第二話 転生


スタタタ


と、一人の少女が横断歩道の上を駆け抜けていく。


彼女は 津波 咲【ツナミ サキ】、ごく普通のごく平凡顔に生まれた女の子である。


違うところと言えば、

「推し活力」があるというところだろう。


「推し活力」


それは、推しを愛で、推しのグッズを買い、貢ぐことで、日々、推しがいる人が溜めている力である。


そして、その力を持つ人の一人に彼女が入っているのである。


さて、「なんで、彼女の視点から離さないのか?」、と疑問に思っている人が多いことだろう。


だか、まずは自己紹介として、このキラキラと輝く光沢の銀の髪を持つ、美しいイケメンさんとして、Sと名乗っておこう。


そして、

みなさんお気づきだろう。


わたしは、神だ!


さて、自己紹介もこれまでにして、そろそろサキ、「推し活力」を持つ彼女が転生するところだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


キィキィーーーーーードンッ


トラックが目の前に飛び出して、タイヤで悲鳴を鳴らしながら、私の体を跳ね飛ばす。


視界が反転し、体中のところどころから激しい痛みが頭の中を埋め尽くす。


体から血が出るように、体からどんどん体温が抜けていき、寒さを覚える。


楽しい時間がなくなり、私の世界は阿鼻叫喚で満たされる。


出血大量で、目に見えるぐらいに私の体と周りは赤に染まる。

誰に見てもわかるように息も絶え絶えだ。


こんなところで終わるのか…。


私の推し活はここで終わりを迎えてしまうのか?


まだ、やり足りないのに?


悔しくて、涙が出てしまう。


………。


考えは末、

いや、遺言だけでも、と思い。


せめてもの救いで、一番近くにいた紺色の髪の人に、「家族に埋葬と一緒にグッズを埋めてくれ」と、遺言を頼んだので心配ごとは無くなってしまった。


これで、安心安らかに行ける。


私の視界は黒く染まって、世界は静かになった。


ーーーーーーーーーーーーーー


「グギャース」「ギャース」


なんだ、猫の声が退化した聞こえてくる。そうか、私、地獄に来てしまったのか。


「目が覚めてるなら、早く起きて」


優しい声色が聞こえて、思わずグワッと起き上がってしまう。


「体にも精神にも異常なしっと、はい、これ」


と、突然、頬が引っ張っられて、雑草が目の前に飛び出してきた。いや、アルラウネの初期型のような野花だった。

その野花は紙に何かを書き込むなり、手紙を突然渡してきた。


困惑する中、話は急ピッチで進んでいく。


「ほら、早く手紙を見て」


野花に促されて、手紙を開く、そこには直筆の文字が書かれていた。


お世辞にもそんなに上手くない文字で。


ーーーーーーーーーーーーーー


こんにちは。

初めまして、とあるAの神さまです。


突然だけど、先に謝っておくね。

ごめん。

今、君は自分がどうなっているの知りたいだろう。

だから、

まずは大事だと思うことを二つ話すね。


まず一つ目、君はこの世界に転移しました。

元いた世界では、トラックに引かれて死亡したんだけど、こっちの世界に連れてくる時に、体を修復して、生きている状態に戻したよ。


そして、二つ目、この世界に来てもらったのは、君にこの世界の安定を測ってもらうために連れてきたよ。

簡単に言えば、君にこの世界の管理者になって欲しい。


これについては、早い話で「はい」と答えて欲しい。


 はい・いいえ


ーーーーーーーーーーーーーーー


いきなり選択が迫られる。驚きだらけだけど、まず選択できることに驚いた。

だって、こういう話では大体がもう本人の意思関係なく、決定しているものだが、自由決定権があって、純粋に嬉しい。


だから、選択の上にある言葉を見ていないフリをして、「いいえ」を押した。


ーーーーーーーーーーーーーーー


今の回答は無効です。


はい・はいっ!


から、選んでください。


ーーーーーーーーーーーーーーー


パネルが現れ、まんまと私の回答は無効にされ、ハイしかない選択肢を迫られた。


私は渋々と、はいを押した。

なぜなら、パネルが物理的に圧力をかけてきたから。酷いっ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ありがとう。了承してくれて、私も嬉しいよ。


さて、なんで君が世界の管理者にならなければならないのかは、この本を読んでくれ。


では、またどこかで、サキさん。


ーーーーーーーーーーーーーーー


手紙は短文で終わっていた。

そして、「この本」と私が黙読した時に、本が何もない空中から落ちてきた。


そこには、この世界についてが詳しく書かれていた。


読もうとも思ったけれども、太陽が傾き、夜に差し掛かっていたので、野花ことノハさんに案内されて、私用のツリーハウスに連れて行ってもらった。

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