第26話 おめめクリクリ

本棚の奥に隠してあった指輪を見つけてしまったことで、動揺を隠せません。

言わなくてもいいようなことも、ぶちまけてしまいました。

かなりのダメージだというのは否定できません。どうしましょう。

こういう時は”メンヘラ発動中”のテロップを出しておいてね、と言われたのに間に合いませんでした。

今朝は目玉焼きを作ろうとして、ボールに殻を生ごみ用の三角コーナーに中身を捨てました。

なにやってるんだろう・・・わたし。

カイも朝から変なテンションで起きてきました。

捨ててある卵とボールの中の殻をみて、

「変です、ヘンかも、へんだろ、やっぱ変、変則4段活用」などと喚いています。

「ごめん、最後の卵ダメにしちゃったから、今日は目玉焼きなしね」

「あのさ、誕生日プレゼント決めたよ」

「えっ、何に?」

「ディズニー。ホテルの予約とったから」

「あれ、私が誘ったのに」

「いいじゃん、今年中はお互いに調整できなかったけど、来年の1月だから予定確認しといてね」

物理的に拒絶されたのでメモリーに訴える気なのか。

”わかった”はそれなのか。


その日バイトに行くカイを見送ったあとに、隣りに後釜が引っ越してきた。

「お隣さん、引っ越してきたんだよ」

「どんなひと?」

「色白でおめめクリクリの可愛い子」

「へぇ~珍しいね、女の子なんて、このアパート、ゆりっち以外みんな男なのに」

「うん、だから男の子だよ。たぶん学生さん」

「おめめクリクリなの?」

目黒健めぐろけんって言ったかな」

「もう名前覚えたんだ」

「だって目黒漣の1字違いの目黒健ですって言うから、なるほどって」

「うざっ」

「何持ってきた?」

「タオル、さっき洗濯機に入れちゃった」

「ダサっ」

「なんで、タオルなんて何枚あっても良いし実用的でしょ」

「こういうのは後腐れなく、食べ物って決まってるの。後々まで残る物って貰ったヤツのこと思い出すでしょ」

「なんだ、それっ、恋人のプレゼントかよ」

「話しかけられても、そうですねしか言っちゃダメだよ。下心見え見えなんだから」

「洗濯物干すときも気を付けてね。下着はあっち側じゃなくこっちに干してね」

「仕切りあるから、見えないじゃん、そんな気を使う必要ないでしょ」

「ちょっと覗けば見えるんだよ」

それって、明らかに自白だよね。正真正銘の覗き魔の自白ですよね。

注文の多いパートナーは、少し鼻息が荒い。

それからお隣さんの話をするたびに、うざっとダサとしか言わなくなった。

タオルは何枚あってもいいのです<レベル70>

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