第06話 立場というものを理解させないと③
「おお!!早かったですね!!ユリもすぐに戻ってくると思います!」
ヴェルティアはディアーネが戻ってきたのを見て嬉しそうに声をかける。そしてディアーネの後ろにいる国王に目を向けた。
「おお、そちらはシュレーゼント王国の国王陛下さんですか?初めましてアインゼス竜皇国の皇女ヴェルティアです。以後よろしくお願いします!!」
ヴェルティアは元気よく挨拶すると国王は呆気にとられた。ディアーネに恐怖を叩き込まれていたためヴェルティアも非友好的どころか苛烈な態度で来ると思ったのである。
「さて国王さんはこれからシュレーゼント王国軍を率いて魔王を討ち取るために戦うことになっていますが、どのような作戦を立てているのです?」
「え?」
「他の国との折衝も当然行っていると思いますが、いつ頃に連合軍を結成できるんですか?」
「は?」
「最終的にどれくらいの規模になると考えますか?そのための補給計画をどうされてます?」
「そ、それは……」
「さぁ!!さぁさぁさぁ!! もったいぶらないで教えてください!!」
ヴェルティアの立て続けの質問に国王は目を白黒させていた。ヴェルティアの友好的な態度に少し気が緩んだのだが、実はディアーネよりも遙かに国を滅ぼす相手である事を察していたのである。
「しゅ、出兵に関しては実は何も決まっておりません」
国王はヴェルティアにそう返答する。
「なんと!! それでは急がないといけません!!」
「じ、実は勇者様は戦闘の素人であると考えておりまして、一定時期戦闘訓練を行ってからと考えておりまして……」
「なるほど!! そうでしたか!! でも私には戦闘訓練はいりません!!むしろ必要なのはみなさんの方なのです!! 国王さん
ヴェルティアの言葉に国王は引っかかるものを感じたのだろう。恐る恐るヴェルティアに尋ねる。
「あの……私も軍事訓練を受けるのですか?」
「当然です!! 国王たるもの兵士達に模範を示さねばなりませんから、受けてもらいますよ」
ヴェルティアの言葉に国王は顔を青くした。ヴェルティアは人の話を聞いているようで実は全く聞いていないことに気づいてしまったのだ。
「ディアーネ、この国の軍事訓練を頼みます」
「お任せください。一ヶ月もあればこの者達も少しは使えるようになると思われます」
「うんうん。国王さんは訓練と並行して他国との折衝もありますけど頑張ってください!!」
ヴェルティアとディアーネの言葉に国王は気絶しそうになる。どう考えてもヴェルティアは国家を破滅させる疫病神としか思えなくなっていたのである。
バン!!
その時、扉が大きな音とともに開け放たれると全員が開け放たれた扉へと視線を移した。
そこにはユリが立っており、誰かを引きずっている姿が目に入った。
「おお、ユリお疲れ様でした!!」
「ただいま。お嬢。待たせたみたいだ」
「いえいえ、今国王さんとの話が終わったところなんですよ。いや~ナイスタイミングというやつですね~」
「あ、そうなの?何か聖騎士とかいう連中が襲ってきたんで遅くなっちゃったんだよ」
ユリの言葉にもはや何度目か分からない激震が走る。
「教皇猊下……」
「痛々しい……」
「見ちゃおれん……」
ユリが引きずる男の顔は殴打によってボコボコに腫れており、元々の顔がわからない程である。
引きずられる男は周囲の者達からの同情に限り無く屈辱を感じている。なぜ教団のトップである自分がこのような辱めを受けねばならないのか納得などできるものではない。
「ほい」
ユリは教皇をまるでゴミのように投げるとヴェルティアの前で止まった。
「初めましてアインゼス竜皇国の皇女であるヴェルティアと申します!!教皇さんですね!!」
「ひぃ!! はい!!キルミュリス教団の教皇であるパオロス=デルカロンドと申します!!」
パオロスと名乗った教皇はヴェルティアにひれ伏した。パオロスからすれば屈辱この上ないのだが、ユリの戦闘力を見てしまえば当然の反応というものであった。誰だって命は惜しいというものであった。
「パオロスさん、あなたにはこれからキルミュリス教団のトップとして魔王討伐に参加してもらいます!!」
「え?」
「なぁに大丈夫です!! この私が魔王討伐に参加する以上勝利は確定されているというものです!ぜひパオロスさんも苦楽をともにして偉業をなしましょう!!」
「わ、私も参加するのですか?」
「もちろんです!! 教皇であるあなたが
ヴェルティアの言葉にパオロスは顔を青くした。まさか自分が戦場に立つなど全く想定していなかったのである。
「もちろん他の教団の幹部のみなさんも同様です!!」
次いで発せられたヴェルティアの言葉に教団幹部達の顔が青くなった。
「パオロスといったわね」
そこにディアーネがパオロスにまったく好意のかけらもない声で言う。その不快害虫を見るような視線に怒りを覚えるが、ディアーネがユリ同様の思考を持っている事を察したためそれを表に出せば命取りである事を察していた。
「はい!! なんでございましょう!!」
「お前達の主神は何という名前?」
「は、はい。ルオス=クイケ神にございます」
「ルオス=クイケ……ね」
この会話がこの世界の神達にとってとんでもない不幸を襲うことをこの時に知っているのは
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