第40話 皇女VS魔王⑦

 ヴェルティアとリフィは互いに跳び間合いを詰める。


 ゴゴォ!!


 ヴェルティアの大岩丸とリフィの拳がぶつかる。


 ビビキィ!!


 大岩丸にヒビが再び入る。


(う~ん、オズラルと軟鉄の特別製の合金なんですけど。リフィの拳の方がやっぱり固いですね)


 ヴェルティアは心の中で驚いている。大岩丸はオリハルコン製の芯にオズラルと軟鉄の合金の部分を被せたものであるのだ。そのためリフィの攻撃に耐えること派出来ないのだ。先程はリフィからの攻撃であったため、リフィにダメージはなかったが、さっきはこちらからの攻撃であったためにリフィの拳にダメージが与えられると考えていたのだが当てが外れたのである。


(となると大岩丸ではなく無手術でいくしかないというわけですね)


 ヴェルティアはそう判断すると大岩丸を手放すと無手術へと切り替えた。


「てぇい!!」


 ヴェルティアは跳躍し後ろ回し蹴りを放つ。ヴェルティアの後ろ回し蹴りは速度は凄まじいものであるが、それだけではリフィの実力ならば余裕で躱すことができる。だが、ヴェルティアの後ろ回し蹴りは単に見てくれが派手なだけではない。気配を極限まで殺し、絶妙のタイミングで放ったのである。


 ビシィィィ!!


 リフィはヴェルティア後ろ回し蹴りを受け止めた。絶妙のタイミングで放たれた後ろ回し蹴りのために躱すことが出来なかったのである。受け止められたヴェルティアはニヤリと笑う。


「あ……やばい」


 リフィは次にヴェルティアが何をするか瞬時に悟る。ヴェルティアはそのまま反対の足で回し蹴りを放った。

 受け止めた一撃に体勢を崩しかけたところに間髪入れずに放たれた一撃にリフィはよろけた。


(渾身の一撃だったんですけど。やっぱりリフィが相手だと一撃では無理ですね)


 ヴェルティアは自分がリフィに勝つためにすべきことを決めた。


(うーん、しかし中々分が悪いですね。でもこれだけの実力者に勝つためには私も賭けに出ないといけないです)


 ヴェルティアは再び右拳、左拳、右掌、左掌、右肘、左肘、左右の上中下段蹴りと持てる技術を使用しリフィへと放つ。そしてそれはリフィも同様であった。ヴェルティアとリフィの攻防は瞬間で攻防が目まぐるしくかわる。


 バギィ!!

 ドゴォ!!


 しばらくして互いの攻撃がだんだん直撃するようになってきていた。ヴェルティア達のような同格の実力者同士が戦えば当然のことである。


(ヴェルティア!本当にすごいわ!!こんなに強い相手なんて初めてよ!!)


 リフィはヴェルティアとの戦いが楽しくて仕方が無かった。そして、ヴェルティアも同様であった。


(おお、私とここまで殴り合い・・・・できる方なんてシルヴィスとお父様以外にいないと思っていたんですけど、世界は広いものです!!)


 ヴェルティアと互角に戦いの出来る者は家族以外でいえばキラトやシュレンをあげることが出来る。だが、無手での戦いであればヴェルティアと互角にやり合えるとすればシルヴィスとシャリアスくらいである。そこに今回リフィが加わったのである。ヴェルティアにとってこれは衝撃である以上に楽しくて仕方がなかった。


 しかし、いくら楽しくても終わりが来るのは必然である。


 ヴェルティアもリフィもそれは理解していた。


 そしてその時が来たのである。


「お嬢!!今行く!!ディアーネ!!」

「ええ!!」


 ユリとディアーネが起き上がりざまに叫んだのだ。


「え?」


 リフィはディアーネとユリの声にそちらに意識を持って行かれた。そしてその隙をヴェルティアは見逃さない。


(よくやってくれました。うんうん、さすがはディアーネとユリです!この機会を逃す私ではありませんよ!!)


 ヴェルティアは心の中で二人に礼を言うとリフィへの攻撃を放つ。それを見た瞬間にディアーネとユリは崩れ落ちた。勝利を確信したのであろう。


 ヴェルティアの攻撃は右掌を胸部に放つ事から始まった。そして時を置かずして左掌を一撃目と同じ箇所へ、そしてその勢いのまま右肘をリフィのこれまた同じ箇所へ叩き込む。


 ドゴォォォォォ!!


 ヴェルティアの攻撃は三連撃であったが、あまりにも早すぎて音が一つにしか聞こえない。

 この三連撃にリフィは仰向けに倒れ込んだ。


(うーん、これは動けないわね)


 リフィは起き上がろうとしたが立ち上がれないほどのダメージを受けたことを察した。


「ヴェルティアの最後の策ってディアーネさんとユリさんだったの?」

「はい!あの二人なら必ず私のために動いてくれると思ってました」

「なるほど…まさかあの状態で立ち上がりあそこまで気合いの入った声で叫ぶとは思わなかったわ」

「うんうん、やはり私のように偉大な存在には皆が手を貸したくなるのです!!」

「まぁしょうがないか。チーム戦を提案したのは私だもんね」

「はっはっはっ!!リフィとの勝負は本当に楽しかったですよ」

「私もよ」


 ヴェルティアの楽しかったという言葉にリフィはにっこりと笑って返した。


「さて、それじゃあこの試合をしめるとするわ」


 リフィの言葉にヴェルティアは頷いた。


「参った。この試合ヴェルティアの勝ちよ!」

「ええ、リフィ、また・・やりましょう!!」

「うん!」


 皇女と魔王の試合は皇女の勝利で幕を閉じた。

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