第38話 皇女VS魔王⑤
「とりあえず…クレナが何かやる前にヴェルティアとの戦いを有利に進めるとしましょう」
「おお、受けて立ちますよ!!」
リフィは青騎士達をヴェルティアへ向けて放つ。それに続くように偽魔王も動いた。
(とりあえず真っ正面から来ましたか。特殊能力が気に掛かるところですね)
ヴェルティアは六体の青騎士が現時点でどのような特殊能力を持っているか分からないためにさすがに警戒する。リフィが相手である以上、力業で押し潰すというのは難しいと思っているのである。
「てぇい!!」
ヴェルティアは大岩丸を振るって襲いかかってくる青騎士を殴り飛ばした。
ベキベキベギと鎧の中で何かが砕ける手応えがヴェルティアの手に伝わる。ヴェルティアは吹き飛ばした青騎士に目もくれずに次の青騎士を殴り飛ばした。
そこに間合いに踏み込んだリフィが右掌をヴェルティアにはなってきた。青騎士を薙ぎ払った間隙を突く攻撃であり、並の一流であればこの一撃で勝負は決まっていたことだろう。
だが攻撃を受ける相手はヴェルティアである。リフィの一撃を大岩丸で辛うじて受けることに成功する。
ビビキィ!!
リフィの一撃に大岩丸にヒビが入る。
「く……」
ヴェルティアは大岩丸から手を離すと同時にリフィへの反撃を行う。放たれたのは右回し下段蹴りである。
ビシィ!!
ヴェルティアの下段蹴りがリフィの左太ももにまともに入る。
「はっ!!」
しかし次の瞬間にリフィはヴェルティアへ即座に反撃を行った。ヴェルティアの下段蹴りに対して何の痛痒も感じてないその反撃にさすがにヴェルティアも虚を衝かれた。
ヴェルティアはリフィの反撃である裏拳をガードすることには成功したが、片足の状態であったことから受け止めきることは出来ずに吹っ飛んでしまう。
倒れ込みはしなかったが、それでも隙を作ってしまったのは仕方の無いことである。
そしてその隙を見逃すような甘いリフィではない。即座に踏み込んでリフィは拳、掌、肘、上中下の各段の蹴りを途切れることなく放つ。
(あ、これはひょっとしてピンチというやつではないですか?)
ヴェルティアは次々と放たれるリフィの連撃を反撃ではなく受けに徹することで凌ぐことを選択した。普通ならば防御を固めるだけであるが、ヴェルティアはリフィの攻撃の種類から次の攻撃を放ちにくい立ち位置へ移動し続けて連撃の終わりを待つのである。
(く、次の攻撃が絶妙にしづらい位置に常に動いてる。本当にすごいわね)
リフィも当然、ミリ単位、小数点単位で修正し続けているため破綻はしないが、それでもこのやりづらさはストレスを課すものである。
(うーむ、我慢比べというやつですね。困ったことに一発もらったら終わりというレベルの攻撃ですから精神が削られます。それに人形も動かさないからつけいる隙もなにもあったものではないですよ)
ヴェルティアはリフィの攻撃を何とか捌きながらそう考える。
(とりあえずこれやってみましょう。でもしばらくは我慢です)
ヴェルティアはチラリと
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「良かった。追ってきてない。ということはヴェルティア様が一人で相手してるわけね」
クレナは走りながら目的の場所へと急ぐ。その目的の場所とはもちろん結界の場所である。
「問題はリフィさんが張った結界を私が破れるかということよね…いや、やらないとディアーネ様にどんな説教を受けることやら」
クレナは自分の言葉にビクリと体を震わせた。クレナにしてみればディアーネの説教は何よりも恐ろしいのである。
「あった。えっとこの術式は…うわぁ……何この複雑な術式」
クレナは結界に直に触れた瞬間にその複雑な術式に心が折れそうになった。しかしやらなければならない。
術式の解析に取り組みを始めたところで、結界の向こう側にディアーネとユリが走ってきた。
「えーと、えーと…」
クレナはディアーネとユリが現れたところで少なからず動揺してしまう。クレナにとってディアーネとユリは畏怖の対象であり、緊張感を持つなというのは無理というものだ。
(この結界…向こう側のあらゆる干渉を撥ね除けるのね。でも、内側からならまだましね。そして強度はそれほどでもない)
クレナは術式の解析を終えると即座に手を打つ。
クレナは結界に手を触れて自分の魔力を流し込んでいく。
「ぐ…これは中々キツイ…」
クレナの口から苦痛の声があがる。魔力を総動員してようやく、結界の術式を書き換えることが出来たのは拳一個分である。そして書き換えた内容は外側のあらゆる干渉をはじく箇所である。
だが、ディアーネとユリに取ってはそれで十分であった。
ガシャァァア!!
ユリが剣を突き入れそこに魔力の塊を残した。
「離れて!!」
ユリの言葉を受けてクレナは頷くとさっと距離をとる。
ドォォォ!!
ユリお残し田魔力の塊が大爆発を起こすと人一人が通れるくらいの孔が開いた。そしてディアーネとユリは閉じるまでの僅かの時間に結界内に滑り込むことに成功した。
「……やった」
ディアーネとユリが滑り込んだのを確認してクレナはその場にへたり込んでしまう。
「よくやったわ」
「ああ、よく私達をここに入れる事ができたな」
ディアーネとユリのお褒めの言葉にクレナは少しだけ微笑んだ。さすがに疲労困憊というようであったために二人もそこを咎めるようなことはない。
「さて、いくわよ」
「ああ、クレナはどうする?ここで休んでおくか?」
「いえ、いきます」
クレナの返答を受けてユリがクレナを抱え上げた。
「それじゃあお嬢のとこに行こうか」
ユリの言葉にディアーネは頷くとヴェルティアの元へ向かって駆け出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます