EP01-11・情報収集?
私はいつも通りの部屋着に着替えをする。配信用の服だとクレオの視線がどうしても私の胸元に来るので、ミサキの純潔を守るためにも刺激の少ない服装にした。惚れた子の性的な場所に目が行くのはしょうがないわよね。女性プレイヤーが確かそんなことを……行っていた気がする。キモ……とも言っていた気もしたが。
「ありがとう……」
「童貞にはつらい服だったね……」
「くっ……」
相変わらず二人のやり取りが漫才の様で楽しい。私もあれくらい軽快なやり取りが出来るようになりたいわ。
さて、ミサキの生活を守るためにも早く
「ミサキ! ご飯よ!! ってお友達とサヨナラした方が良いんじゃないの?」
玄関の方から元気な母親の声が聞こえる。仕事から帰ってきた様だ。良いにおいがする……
「あ、もうこんな時間……」
「げっ! 塾いかないと!!」
「大変ね……」
クレオは慌ててバッグを抱えて部屋を出ていく。
「お邪魔しました! ミサキの事お願いします!」
「あらあら、クレオ君。 任せておいて!」
「お邪魔しました」
「え? ユズラちゃん? またいらっしゃい」
母親が玄関で見送った後、私の方へと歩いてくる。
「どうしたの? 一体?」
「ちょっと検索のやり方などを……配信の予定をいれ忘れていて……色々と」
「ほどほどにしなさいよ。それにしてもご飯時に降りてきてくれるなんて久しぶりね」
「? どう言う事ですか?」
私の発言の後、母親はしばらく間をおいて軽く考え込んでいた。
「ほんとクレオ君に言っていたとおりね……」
「???」
「半分人工知能のアギーで、半分はミサキだって」
「……言ってしまったの?」
「昨日、事細かにあったことを伝えてくれたわ。あと「人工知能の話は本物」だって。喋り方や間の取り方……色々かわっているわね……声も姿も同じなのに……」
私はクレオはおしゃべりだな……と思いつつも、説明が簡単で良かったとも思った。
ミサキの記憶によると、天然系だが直感の鋭い母親は騙せきれないと思っていた。
「あんたも、クレオ君を逃したら、変わり者のアンタの面倒見てくれそうな人なんていないんだから……大事にするのよ。って伝わっているのかしら?」
何故だろう。私の胸の奥がジーンと……ショックを受けたような変な感覚を受けた。ミサキの心がまた動いたのだろうか?
「わかったわ。それでお母さま……」
「お母さま?? うーん、なんか涙目になってるし……半分はミサキなのね……」
私は言葉の選択を間違えたらしい……ミサキの記憶をたどらなければ……あ「ママ」か……
私は仕方なしにと思い、言葉を選びながらも母親にここまでの経緯をはしょった感じで伝える。
「……そうすると、そのままだとミサキは死んでいたのね……あんなに無茶するから……借金はそのうち返すでよかったんだけどね……ありがとうね。アギーちゃん」
「いえ……どういたしまして。プレイヤーを助けるのが私の役目ですので」
「とりあえずあなたがミサキの体を動かしているうちに健康にしちゃいましょう。エナジードリンクは禁止。しっかりとご飯と野菜を食べて運動させないとね。あと夜は12時になったら寝る事!」
「わかりました。この体でいるうちになんとかします」
ポジティブシンキングなミサキの母親はスーパーで買ってきたであろう総菜とご飯を一緒に食べながらつぶやくように言う。
「……この不思議な話を動画で配信したら……アクセス数が稼げて大儲けになるんじゃないの?」
「いえ、おそらくミサキはプライベートの人を巻き込まないつもりでいた様なので、それに従おうかと」
「そう……」
ミサキはプライベートと全く違うメイクと服を着ていた。恐らく特定されないため……だとは思っていた。
母親も特に残念そうにしていなかった。それからは他愛のない雑談をする。雑談はサポートAIの本領だ。恐らく楽しんでもらえたかと思う。
なぜかミサキの普段の行動などを根掘り葉掘り聞かれた気がするが……喋ってよかったのだろうか?
私は現実世界の風呂に感動をした後に自室に戻る。
私はまだ操作に慣れないパソコンを使って
とりあえず
私は今日の配信予定はないことを確認し、WODFへと再びログインをする。
私はログインと同時に、大量に問合せや、心配なので送ってくれたメールに一つずつコピペで「大丈夫でした。ご心配をおかけして……」と言うメールを片っ端から返信していく。中にはストーカーのように付きまとってきてる人もいた気がしたが、とりあえず全部出しておけば問題ないだろう。
私は
【おお!今話題のNekoYakanさんじゃないですか、どうしました?】
送った瞬間に返ってきた。思ったより暇なのだろうか?
【突然ですが、
【問い合わせ多いんですよね。配信ネタでは使えないと思いますが、病気を患っているらしく、引退するかも……と言っていました】
【そうですか、お見舞いに行きたいのですが、現実の連絡先は知っていますか?】
【それが、誰も知らないんですよ。メールアドレスは知っていますが、2週間ほど前から連絡がつかないんですよね……NekoYakanさんならいいのかな……やっぱりだめみたいですね。仲間から止められました】
【ありがとうございます】
【いえいえ。配信頑張ってくださいね! 楽しみにしてます】
メッセージと同時にフレンド登録依頼が返ってきた。ミサキにとっても配信数を獲得するのに好条件と思い登録をしておいた。
恐らく
私はこれ以上は無駄だと思い、WODFのミサキがこなしていた日課をやって、ギルドメンバーやフレンド達からのメッセージを返してログアウトした。
「ミサキ! もう12時だから寝なさい!!」
「わかってる!!」
「宿題は?!」
「あ!」
私は学校の宿題が出ていることを「すっかり」と忘れていた。
ミサキのためにも高度な人工知能の私の力を使って……使っても物理的な入出力で手間取り、寝るのは深夜1時になっていた……
スマホが光ってるみたいだけど……まぶたが重い……
私はミサキの体がぐったりとしていくのを感じて、ベッドに飛び込むと力尽きる様に眠りに落ちていた。
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