第2話

「例えば、レンズの傷を汚れだと勘違いして延々と拭き続けているとか」


 涼太が小鼻を膨らませて答える。やや興奮気味なのは涼太なりに合理性が取れていて、杏子あんずの目には推理の披露に酔っているように見える。


「汚れが取れたか確認する為に掛けてみては、まだ汚れていると思って外して拭いているとかじゃないか?」


「あんた、本気で言ってるの?バカなの?流石に三回もやれば気が付くことを何十回もやるわけないでしょ」


 杏子が愚かしい何かを憐むような目で涼太を見る。


「おい、やめろよ。そんな目で見るな。憐憫の眼差しを向けるなって」

「あ、ほら。何処かに行ったわよ」


 見ると男は居なくなっていた。


「なんだよ、杏子には分かるのか。あの男が何故めがねを拭き続けていたのか」


「まあ、98%位の可能性で正しいと言える答えなら示せるわね」

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