第02話 最強は異世界でも変わらない

 ヴェルティアは宣言が終わると同時にティレンスの体がその場で一回転した。あまりのことにティレンスは受け身を取ることもできずにその場に叩きつけられた。


「う〜ん、受け身を取ることもできないのですか?これは予想以上に深刻ですね」


 ヴェルティアの言葉に我に返った騎士たちが剣を抜きヴェルティアへと殺到する。


「おお、騎士さん達ならそれなりにやれることでしょう!!」


 ヴェルティアは殺到する騎士達を見てにっこりと笑うと拳を振るった。ヴェルティアの振るった拳の衝撃波が騎士達を襲う。

 

「てぇい!!」


 ヴェルティアの放った衝撃波に騎士達は全て吹き飛ぶとそのまま壁にぶつかり動かなくなった。もちろんだが、ヴェルティアはこれで十分に手加減しているのである。もしヴェルティアが本気になって拳を振るっていれば騎士達は肉片とかしていたことだろう。


「あれ?騎士さん達、弱過ぎますよ」


 ヴェルティアの言葉に一同は凍った。今ヴェルティアが蚊でも払うように吹き飛ばした騎士達はこのシュレーゼントでも上位の騎士達である。そうでなければ王太子を始め、国のトップ達が集う護衛に選ばれるはずはない。

 はずはないのだが、その騎士達がなすすべなく吹き飛ばされたことに対する驚きがこの場を支配しているのである。


「おのれぇ!!」


 そこに一人に騎士がすさまじい速度でヴェルティアに切り掛かってきた。先ほどヴェルティアが吹き飛ばした騎士達とは異なる鎧を纏った壮年の騎士だ。

 ヴェルティアは知るはずもないがこの騎士の名は「リアド=メリクルス」、侯爵位を持つ近衛騎士団の団長を務める男だ。


「てい」


 ドゴォ!!ヴェルティアの間の抜けた掛け声と共にリアドが3mほど飛んで着地する。リアドは一拍遅れて膝をついた。リアドは苦悶の表情を浮かべており、胸甲が大きく窪んでいた。


「おお、他の騎士さん達よりは強いですね。素晴らしい!!」


 ヴェルティアは見直したかのようにリアドを褒める。ヴェルティアとすれば本心からの賛辞であったのだが、当然ながらリアドは喜ぶような心境にはない。自分との力の差を理解、いや自分では把握できないレベルの武というものを見せつけられ絶望していたのだ。


「さて、いきますよ!!」


 ヴェルティアは再び拳を振るうとリアドの胸甲へと再び衝撃波が直撃すると、リアドはそのまま吹き飛び壁にぶつかり、そのまま動かなくなった。


「だ、団長……」

「ヒィ!!」


 残った騎士達はガタガタと震え出した。自分たちからすればリアドは遥か彼方にいる実力の持ち主なのにヴェルティアの相手にもならないのである。


「団長? なるほど今の方が騎士さん達のトップなんですか……それじゃあ、次は宗教関係者の方々の実力を図るとしましょう!!」


 ヴェルティアはそういうとにっこりと笑う。見惚れるほどの美しさなのに宗教関係者達は体の震えを止めることはできない。


「それじゃあ、行きますよー!!」


 ヴェルティアはそういうと拳を振りかぶった。


「ヒィ!!」

「く、くるぞ!!」


 宗教関係者達は慌てて防御陣を形成する。ヴェルティアは防御陣を形成するのを見てから拳を振るった。戦闘時ならばわざわざ待つようなことはしないのであるが、ヴェルティアにとってこの世界の人々の実力を図る目的であったために待ったのである。


 ガシャアアアアアアア!!


 ヴェルティアの放った衝撃波は形成された防御陣を紙のように打ち砕くと宗教関係者たちをまとめて吹き飛ばした。


「うーん、これでは防御陣には全く期待できませんね。そうなると治癒要員の扱いというわけですね」


 ヴェルティアはそういうと立っている者達へと目を向ける。ヴェルティアの視線を受けた者達はビクリと身を震わせる。


「それではそちらの方々は戦いで一体どのようなサポート・・・・ができるのですか?」


 ヴェルティアの言葉は立っている者達にとって死刑宣告にも等しく聞こえた。ここまでの圧倒的な力を見せつけたヴェルティアに対してどのような支援を申し出ることができるというのか。


「さて、あなた方は何ができるのです?」


 ヴェルティアの問いかけに一同は顔を青くしてガタガタと震え始めた。


「ま、とりあえず行きますよ!!」


 ヴェルティアはにっこり笑うと残った連中を吹き飛ばした。

 わずか三分ほどでこの場にいる者達は全員床に突っ伏す状態になっていた。


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