第16話 魔族達との邂逅②
ヴェルティア達三人は風のように走る。
ヴェルティアが先頭を走り、ディアーネとユリがそれに続く。
「おっ、あそこですね!!」
ヴェルティアの指し示す先に五人の魔族が待っている。五人の魔族の前にはクレナの人形達が座っている。どことなく説教を受けてしょんぼりしている様に見えてしまう。
「こんにちは~~!!」
ヴェルティアは手をぶんぶんと振りながら魔族達に声をかけた。もの凄まじい速度でこちらに向かってくるヴェルティアに驚いた表情を浮かべるのを責めるのは酷というものだ。
「お待たせしました!! それじゃあ、お話を始めましょうか!!」
ヴェルティアのテンションの高めであるが友好的な態度に魔族達は戸惑っているようである。
「おお!そうでした!! クレナは人形を解き、みなさんを守ってくださいね」
「はっ!!」
ヴェルティアがそう言うと人形の一体がそう答え、煙のように消え去った。
「いや~すみませんね。傭兵のみなさんが千単位でいるものですから、ここまでくるのに魔物とか現れてしまえば被害が出ますからねぇ!クレナがいれば相当安全性が増すというわけです!! やはり私は出来る女というわけです!!」
ヴェルティアの態度に魔族達はまだまだ戸惑いがおさまっていないようである。
「はじめまして!! 私の名前はヴェルティアといいます!アインゼス竜皇国の第一皇女です。こちらのメイド服の女性はディアーネ、こちらの剣士はユリシュナ、私達はユリと呼んでます。あと元暗殺者のクレナ、そして傭兵のみなさん方が一四〇〇人ほどいます」
「暗殺者……傭兵?」
ヴェルティアの言う不穏な単語に魔族達は不安げな表情を浮かべた。その様子を見てヴェルティアは首を傾げた。
「う~ん、なぜみなさんがそこまで不安げな表情をされるのかわかりませんね。リフィにもいいましたけど我々は別に魔族を根絶やしにようなんて考えてませんし、単に勝負をしに来たと言っても過言ではありません」
ヴェルティアの言葉に五人の魔族達は顔を見合わせた。
「あの……リフィに会ったのですか?そのリフィは?」
魔族の女性がおずおずと尋ねる。その様子は暴力とは無縁に生きてきたという印象そのものである。
「それがですね。
「え?」
「さきほどアリテミュラと名乗る方と戦ったときにリフィは
「……」
ヴェルティアの返答に魔族達五人は沈黙してしまう。ヴェルティアの様子は心から不思議に思っているようであり、それが逆にヴェルティアの言葉が真実であるかがわかるおいうものである。
「まぁ、アリテミュラさんと名乗った方も中々強かったですけどあれって
ヴェルティアの次の言葉に魔族達は顔を見合わせて苦笑を浮かべた。
「よくわかりましたね。
先程の女性が苦笑しながら言う。五人の魔族達は先程までのおどおどした雰囲気はすっかりなくなり堂々とした態度に変わっている。どうやら擬態はやめにしたらしい。
「いや~リフィの入れ替わりは相当なものです。これはリフィを責めるのではなく私の慧眼こそ讃えるべきだと思いますよ!! はっはっはっ!!」
「なるほど!そりゃそうだ!!はっはっはっ!!」
「よっ!ヴェルティアさん、やるぅ!!」
ヴェルティアが高らかに宣言すると五人の魔族達も楽しそうに笑い始めた。
「何かお嬢と同じ思考回路のような感じがするな」
「そうね。まぁこれだけの強者ですから色々と浮き世離れもするのではないかしら」
「そうだな。両陛下もレティシア様も何かそんなところあるよな」
「ええ、でもそれで良いと思うわ。ああいう方々は事態に対して楽観的に構えてもらわないといけないしね」
「ああ、心からそう思うよ。お嬢達一家があの性格でなく猜疑心の塊だったらすごい勢いで粛正されると思うな」
ユリの言葉にディアーネは心から頷いた。ヴェルティア一家は自身が絶対的強者である事を自覚しているため、ある程度のことは流してしまうのである。絶対的強者故の余裕と言える。もしそれが無ければ猜疑心により優秀な臣下は自分の地位を脅かす敵となりアインゼス竜皇国は地獄のような状態になっているのは間違いないだろう。
「いや~てれますねぇ。そうそう、リフィはどこにいるんです? ティフィンガルドにいるんですか?」
ヴェルティアの問いかけに五人の魔族達は大きく頷いた。
「ええ、そうなんです。あの子ったら勇者が来たということで張り切っちゃってティフィンガルドで待ち構えるんだ!って」
「あの子ですか? すみません少し気になったのですけど、ひょっとしてあなたはリフィの?」
「はい。母のミューレイといいます」
「なんとお母様でしたか!! それではお父様は?」
ヴェルティアの問いかけにミューレイの隣にいる男性の魔族が和やかに答える。
「はい。私です。リフィの父マルトといいます。あ、ちなみに私の父と母です」
マルトの言葉に二人の魔族がニコニコと微笑みながら手を挙げる。
「リフィの父方の祖父のゴルザーですじゃ」
「リフィの祖母のイリュテです」
リフィの祖父母が名乗ると最後の一人の女性の魔族が苦笑しながら口を開く。
「私はリフィの母方の祖母のエルマースよ。あと夫のギルノーがいるわ。今は
エルマースが名乗り終えると全員が親戚同士である事が判明した。
「あれ?リフィが魔王さんだとしたら、みなさんって王族というわけですか?」
ヴェルティアの言葉に全員が首を傾げた。その様子に今度はヴェルティア達は首を傾げた。
「王族っていっていいのかな?」
「魔王と言っても自称だしね」
「そもそも、他部族を統治しているわけでもないですし」
魔族達の会話にヴェルティア達は視線を交わした。
しばらくやっているとリフィの父であるマルトがヴェルティア達に頭をかきながら言った。
「とりあえず王族と言うことで」
「なるほど!! 王族なんですね!! 以後よろしくお願いします!!」
マルトの返答にヴェルティアが元気よく挨拶する。
「あの、口を差し挟んでしまい申し訳ないのですが発言よろしいでしょうか?」
そこにディアーネが口を挟む。何となくだがヴェルティアとこの五人の魔族では話が絶妙に本筋からズレていきそうだったために軌道修正の必要性にかられたのである。
「ん?どうしたんです? もちろんいいですよ!! みなさんもいいですか?」
ヴェルティアの言葉に魔族達はサムズアップで返した。
「それでは失礼して、その魔族の王族とかそんな勝手に名乗って良いものなんですか?他の魔族の合意とかは必要ないんですか?」
ディアーネの質問にマルトはバツが悪そうな表情を浮かべつつ言う。
「あ、それは大丈夫です。魔族は私達
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます