第10話 告白ですか
隣りの部屋でなにやら揉め事が始まった。
声からすると、やりあっているのは、あの可愛い彼女だ。
喧嘩するほど仲が良いというので結構なことです。
「いいから帰れよ、用事もねぇし」
「そればっかり、理由が知りたい、私がなんかした?」
「俺たち、付き合ってたっけ、言う必要ないでしょ」
「はぁ~、なんか変、好きな人がいるんでしょう、だれ?」
「だから、言う必要が」言葉を遮って女が言う。
「これ、なに、石?」
怪訝そうに手に取ったのは、私が社員旅行の手土産にあげた化石だ。
サントニアンから出たアンモナイトで目玉のようなグロテスクな形をしている。
面白いねとは言ってたけど捨てないで取ってあったんだ。意外と律儀。
「隣の人にもらったお土産、あんま触るな」
「わかった、あのおばさん、だ」
「なにが」
「好きな人」
「違うよ」
「違わない、きっとそう」
へっ、飛躍しすぎです。
なんか真犯人をあぶり出したかのような確信に満ちた回答。
「図星、隠しても動揺が顔に出てる」
私も、その顔を確かめたいです。
「あんた、そういうとこあるよね、でもおばさんなら勝てるかも」
はい、勝負の前にあなたの明らかな不戦勝です。
「おばさん、おばさん言うなよ」あなたも2度繰り返していますよ。
「ますます怪しいね、ムキになって」
「変な風に勘ぐるな」
「でもさ、お財布代わりの有閑マダムでもなさそうだし、全然カイのタイプじゃないし。そうか1度お試ししたら具合が良かったとか」
「いい加減にしろよ、おまえみたいなビッチとは違うんだよ」
「白状した。アハハ、そんなん抱いてたの、あんたじゃん」
聞いたことのない若者言葉。
ビッチ、ビッチ、チョコビッチ?
忘れないうちにググっておかないと。
こういう時はスマホって便利。
ビッチ=雌犬、やりマン。
これを言われて笑っていられるって、鋼のメンタルか。
もしかして顔で笑って、心で泣いてなのか。
私には到底できない芸当。
しばらくすると、ドアを乱暴に閉めて女は出て行った。
買い物に行こうとしたら、二人の会話が飛び込んできた。
当然、聞きたくなくても聞こえてしまう。
寸劇が終わったので、ドアを開けた。
「あっ」
ここで顔を合わせるのは気まずい。
「聞こえてましたよね」
「ええ、ちょっと、、、」
「僕はあなたのことが好きらしいです」
まだ、寸劇が終わってなかったんですか。
そんな風にぼんやりと言われても困ります。
「なにを言ってるのかわかりませんけど・・・」
「心のモヤモヤがなにか、さっき判明したんです。やっぱ好きです」
「うぐっ、、、買い物があるので、急いでますので」
ビックリ、このシチュエーションでの告白ありですか。
私は参加するとは言ってません。
脱兎のごとく、その場から脱出した。
何なの、何が起こったの、こういうことは、こういうことは、ね。
色んなものを
不眠症になったらどうしてくれる。
<レベル45>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます