第7話 エムザラ

「おい!大丈夫か!ノアや!起きるのじゃ!」顔をペシペシされる。うーんもう少し寝かせてくれよ。寝ぼけ眼で見るとジュエルが頬をペシペシしている

「ジュエル…後10分だけ寝かせてくれ…」ノアは寝返りをうつ。

「何を寝ぼけているんじゃ?わしはアークじゃしっかりせい!」するとアークは思いっきり張り手を頬にかます。

「痛ってぇ!何すんだよ!」ノアが起き上がる。

「やっと起きおったか。全く心配かけおって。」アーク?顔がジュエルにそっくりだ。ただすごく幼い。出会ったばかりの7歳のジュエルにそっくりだ。髪の色は栗色ではなく黒いが。

「おい。その顔…それにどういう事だ?っておい!何で服を着てねぇーんだ!」アークは服を着ていなかった。身体は幼いが女の子が服も着ないで何してんだ!?

「おや、小僧にはわしのボディーは少々刺激が強すぎたかのう」ニヤニヤと笑いながらそう言うと銀の砂粒がアークの周りに渦を作る。あっという間にアークは白いワンピースを着ていた。

「何だ何だ!?どうなってんだ?」ノアがあんぐりと口を開け瞳が白黒する。

「どうじゃ!これがナノマシンじゃ部屋から出たおかげで自由に使えるわい」アークが腰に手を当てふふんと鼻を鳴らす。

「すんっげーな!何でも作れんのか!?その身体も自分で作ったのか?」

「そうじゃとも!何でも作れる!っと言いたいところじゃがそうもいかんのじゃ」アークがため息をつく。

「これはナノマシンを使って生成したに過ぎん。かつての博士が作ってくれた身体を作るには時間もコストもかかる。つまりナノマシンも足りなければ素材もたらん」アークがやれやれと首を振る。

「でもすげーな!本物と区別つかないぜ!マジでどうなってんだ?」ノアがしげしげと見つめる。

「そうじゃろう!そうじゃろう!中身はスカスカじゃが肌質も再現されておるぞ!触ってみるか?」そう言うとアークはノアの手をとり自分の胸に手を当てさせる。

「なっ何すんだっ!やめろ!」急いで手を引っ込める。

「顔を赤くして何を照れておるのじゃ。可愛いヤツめ!どうじゃった?乙女の胸は!最高じゃろうて」アークがニヤニヤと笑う。

「正直、平で柔らかさはわからんかったよ」ノアが赤い瞳で恥ずかしさを隠すように言う。

「んなっ!なんじゃと!?失礼なガキめ!しばき倒してやろうか!」するとアークの手元に銀の渦ができ鋭利な刃が握られている。

「わ、わるかった!すまねぇ!」サクラテスの胸のデカさを笑ったら本気で殴られたっけやっぱり女は怖ぇ。

「もう良いわ…次はないぞ?」そう言うとアークは刃を消し真面目な顔で話し出す。

「まずはわしをあそこから出してくれた事、本当に感謝してもしきれん。ありがとうなのじゃ」アークが小さな頭を下げる。

「別にいいよ!俺が嫌だっただけだ」そう言うとノアの瞳がピンクになり照れたように頬を掻く。

「いや、それでも感謝しとる。この恩は必ず返すぞ。それとノアに謝らなければならん…」そう言うアークは目を伏せ言いずらそうにした後意を決したように頭を上げ言う。

「ここはお主らが来る3年前の地球じゃ」アークはノアの目を見て言う。

「なんだって!?じゃぁ皆は居ないのか!?」ノアがびっくりし叫ぶ。

「その通りじゃ…しかも座標もだいぶズレてしまった。お主らが降り立つ場所からもだいぶ離れている」アークが言いずらそうに言う。

「そんな…」ノアはどうすればいいかわからなくなる。まさか…

「俺のせいか?」ノアが言う。

「わしが投げられ制御が難しくなった…じゃがお主は何も悪くない。わしの責任じゃ。」アークが俯く。

「いいや、完全に俺の自業自得だな!それに大丈夫だ!何とか何だろ?3年もありゃ元の場所に帰れるって!」ノアが青い瞳で強がって見せる。

「本当にすまなんだ…必ずノアを皆の元に帰してみせるからの」アークは小さな顔を上げ真剣に言う。

「おう!期待してるぜ!それより喉が渇いたなぁここどこなんだ?」辺りを見ると砂漠。周りは一面砂だらけ。何も無い。

「わしのデータではインドの南部辺りじゃな…しかし…長い時間で大陸もだいぶ動いているだろうしのう、どうなってるか検討もつかんわい」アークが腕を組んで考え込む。

「水ならこの先にあるみたいじゃぞ?わしのセンサーが感知した!オワシスってやつじゃな!」アークが指を指すが全く見えない。

「どこにあんだ?」ノアが目を凝らすが見えない。

「ほんの10km先じゃ!」アークが簡単に言う。

「10km!?マジかよ…」ノアが舌を出し項垂れる。

「さあさあ日が暮れる前に行ってしまうぞい!」そう言ってアークは歩き出す。ノアも嫌そうに歩き出す。



オアシスの水を汲む。備蓄の水が残り僅かな事を考えるとできるだけ汲んでいってしまいたいがかなり重い。どうしたものかと考えていると離れた所から大きな音が地響きとともに聞こえる。すぐさま身を低くし双眼鏡を取り出す。音の方を見ると巨大なモンゴリアンワームが獲物を追っている。モンゴリアンワームとは大きなミミズの様な生き物で体調が何十mにもなるがあんなにデカイのはそういない。

「まずいな…迂回して帰るしかない。」水は取り敢えず今汲んだ分だけにし直ぐに帰らなければ。そう考え双眼鏡を下ろしかけるとモンゴリアンワームが追いかけている獲物を見て驚く。

「人!?」どういう事だ。人がまだ居たのか?この辺は皆死んだと思っていたが遠くから来たのか?今はそんな事を考えてる暇はない。助けなければ。ボロ布のようなローブを翻し風のように走り出す。どうやら2人居るようだ。

「マスクを付けてない!どっかに落としたのか?このままでは死んでしまう!」射程圏内に入ったモンゴリアンワームに背中に背負っていた大きな銃を向ける。息を整え標準を合わせる。

「1、2、3、バースト」引き金を引く。すると凄まじい緑の閃光が辺りを一瞬照らす。目を凝らすとモンゴリアンワームの頭は無くなっている。急いで2人の元まで駆け寄っていく。

「助かったぜ!お前が助けてくれたのか?」男が言う。その男に急いでマスクを付けさせる。

「早くこれを付けて!何分位外してたの!?」男に問う。

「何言ってんだ!?ちょっやめろって!」男が暴れてマスクを外そうとする。

「動かないで!随分たってる…脳にダメージが出てる…」男に馬乗りになる人は全身を黒い服に身を包み顔を覆うマスクをして背中には大きな銃をぶら下げている。

「そっちの子も早くマスクをして!」マスクをその子にほおる。だがその娘はマスクを受け取るがつけようとしない。この娘も脳にダメージが?

「落ち着くのじゃ!お主は誰じゃ?それにわしらにマスクは必要ないわい」この娘は何を言っている?

「そんな訳ないでしょ!マスクをしてないと直ぐに死んじゃうんだよ!?」マスクの男は叫ぶ。

「そやつは宇宙人じゃ!厳密には違うが…目を見て見ろ!」娘が叫ぶ。男の目を見て見ると目まぐるしく瞳の色を変えている。

「恐らくこのマスクは光の粒子を体内に取り入れない為じゃろ?地球人にしか効かん!」

「本当に…宇宙人なの…?」マスクの男が退けながら恐る恐る訪ねる。

「誰が宇宙人だ!?俺はノアだ!」そう言う男は立ち上がり服に着いた砂を払う。

「それに俺から見たらお前こそ宇宙人だぞ!」青い髪の男が笑いながら言う。瞳が黄色く光る。

「それじゃ…君も宇宙人…?」娘に聞く。

「わしは違うぞ?わしはAIのアークじゃ!」小さな娘は腰に手を当て無い胸をはる。やっぱり2人とも脳にダメージがあって瞳の色の変化は僕も脳にダメージが!?マスクの男はその場にへたり込む。

「大丈夫か?お主?名は何という?」アークと名乗る自称AIは僕に顔を近ずける。

「僕はエムザラだよ」マスクの男が言う。

「よろしくなエムザラ!何か飲みもんねぇか?喉乾いて死にそうなんだ…」ノアと言う男が舌を出しながら喘ぐ。先程汲んだオアシス水を手渡すと勢いよく飲む。

「ぷっは!うっめーぜ!!!あんがとな!」ノアが口の周りに着いた水を袖で拭きながら言う。

「アークも飲むか?」ノアはアークに水の入った水筒を渡す。

「わしは飲もうと思えば飲めるが飲まんでも大丈夫じゃ。」アークが肩を上げながら言う。

「便利な身体だなー」ノアが水を飲みながら言う。

「君たちはどこから来たんだい?」マスクの男のエムザラがへたり込んだまま聞いてくる。2人は顔を見合わせた後こちらを向き一言。

「すごい遠いところ」

「ずごく遠い所じゃ」

2人の声が同時に発せられる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る