第39話 皇女VS魔王⑥

 ヴェルティアはリフィの連撃を躱しながら少しずつ移動する。


(よし、あとは機会を待つだけですね。クレナは上手くやってくれたみたいですね。いや~やっぱり私の人を見る目は確かですねぇ。シルヴィスも私に惚れ直すことでしょう!!)


 ヴェルティアは心の中で少しずつ事態が好転し始めたことに少しばかり心に余裕が生まれ始めていた。


(うーん、クレナって娘って想定よりも遙かにできる娘だったわね。これは完璧に私のミスよね)


 リフィはクレナを侮っていたつもりはない。ヴェルティアがこの試合に選んだ以上、実力が低いはずは無いのだ。


「ヴェルティア様!!」

「お嬢!!待たせた!!」


 そこにディアーネとユリが現れる。


「く……」


 リフィはディアーネとユリが来たことに一瞬そちらに意識が向けた。


(よーし!!)


 ヴェルティアはリフィの意識が自分からズレたことを察すると次の瞬間に大岩丸の柄の先を思い切り踏み込んだ。大岩丸は凄まじい速度で起き上がった。


「おっと」


 リフィは大岩丸を辛うじて躱すが連撃が途切れてしまった。そしてヴェルティアは大岩丸の柄を掴むと大岩丸を上段から一気に振り下ろした。


 ドゴォォォォォ!!


 叩きつけられた大岩丸の一撃に床の石材が一気に砕け散った。


「あらら、これはちょっとマズイかもね」


 リフィはヴェルティアの一撃の威力にニヤリと笑う。そして次の瞬間に偽魔王、青騎士がヴェルティアへと向かう。そしてリフィはディアーネとユリへと向かう。既にクレナをおろしていたのは幸いであった。


「くるぞ!!」

「ええ!!わかってるわ」


 ユリとディアーネの声に緊張が含まれた。リフィの実力の高さを知っている以上当然である。


「はぁぁぁぁ!!」

「でやぁぁぁぁ!!」


 ディアーネとユリが間合いに入ったリフィへと自らの武器を振るう。


「え?」

「な?」


 しかし次の瞬間、ディアーネの斧槍ハルバートがリフィの胴体にまともに入る。この事態は完全に二人にとって予想外であった。


(躱さなかった?刃が通らないという自信?でも、今の手応えは……え?)


 ディアーネもこのまさかの事態に困惑してしまった。立った今リフィを切り裂いた感触は確かに肉を断った感触であったのである。


 ドゴォ!!


 そして次の瞬間にリフィの左拳がディアーネの右脇腹に突き刺さった。


「が……」


 ディアーネは自分の肋骨が砕ける音を確かに聞いた。


「ディアーネ、離れろ!!」


 ユリがリフィへ斬撃を放つ。ユリの斬撃はリフィの喉を切り裂いた。


「な…」


 しかし、先程同様にリフィは平然とユリへ横蹴りを放ち、ユリは躱すことも出来ずにまともに受け、吹き飛ぶと壁に叩きつけられた。普段のユリであればたとえリフィの攻撃であってもまともに受けることは無かったであろう。だが、喉を切り裂いたというのに平然と反撃を行ったために虚を衝かれたのである。


「てぇい!!」


 バギィ!!

 ドゴォォ!!


 ヴェルティアは大岩丸を振るい、偽魔王と青騎士達を殴り飛ばした。


あれ・・ですね!!」


 ヴェルティアは最後の青騎士を大岩丸で殴り飛ばした。最後の青騎士は吹き飛び壁にぶち当たった。


「さーて、リフィ!!再開です!!」


 ヴェルティアは大岩丸の鋒をリフィに向けて言い放った。


「あれ?私に攻撃が効かないのは理解してるでしょ?」


 リフィの言葉にヴェルティアは首を横に振った。


「それはさっき・・・までですよね?」


 ヴェルティアの言葉にリフィはやれやれというポーズをとった。


「お見通しか~」

「察するに最後に斃した青騎士にダメージを転送していたんですよね。そんな安全策をここに配置したのはリフィから一定距離を離れると転送できなくなるということでしょう?」

「う~ん、そこまでお見通しか。やっぱり最後の一体だけ戦闘に参加させなかったからバレちゃったのかな?」

「そうですね~やはりそれで分かりましたよ」

「やっぱか~」


 リフィは頭をかきながら言う。


「まぁ、そう気を落とさないでください。私だからこそ気付いたのです」

「なるほどねー。まぁ、私の策はもうないわ。そっちは?」

「もちろんありますよ・・・・・

「うーん、じゃあすぐ見せてもらえる?」

「それがですね。ちょっと時間かかるんですよ」

「そっか、なら私は準備が整うまでにヴェルティアに勝つのが理想ね」


 リフィはそう言って笑う。


「というわけで再開です」

「ええ、ここからしばらくは技の勝負!!」


 ヴェルティアとリフィの勝負は再開された。


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