第11話 決意表明

スーパーの帰り道、隣人がこちらに歩いてくるのが見えた。

ちょっと気まずかったので脇道にそれたが、足早に追いかけてきた。

「さけないで!」その言葉に足を止めた。

「ごめんなさい、僕が唐突に告白なんかするから、ホントにごめんなさい」

「・・・」

「軽率だったけど、ふざけて言ったんじゃない、それは誤解しないでください」

「おかしい、おかしい、私42なんですけど、もうすぐ43です」

なにも公道で大きな声で宣言をしなくても、彼には大体の見当はついてるはずだった。

「知ってます、大家さんから聞いたので」

「だったら、なおさらヘンでしょ。好きとか嫌いとかの話じゃないわ」

「ダメなんですか」

「迷惑です、大迷惑です」

彼は驚いている様子だった。気落ちしたように下を向き、考えている。

「わかりました、ぼく頑張りますよ」

何を?何を頑張るの、不穏な空気を漂わせないで。

「ただの隣人で終わらないってこと、証明しますよ」

落ち込んでなかった。その決意表明に少し安堵したのも事実だっだ。

なんでこうなった。飛躍するにも程があります。

時間をください。時系列で検証をしたいのです。

私は何か暗号を送りましたか?

媚びた目で物欲しそうに、あなたを見ましたか?

どうしたら、こんな状況が生まれるの。

「僕の何がダメなんですか、ダメなとこ直します」

「ダメって、あなたのこと知りませんから、ダメ以前の問題です」

「ですね、だったら経験値を積みましょう、それで認めてもらう」

うわぁーーーめんどくさい、私にその押しの一手は通用しません。

「あえてダメなところ言うなら、その強引なところです。迷惑だって言いましたよね」

「ああ、たまに言われます。猪突猛進っていうか周りが見えなくなるって」

「私じゃなくて、他の人に猛進してください」

「ステイって知ってますか、僕が暴走したら言ってください」

差し出した手のひらを、目の前で止めて見せた。

「犬じゃあるまいし、そんなこと出来ません」

「そうですね、僕はペットにはなれない」

そう、君は19歳の男の子でペットではない。

だから危険なんです。

プロセスとか既成概念をすべてぶち壊して、飛び込んでくるがむしゃらな隕石です。

そんな危険なものを許容したら、いままで育んできた生活が台無しです。

でも私は大人なので、ここは一旦冷静になり譲歩することにします。

「良い隣人でいましょうよ、折角のご縁ですし」

「わかりました、宮下さんも、もっと僕のことを見てくださいネ」

石のつぶてより破壊力のある笑顔で言われ、大困惑。

<レベル55>精神的にも体力的にもキツイです


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