第17話 増援
翌朝、俺はメイドさんを30人追加した。
移住者のフォローとかで、ともかく人手が足りないのだ。
ちなみに、ゴーレムたちは魔法を使えるので、重力制御と結界を使って音速以上で飛行することも可能だし、マジックバッグを使って一瞬で自宅などへ送ってもらうこともできる。
腕力も半端なく、人間の100倍に設定してある。
多分、ソードドラゴンとも互角に戦えるのではないかと思っている。
メイドさんは当然であるが黒のメイド服と白いエプロンを着用しており、ピンクのショートボブは活動的な面からの選択である。ホワイトプリムは標準装備であるが、付け替えも可能である。
今回のメイドさんは、より人間に近い表情にしてあり、喜怒哀楽も表現できるようになっている。
ちなみにだが、メイドさんはロボットではないため、ロボット三原則に縛られない。
俺が許可をだせば、平気で殺人もおかすことができるのだ。
「なあ、ススムよ。」
「何ですかお姉さん。」
「魔法書を読んでいて気が付いたのだが、結解などの空間魔法があるだろ。」
「ええ。」
「転送も空間魔法の一種で、指定した座標軸に沿って空間を入れ替えるんだが、あれって自分にも使えそうなんだよな。」
「俺は魔法が使えませんけどね。」
「まあ、ちょっと見ていてくれ。」
そういうとイライザ姉さんは1m刻みで転移を繰り返していった。
「凄いですね。やっぱり、姉さんは魔王の名にふさわしい存在です。これって、ゴーレム達には?」
「もう教えてある。だから、メイドさんに頼めば、一瞬で移動できるぞ。」
「じゃあ、これからの移住は……」
「ああ、箱舟を使わなくても一瞬だよ。まあ、安全を期するためには、転移先にもゴーレムがいて状況を確認しながら行うのが一番だけどな。」
「ところで、祝福の仕組みはわかったんですか。」
「ああ。治癒系も成長促進もばっちりだ。今は、成長速度を4倍にして育てているところだよ。」
「じゃあ、少ししたらコメや大豆も収穫できますね。」
「ミカンやレモンもな。」
「それなら、次は味噌や醤油の醸造だな。楽しみが止まらないな。」
「あっ、ススム。」
「何?」
「小麦の買い付け終わったよ。」
「ご苦労様。」
「王国のほかの町に行って、収穫の20%くらいを買い占めてきた。」
「こういう交渉事はライラが適任だな。」
「あとね、魚を売って乳牛を買っておいた。」
「そうか、牧場はまだなかったから、牛舎とか作らないといけないな。」
「羊も買ってくるつもりだよ。」
「繊維関係の産業も立ち上げないといけないのか。そういえば、こっちの世界で絹は見たことないな。」
「絹って?」
「蛾の繭からとったとっても柔らかい糸なんだ。それで織った布は最高の手触りだって聞いてるよ。」
「げっ、蛾の繭って……。」
「この世界にはいないのかな、”サーチ:カイコ蛾”……ダメだ。となると、カイコのタマゴからか。」
翌日の午後、俺たちは連れだって城を訪れた。
「はあ、あなたたちって、本当に堂々と来るわね。」
「だって悪いことはしていないもの。」
「貴族側から見れば、立派な犯罪者なのよね。」
「私たちから見たら、貴族の悪行のほうがよっぽどだわ。」
「それで、そちらのエルフの方は初めてですわね。私、アリス・スカイ・ブランドンと申します。よろしくお願いいたします。」
「ほう、もしかして宰相の娘さんですか。ライラがいつもご面倒をおかけしていたみたいで、私はイライザ。見ての通りエルフなので姓は持たない。」
「私のお姉ちゃんなの。すごい頭がよくて、もともとは薬師だったんだけど、今はヤマトの魔法解析担当だよ。それで、どうなの?」
「随分と悩みましたが、お父様とも相談してヤマトにお世話になることにいたしました。ススム様、よろしくお願いいたします。」
「やった。ほかに希望者はいた?」
「魔法局から3人と、土木局から3人。軍から4人の希望者を確認しております。すぐに集まるよう手配いたしますわ。」
その時、コンコンと応接のドアがノックされ、50代くらいのスマートな男性が入ってきた。
銀色の短髪は誠実な人柄を思わせ、スーツのような紺色の上下は派手さは一切なく、質素ではあるが気品のある装いとなっていた。
「これは、ガラエ宰相。ご無沙汰しています。」
「ススム君も元気そうでなによりだ。」
「メイドさん、遮音結界をお願いします。」
「展開いたしました。」
「遮音?」
「ええ、この部屋の会話を盗み聞きされないように、音を遮る魔法を使わせました。」
「ほう。そんな魔法があるのだね。」
「こちらのイライザ嬢の研究成果で、正直なところこの王国の魔法や魔道具と比べて100年ほどの先端技術になっています。」
「ふむ。君が見せてくれた自動小銃や空を飛ぶ魔道具のことは聞いているが、ほかにどんな技術があるのだね。」
「今、うちで使っている移動用の乗り物は、時速900キロで空を飛べますし、祝福による植物の成長速度は4倍になっています。」
「時速900キロで移動できれば、3時間でこの国を縦断できるではないか……。王都から辺境の町に行くだけで一か月要するというのに……。」
「最先端の技術でいえば、このメイドさんも魔道具なんですよ。」
メイドさんがカテーシーで挨拶をすると宰相とアリスさんが固まってしまった。
「魔道具……、この女性が。申し訳ないが触らせてもらえないだろうか。」
メイドさんは宰相に近寄って手を差し出し、どうぞと言った。
「た、確かに体温は感じられないし、目をようく見れば人工物だと思えなくもないが……。」
「彼女は人間の100倍の力がありますし、イライザと同等の魔法も使えます。」
「それは、彼女一人であっても、我が国の軍と戦えるということ……だよなぁ。」
「まあ、剣と初期魔法だけのこの国ではどうにもなりませんね。」
「ところで、今回アリスのほかに10名の希望者がいると聞いている。国としては無期限の留学生としたいのだが、それでいいだろうか?」
「ご配慮いただき、ありがとうございます。それでニワトリの方なんですが。」
「やはり、全部回収してしまうのかね……。」
「……、宰相殿に敬意をはらい、半分は残しましょう。」
「本当か!そうしてもらえると我が国も希望が持てる。」
宰相との会談の間に、留学生として立候補した10名が集まってきた。
「ごめん。申し訳ないが君を連れていくことはできない。」
「なぜですか!」
「君は、我が国の魔法技術を盗んで、この国で出世することしか考えていないだろ。」
「何の根拠があって!」
鑑定メガネには、彼の出自から信条まで詳しく表示されているのだ。
「自分の誠意を述べるのでなく、根拠を求める今の発言が如実に語っているだろ。」
「すみません!代わりに、私じゃダメでしょうか!」
「あら、内務局のリンちゃんじゃない。ススム、このこなら私も推薦できるわよ。」
「ライラさん……。」
こうして10名の留学生が決まり、荷物を送るためメイドさんが同行し、夕方再度集まってもらうことにした。
「じゃあ、私は薬師ギルドの希望者を確認してくるわね。」
「私は商業ギルドへ行ってくるわ。」
少し経った頃、例のダメ王子が全小隊とともにやってきた。
「ススム、もう逃がさんぞ。」
この国で小隊というのは、50人規模の舞台であり、第三小隊まで含めると総勢150人規模となる。
当然総隊長となる貴族がいるのだが、高齢であり寝込んでいるために第一小隊長が好き勝手に振舞っていると聞いた。
「ジェームズ王子、懲りない人ですね……。」
【あとがき】
うん、ジェームズ王子は定番化してますね。
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