです!!』

『でもあなた達は強すぎるわ』

『どういうことでしょう?』

『あなた達二人が一緒にいる限りどんな相手であってもピンチには中々出会えないはずよ』

『た、確かにそうです!!』

『それにシルヴィス君の他にディアーネちゃんとユリちゃんにクレナちゃんも一緒にいる以上皆無よ』

『はっ!!』

『そこで別のチームになるのよ。そこで少し苦労することにはなるでしょうけど、その苦労を越えたところにあなたを見つけたシルヴィス君はどんな反応をするかしら?』

『そ、それはやはり安心して私を抱きしめるのではないでしょうか!!』

『そう!!まさにそれよ!!いいヴェルちゃん!!あなた達の実力から考えてピンチを演出できる好機なんてそうそうあるものじゃないわ。シルヴィス君があなたを思わず抱きしめる!!あなたはそこで思い切りシルヴィス君に甘える!!』

『おおっ!!まさかそんな手があったなんて!!』

『そのためにはヴェルちゃんとシルヴィス君は別のチームになるべきなのよ!!』

『さすがです!ミューレイさん!! 何という策士なんですか!! このヴェルティア感服いたしました!!』


 ミューレイの作戦にヴェルティアは思い切り乗っかることになった。


 この選択が不幸を大量量産することになることをこの時は誰も知らなかった。


 

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