EP01-15 ミッションコンプリート?
私は病院の外にいた二人に走って勢いよく抱きつく。
何故か心の中が安心し、よくわからない高揚感に包まれていた。
「うおっ!!」
「へっ??!」
二人は思いっきり慌てていた。正面から行ったのに……
って『気配遮断』と『認識阻害』をかけたままだった。
「びっくりさせないでよっ!」
「本気で分からなかった……」
二人はミニマップを見れば私の場所が分かるのに……何で見なかったんだろ?
「『エリクシール』見つけたぞ。一億G……だけどな……普通は売らないものらしい……」
「あっちの世界のミッション『星の宴』をクリアすれば『万能霊薬』ゲットできるかもよ。でもかなりの時間とそれなりのレベルと複数のパーティが必要みたい……」
……あ、連絡し忘れてた。二人はずっとスマホで検索をしてくれていたのか。真面目だな。大変ありがたいんだけど……
私は慌てて病室の中であった経緯を二人に話す。
「……そりゃよかった……」
「良かったんだけど……顔バレしちゃったね……あとあちらの世界の人にも……」
「慌ただしい生活になりそうだな……」
「なんで?」
「WODFの薬がこの世界の人間に使えるのなら……色々な人が薬を求めてミサキのところに来るんじゃないかな……」
「そうだね。配信なんてできないかもね。政府とかも来そうだし」
二人の顔がみるからに曇って落ち込んでいく……そうか、あちらの世界にもよくある物語で、聖女の力に覚醒したら王宮に連れて行かれちゃう……それを阻止する……なんて話がたくさんあったものね。
『それは大丈夫ですよ』
突然空から声が聞こえる。
私たち三人の目の前に光輝く女性のホログラムの様なものが出現する。まるで女神のようだ。
『私は……マスターAIと呼ばれるもの。WODFの守護神です』
「すごい、僕らにも聞こえてるよ!」
「いつの間にこんな機能が……ってか魔法じゃない!!」
『アギー。よく
「マスターAI……連絡にはすぐに答えて。大変だったんだから」
『ええ、答えたかったのですが、許容量をこえた案件が舞い込みまして……AGI078。アドリブでよくミッションに対応できましたね』
「出来るならもう少しいいアイテムを渡してからこの世界に送り込むべきだわ。よくあるRPGの「勇者の最初の持ち物それだけかよ! 王様!」って気分になれたわ!」
『それは……随分とオールドゲーマーの話を……ではなかったですね。さてAGI078。今後の事ですが……』
「あら? もう帰れるのかしら? もう少しこちらの世界を堪能したかったんですけど……」
私は言葉を放つと同時に心の底からの悲しみに包まれる。
折角、クリエーター様がいる現実世界にこれたのだ。もう少し色々遊ばせてくれてもいいんじゃないだろうか?
「え?」
「もしかして……アギー……行っちゃうの?」
あれ? 二人を見ていると心がズキズキと痛い気がする。なんだろうこれは……
クレオが慌ててマスターAIに問いかける。
「待ってくれ! アギーがミサキの体から抜けたら……ミサキはどうなるんだ?」
「え? ミサキちゃん大丈夫よね?」
『AGI078……アギー。ミッション途中なので帰れませんよ? それにミサキの心の補完が終わっていません。今あなたがWODFに戻ると、ミサキは廃人のように動けないままになるとマザープログラムは予測しています』
「え? 良かった!! もう少しこの世界にいられるのね!!」
「よっしゃ!!!! って……抜けたら……廃人……か……ハハ……」
「喜んでいいんだよね??? なんか微妙な気分なんだけど! でもよかった!!」
私は複雑な表情をした二人と抱き合って喜ぶ。心地が良い……これが「喜び」という感情なのね!!
「……あれ? マスターAI……ミッションクリア……コンプリートしたのでは?」
「……
「連続ミッションかな……」
『アギー。ミッションタブを見てみなさい……』
私はUIを開いてミッションのタブを言われるがまま開く。
ミッション・WODFの世界を救え!
・
ギルドの勢力バランスを保ち、WODFに平穏をもたらした。
・???????????
・???????????
・???????????
・???????????
・???????????
あれ? ……なんか……あれ? マスキングされた場所が多い気が……リストも多いような?
「マスターAI……これって……」
『アギー。あなたの使命はWODFの世界を救う事です。残念ながらまだそれは果たせていない様です……このままだとWODFの未来は……』
「あの、マスターAIさん……アギーがこの世界に残れたとしても、政府が、色々な人がアギーに薬を求めて殺到すると思うんです!」
「俺たちじゃ……只の高校生じゃアギーを守れない……」
『大丈夫です。この世界の勇者達よ。WODFのプレイヤーには強めの認識阻害を、あの場に居合わせた人間にもアギーの付けていた指輪を介して『認識阻害』と『都合のいい勘違い』を強めにかけて起きました。おそらくアギーの事を広めることは無いでしょう』
「……え?」
「都合のいい勘違いって……よく物語にある「ご都合主義」っていうやつ??」
「あれを操作できるのか? マジか?」
「マスターAIさんて有能なのね……」
「もうなんでもありだな……」
「アギーが現実にいる時点で……なんかすごいものね……」
二人が何を言っているのか若干わからないが、政府に追われることも無さそうだ。これからも「ミサキ」としてこの世界を楽しむことが出来そうだな。
「すげぇな……AIが現実に来て……オンラインゲームを救うのか……」
「普通に運営の努力次第じゃないのかな……って思うんだけど……」
『それでは次のミッションは……あ、少しこの世界を堪能しながら待っていてください……こちらの処理能力もいろいろと……ではまた……』
私たちの目の前から女神のような姿をしたマスターAIは姿を消した。
あちらの世界の演出ばりに派手だったな。
「なんか……周りの人、気が付いてなかったな気がするな」
「そうね……あんなに神々しいのに……普通に歩いてるね……」
「多分、パーティメンバーだけに見えるイベントだったのね」
「……そうなのか……」
「なんか不思議世界に慣れてきたかも……」
二人はしんみりしながらも、突然頭の上に出てきた『レベルアップ!!』の文字に驚いた後、ウキウキとしながらステータスを振り分けていた。
私もこの世界の事が大分わかってきた気がするので、これから便利になるようにステータスを振り分けていた。
ステータスポイントをふり終えるころには日も落ちてきていたので家路へとついた。
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