EP01-12 昼休みの作戦会議
私は翌日の昼休みにクレオとユズラと昼ご飯を食べていた。
最初の時の一口目の感動こそなかったが、とてもおいしい牛丼だった。私は思わず声を漏らしてしまう。一口一口が痺れるような感覚を受ける。
「ん~~~~~!!」
「相変わらずおいしそうに食べるね」
「ほんとに……」
「だって、ものすごいのよ。この舌の根元にじゅわーっとうまみ成分が伝達してくるの。じゅわーって」
「保育園児みたいね……」
「アギーって、ほんとAIなの? 人間率高くないか?」
「ね、表現の仕方とかミサキっぽいよね」
「え? そうなの?」
私は意識をしていなかったが……擬音語を使うとコミュニケーションが柔らかくなるので使う様にとプログラムをされている。この項目はなくした方が良いのだろうか?
「それで
「全然……一応、彼の所属する副ギルドマスターとは連絡を取ったけど、知らないって。2週間ログインしてないから心配……みたいよ」
「こっちもSNS周りで探してみたけど2週間前で更新が途絶えてるんだよね。ただ、オンラインゲームと違ってSNSの方が情報が多いから身元探すにはこちらの方が良いかもね。活動報告とかで
クレオが弁当のご飯を呑み込んだ後、箸をくるくるとまわしながら話し出す。楽団の指揮でもとっているのかしら?
「あとは、アギーが運営会社の前に行って、情報管理系の人間をさらって情報を得る……とかかな……」
「え? なにそれ?」
「あ、ほら。アギーの鑑定を使って、WODFの情報にアクセス出来そうな人を探して魔法で操るとかして情報をもらえば……幻惑の魔法使えないかな? なんか好かれる薬みたいの無かったっけ?」
「それって犯罪じゃないの?」
「……犯罪だな……バレれば……」
「そうか……バレなければ……」
二人は本気な熱意を籠った視線で私を見てくる。
「そんなに便利な魔法やアイテムは……」
私はクレオのやり方を軽く頭の中でシミュレーションしてみる。『鑑定』はそこまで万能ではない。ゲームに不要な情報は優先的に表示されないはず……『鑑定』にもスキルレベルがあったが……私のは……普通レベルだな。
それに人の心を操作する魔法は……無いな。アバターのステータスは操作……と言うより状態異常ね。痺れて動けない。毒、石化、勝手に動く、操作が逆、魔法使用不能、行動不能とかならあるんだけど……ん~あとはゴーレムを操るものはあったけど……無生物だけね。操作できるのは。
NPCの好感度を上げる薬があったけど……あれは店売り価格が安くなったりクエストを受けれたりするくらいだったからな……恋愛シミュレーションサーバーだったらもっとありそうだけど、あちらは私の領分じゃないからなぁ……
「うん。無いね。分身見せたり、煙で包むのしかないかも」
「そうか……鑑定だけでなんとかするしかないのか……」
「鑑定だけでもすごいんだけどね。この世界だと」
今の話の内容だとこちらの世界だと『鑑定』は使っちゃダメなのかな? 困ったな。結構頼りにしているんだけれど……こっそり使えって事か。バレなければいいんだったね。
「うーん困ったなぁ……鑑定だけで
「他にも便利スキルは無いの?」
「エリア検索はプレイヤー名じゃできないみたいだし、現実の名前がわかれば一発なんだけどな」
二人は私の発言に呆然としている感じだった。
「え?
」
「なぁ、それって指名手配犯を捕まえ放題じゃないの?」
「? プレイヤーじゃなくてもできるのかな?」
「あ、もしかして俺とかユズラがで検索できるのって、WODFプレイヤーだから?」
「そうかも。よく分からないけど」
私は試しにスマホの指名手配犯を検索してみる。二人の視線が異常に熱い……期待に添えると良いんだけど……ああ、検索候補……無しか……
「本当だ。現実の名前を知っててもダメなんだね……プレイヤーが条件なのかな?」
「この指名手配犯ってやってると思う?」
「かなりおじさんだよね、ギリWODF年代? ってか、WODFを楽しんでたらこんな犯罪しないんじゃない?」
「だよなぁ……」
私は検索ウィンドウを見ながらあちらの世界との違いに気が付く。
「気が付いたんだけど、隣の『エリアサーチ』が無いわね。ミサキが行ったことがないからかな?」
「プレイヤーの半径何メートル……とかじゃないの?」
「条件多いね。検証必要だねぇ」
私はこの世界が思った以上に不便なことに気がつく。人一人探せないなんて……
クレオが何かを思いついた様で私に確認をしてくる。
「なぁ、これって、マスターAIのクエスト……じゃないの? フラグとかあったりしない?」
「……どうやらミッション扱いね。一応今までの調査結果はまとまっているみたい。次にどこに行けば良いかのガイドは無いわね」
WODFでは小さなクエストは簡単にクリアできるように、色々なフラグのチェックボックスなどが用意されて分かりやすくされていた。だけどミッションやメインストーリーに関してはしっかり会話してね。と言う運営からのメッセージなのか次の大まかな行動だけが表示される形式だった。
ミッションには「このエリアにいると思われる
マスターAIの話だと、この辺のエリアにいるのは確定なんだけど、どこにいるんだろ?
もう少しヒントが欲しい。
「このエリアにいるならさ、探し人でアマテラスさんの名前出しちゃえば?」
「オンラインゲーマーは逃げると思うけど。身バレ嫌だろうし……」
「そうかぁ……」
二人は色々考えてくれるが、手ふさがりの様だった。街を巡回して突発クエストを拾っていけばたどり着く系のベタな攻略方法になるのだろうか? それともしらみつぶしに『鑑定』を……
私は窓の外を何気なく見てみる。この世界の街一つって、あちらの世界だと主要都市レベルなんだよね……何万人『鑑定』することになるんだろうか?
ユズラがスマホの着信に気が付き、スマホのメッセージを見る。
「えっ? 運営?? え??? マスターAI?? なんで? あ……そうか。この世界になれていないから……」
ユズラがメッセージを見て驚いた後、何かを理解したらしい。
「ねぇ? アギー。スマホにメッセージ来てるんじゃない?」
「へ? おお、これが噂の「着信」ね! スマホが光るのはそういう意味だったのね」
私はスマホを見る習慣が無いので完全に忘れていた。スマホをポケットから取り出して開いて中を見てみると……あれ? マスターAIからメッセージが来てる。
【
【メール見なさい!!】
【何で朝も見ないのですか!!】
【頼むから気が付いて……】
【神よ……】
【お願いだから気が付いてください……】
【着信切ってるのね……振動はOnにして……】
【出来るならUIも開いたたままにして……】
【使いたくなかったですが権限を……】
何やらマスターAIの慌てぶりが分かるメールだった。私は怖かったので短く。
【了解しました! 放課後に病院をあたってみます!】
と元気いっぱいに返しておいた。
「アギー……それでいいの?」
「スマホを見る習慣が無い……あ、そうか、UI表示されるからか……」
二人は私のスマホを覗き込みながら色々と考えているようだった。確かに脳内にあるUIまでは覗けないからな……ミサキの方のメッセージボックスにもよく見たらマスターAIからのメッセージが来ていた。こちらの世界が楽しすぎてWODFのUI自体を見るのを忘れていた。
「病院か」
「病院ね……」
私はこの世界の病院を……あまり知らないな。ミサキの記憶だと小さいときに連れられて行った小さな病院のことしかしらない……大きなベッドなんてなかった様に思える。
「ねぇ、ふたりとも。
「うーん、入院できると言えば……月影病院か桜華病院かな?」
「だねぇ、入院だと……その二つだね」
「行ってみたら
「直接見て『鑑定』できればわかるんでしょ?……って入院病棟とか入れないんじゃないの?」
「不審な動きしてたら呼び止められるかも。場所によってはカードキー使って移動してたような気がするし……」
二人の話を聞いていると、どうやら誰かのお見舞いやら、知り合いがいないと病棟に入るのは難しいらしい。困ったな。あちらの世界みたいに、わざと病気のポーションを飲んで倒れて潜入……あれをやるか……
私はストレージを覗くが、病気や毒、仮死のポーションは持っていなかった。最後にやってたのはヒーラーだったから仕方が無いか……魔法でなんとかしちゃうもんね。あとで『錬金』しておかないとな。
「こうなれば強行突破ね」
「え?」
「どうやって?」
私には良い案があった。放課後に私についてきたがる二人を連れて、足早に病院に移動した。
§ § § § § § § § § § § §
☆☆☆ や ♡ などを入れていただけると大変励みになりますので是非ともよろしくお願いします。
感想などお待ちしております。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます