第10話 甘い考えは身を滅ぼす④
ヴェルティア達と分かれたディアーネはシュレーゼント王国国王であるオルガスの元へと向かう。
正確に言うと騎士達は制止しようとしたのであるが、ディアーネの放つ殺気の前に死を恐れるという生物としての本能のため制止に動き出せなかったのである。それは正解であったことは間違いない。実際にディアーネは制止に動いた者を即座に斬り捨てるつもりであった。
「ここね」
ディアーネは一つの扉の前に立つ。オルガスと数人の気配を部屋の中から感じ取ったディアーネは不敵に嗤う。
ドガァ!!
ディアーネは扉を蹴りつけると扉が弾け飛んだ。
ディアーネはオルガスと貴族達の呆然としている表情が目に入る。
「オルガス……腕試しにきましたよ」
ディアーネの言葉にオルガス達はなおも呆けたままである。ディアーネの言う腕試しが何の事か完全の理解の範囲外である。
「う、腕試し……?」
オルガスの声はやや震えている。初対面でディアーネがオルガスの顔面を鷲づかみにした時よりも遙かに本能が危険を告げているのである。
「ええ、わが主に暗殺者を
ディアーネの言葉にオルガスは顔を青くした。
「ぶ、無礼な!!陛下がそのようなことをされるわけない!!証拠」
貴族の一人の反論は中断された。ディアーネの
「ひ……」
「う、うわ!!」
周囲の貴族達が恐怖の声を上げる。首だけとなった貴族が周囲の反応に戸惑ったように視線を動かした。
「ひぃ!! 目が動いた!!」
人は首を切り離されても十数秒は意識があると言われる。ディアーネの
しかし、自分に注がれる恐怖の視線に自分の身に何かがおこったことを察してしまう。視線を周囲を向け下に向けたときに何が起こったのか察し、声にならない叫びをあげた。いや正確には苦悶と恐怖の表情が浮かびそれが見る者にとって最大限の恐怖を与えることになった。
「これくらいも躱せないのですね」
ディアーネの声には一切の慈悲はない。ディアーネにしてみればヴェルティアに暗殺者を送り込んだ連中に好意など持ちようもない。
ディアーネは
「さて文句があるならどうぞ」
ディアーネの言葉にオルガス達は何も言えない。オルガス達はディアーネが自分達を殺すことはないと思っていたのだ。甘いと言えば甘いのだが、ディアーネ達が今までシュレーゼント王国の者達を殺害したことがなかったために侮っていたのである。
「いい度胸ですね。暗殺者をヴェルティア様に送り込むなんてね」
ディアーネから放たれる殺気が一段階上がった。その凄まじい殺気にオルガス達の体の震えは止まらない。
ディアーネは音もなく跳躍すると机の上に着地した瞬間にオルガスとの間合いを詰めるとそのまま胸を蹴りつけた。
ゴギィ
オルガスの胸骨が砕ける音が響きそのまま背後の壁に激突する。
「が……」
ディアーネはそのままオルガスの首を掴むと壁に押しつけた。
「オルガス、今回の件は
「ご……五人?」
「ええ、今回の手打ちとしてこの中にいる貴族から五人選びなさい。そいつらの首でヴェルティア様に暗殺者を差し向けた件は許してあげると言っているのよ」
ディアーネの提案にオルガスの顔が強張った。ヴェルティアの提案をそのまま受け入れればオルガスは貴族達の信頼を一気に失ってしまうのは間違いなかった。かといってディアーネの命令に従わなければオルガスの命はない。
「ま、待ってく……がぁぁぁぁ!!」
オルガスの懇願はあっさりと中断された。ディアーネは何の躊躇いもなくオルガスの右目に指を突っ込んだのだ。
「楽に死ねると思わない事ね」
ディアーネの言葉にオルガスは指さした。指さした方向に目を向けると一人の貴族が絶望の表情を浮かべていた。
「な、なぜ!? 陛下…なぜです?」
選ばれた貴族の声には絶望だけでなく困惑、そして何よりもオルガスへの憎悪があった。
ディアーネは
「ひ」
これが貴族の最後の言葉になった。ディアーネの
「あと四人よ。選びなさい」
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