眼鏡キャラ普及委員会 その弐のに
私が眠りから覚めてベッドの上で体を起こすと、掛かっていた毛布がスルリと落ちて、何故か一糸も纏っていない自分の上半身が現れいでる。
しかし問題なのはそこではない。
なんと、驚いたことに隣には人影らしきものが見えるのだ。
ド近眼な私は、眼鏡が無ければほぼ何も見えない……シルエットからすると男性のようだが……。
「……え~と……」
私は毛布を引き寄せながら、自分の身に起こった出来事を思い出そうと記憶を探る。
昨日は確か、親友のチーと一緒に呑んで………
……
……
……
そうそう、酒豪であるチーのペースにつき合っていたらあっという間に酔いつぶれて……よし、思い出した。
なんとか家までたどり着いて服を脱いだ所までは覚えてるぞ。
しかし、男と連れ立って来た覚えはない。
間違いなく1人で帰ってきたはずだ。
「……あ」
そこでポンと拳を叩く。
そう言えば私には恋人に近い男がいた。
まだ身体は許してないが、最近なんとなく付き合い始めた職場の後輩だ。
そう、彼に違いない……と言うかそうであってくれ。
私は手探りで眼鏡を捜すが見つからない。
私がもぞもぞと眼鏡を捜していると
「う…ん……あ、先輩……」
寝ぼけた様子の後輩、鷹栖直孝が目を覚ました。
……良かった……今の声は間違いなく鷹栖くんだ。
「ふぁ……あぁ俺も寝ちゃったのか……あ、眼鏡ですか? はいこれ」
そう言って手渡された眼鏡を受け取り装着すると、ようやく視界がクリアーになり、気分も落ち着く。
ふと気になってチラリと鷹栖くんを見ると、彼は服を着たままであることが見て取れる。
彼が伸びをして視線がはずれた隙を見て毛布の下を確認すると、自分も下の下着は着けたままである事を確認できた。
別に処女と言うわけではないからいいのだが、鷹栖くんとの初体験で何も覚えてないというのもどうかと思う。
どうやらその心配は無さそうだとホッと胸をなで下ろした。
私はため息を吐きながら鷹栖くんに話し掛けた。
「鷹栖くん……何故君がここにいる」
「何故って先輩が呼んだからでしょう」
……そうだった。今日は映画を、観に行く予定だった。
しかも自分で迎えに来るように言ったんだった。
ふと時計に視線を向ければ、もう一本目はおろか、二本目にも間に合いそうにない。
罪悪感が沸き起こり、謝ろうと向き直ったその瞬間……その謝罪の言葉は喉を通り過ぎて宇宙の彼方へと消え失せる。
「っ! もがもがもが……ぷはっ! い、いきなり何をする!?」
いきなり引き寄せられて、強引にキスをされたもんだから、私は慌ててそれを引き剥がしてそう糾弾する。
「いやぁ、先輩の寝顔思い出しちゃって……」
「成人男子であればしょうがないかも知れないが、そ う……ちょ……ちょっとま……待て! 待って……んん!」
説教をたれようとしたその途端、スッと彼の両手が伸びてきて、装着したばかりの眼鏡を奪い去られ、また強引に唇を塞がれる。
マズい……眼鏡取られた……。
私の心は途端に動揺し始め、その行為に顔が紅潮していくのが自分でも良く分かる。
「……」
「あれ? 先輩もしかして……」
急に大人しくなった私の様子に、彼も”その事“に気付いたのだろう。
私にとって眼鏡は、心を落ち着かせるための仮面のひとつなのだ。
主導権は私が握っておきたかったのに……。
「……クスッ 先輩……」
そう言って、鷹栖くんは私をベッドに押し倒す。
真っ赤になって目を背けてはいるが抵抗しようとしない私に、微笑みを浮かべながら彼は再び、今度はそっと優しくキスをしてきたのだった……。
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