清潔になろう
@uni2222222
清潔になろう
私のアパートには大便器の真横にシャワーがある。シャワーを浴びる際は、鼻が曲がるような尿の匂いを嗅ぎ続けなければならない。鼻が慣れると臭いを感じなくなる。しかし、鼻が慣れた後の方が不快だ。その存在が認知できなくなることで、尿の匂いのする気体に包まれて体が尿まみれになる。そういった想像が私の脳裏にこびりつく。また、それは私の危機察知能力を掻い潜ったなにかに変貌することで、私の体内に尿を侵入させる。白色のタイル張りの壁は所々茶色。タイルに装飾として描かれている可愛らしい熊でさえも小汚く見える。掃除用の茶色い湿ったモップ。排水口は汚れの集大成のような色だ。そこで私が一番嫌悪感を抱くのはその部屋にある排水管だ。その排水管からは時折水が流れる音が聞こえる。おそらく上階の人間が使用したのだろう。この部屋の雰囲気。そして、使用済みかつ見ることのできない液体。糞尿。唾液。汗。毛。精液。人間の最も汚いであろうものを全て混ぜた液体が私の真横を流れている。多分それはドロドロで、とてつもない悪臭を放つのであろう。視認できないことが私に最悪を想像させる。そして、その液体はいつやってくるかわからない。得体の知れない恐怖。しかし、私が嫌悪し、恐れているそれは私の体からも発生する。私というのはこれほどまでに穢らわしい存在だったのか。なんて嘆かわしいこと。私もこの液体の製造に加担していたのだ。私はこの恐怖の液体を製造することでしか、清潔になることはできない。しかし、私は今日も私の灰汁を濾し出す行為をやめるわけにはいかない。私自身が灰汁そのものになってしまう。憂鬱だ。今日もこの恐怖心。そして、自責の念に駆られながらシャワーを浴びなければならない。
清潔になろう @uni2222222
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
大学生/@uni2222222
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます