EP01-10・AIがオンラインゲームを実況配信する時代だね
私は配信用の服と髪型をセットする。現実の体の操作にも慣れてきたのでミサキが出来ていたことは大分出来るようになっていた。このメイクと衣装も登録しておけばすぐにできるわね……ぽちっとな。
「別人みたいだよね……」
「そうだよな……まず学校にはバレないだろうね……」
着替え終えた私を見て二人は何とも言えない表情をする。
そこまで変化があるのだろうか? 私のアートスキルが低すぎるのだろうか? 今度のレベルアップで上げておくか……迷うな。
そんなことを思っていると、クレオがなんだかソワソワし出す。
「な、なぁ……その……もう少し隠さないのか?」
「今時は少し見せないと視聴者数伸びないんじゃないの?」
「だけどなぁ……」
私はミサキの選んだ服を鏡で見る。あちらの世界ではよく見るような感じなんだけど……こちらの世界の服と比べると大分胸元が見えている気がする。
「普通に感じるのだけれども……プレイヤーが良く着てたと思うんだけど……」
「ゲームの世界だと普通……だねぇ……むしろ布が多いね……」
「そうかもね……日本製のゲームは露出が多いって世界的に言われてるってニュース見たことあるよ……」
私はミサキの記憶を頼りに配信の設定をしていく。カメラの写りOK。WODF起動……認証も簡単ね。このスマホで認証か、こちらは数字認証なんだね……とーくん? なんだろ? どういう意味?
私はミサキもよくわかっていなかったので理解しきれなかったが、記憶の手順に従って無事にログインをすることが出来た。
Nekoyakan ってキャラネームだね。猫とヤカン? 私は組み合わせのセンスが理解できなかった。ふつうに猫耳の獣人族が出てくるな。WODFをディスプレイ越しに見ると……遠く感じるな。VR画面の方がAI達の視点に近いのかもしれない。ってか、三人称視点なのね。道理で視野が広い人が多いわけだ。後ろからビックリさせようとしても成功する人としない人がいるわけがわかった。
「うお、凄いメッセージの数……見たこと無いくらいだな」
「流石に倒れる所を映しちゃったから……そりゃそうだよね」
UIのメールの表示があり得ない数になっている。重要メールが来ているな……そちらだけ開くか。
私は重要メールを見る。マスターAIからのメールだった。
いつも通り長く丁寧な文章だった……のでいつも通りに走り読みをしてみる。
・進捗はこちらにログインして送るように。
・恐らくあなたをダウンロードした周辺の地域にいる。最後のアクセスなどは周辺のIPと判明。
・残念ながらキャラクター情報から現実の詳細な住所は取得できなかった。
・そちらで何とかできない?
・こちらでも彼の情報をAI達を伝手に知り合いにヒアリング中。
・分かったらミサキのスマホの方にもメールする。
と言う内容のメールが来ていた。もちろん文字はしっかりとした丁寧な文だったが、記憶しやすいように分かりやすくはしょった。
デジタルな世界なのにアナログな探し方だな……検索できないのかしら……聞き込みなんて……
「すごいね。マスターAI……運営からの手紙なんて」
「運営とは別なんじゃないかな? 独立したAIらしいよ。ゲームを管理するためのAIとか?」
「AIってすごいのねぇ……」
「なんでもAIだもんなぁ」
私はミサキのメモを見る。今日はお勧め素材収集ルートの紹介……らしい。さてと……予定していた位置に飛んで……配信の予定時間がすぐだな。間に合った。
「あ、アギー。倒れたこと心配してくれた人たちに一言いれないと」
「そうだな。結構な人が……ってか配信閲覧数凄い事に……」
「放送事故だもんね……」
「わかったわ。なんとかするわ」
そんな事を言っている間にも、Nekoyakanのキャラクターの周りにはフレンドや視聴者が続々と集まってくる。
【大丈夫だったの?】
【心配したぞ】
【休んでなくて大丈夫?】
チャットログウインドウが文字で埋め尽くされて大変な事になっていた。
普段は配信の邪魔にならない様に距離をとって接してくれているのに、やはり大事だったんだな。
「すげぇ人数」
「処理落ちしちゃってるね……このPCも結構いい奴だよね?」
「ああ、俺の奴より新型だな……」
【倒れたけど大丈夫よ! 一晩寝たら治ったわ。心配かけさせてごめんね。配信は予定通りやるつもりよ】
私は広域範囲のチャットをおくる。すると無事だとわかってくれた人がこの場を去っていく。恐らく自分たちの今日の予定を遂行するためね。オンラインゲーマーは予定通りにその日の進行を進める人が多いものね。
私は場が落ち着いてきたので配信を始める。
私はミサキの時のように、気持ち元気よくしゃべるようにする。
「昨日は突然倒れちゃってごめんなさい。皆さんに心配かけさせちゃったわね。私は大丈夫ですよ! 今日は昨日慌てて介抱してくれた友人二人が脇で私を見守っているから大丈夫よ!」
(すげぇな……声優みたいだ……)
(ほんとスイッチはいると凄いんだよねぇ、ミサキちゃんは)
すぐわきで見ている二人も大人しく見ているわね。ちょっと喋って挨拶してほしいけど……まぁいいか。
私はミサキの記憶を頼りに素材収集コースを紹介していく。初心者を抜け出したくらいの中級者向けだったので割と簡単だ。この辺は方向音痴設定の私でも自分の庭のように覚えている。
「このルートを通ると敵に見つからずに楽に行け……あ、こっちの方がいいかも……実はこの道通れるんですよ! こっちにモンスターは出ませんからねっ!」
私はミサキの記憶と高度な人工知能の私の記憶がぶつかって混ざり合い、化学変化が起きた様に最適な道を選び始める。配信動画のコメントからも【そんな道が!!】【え、行けたの??】【飛行マウントなくてもいけるのか!】【今日は迷わないな?】等のコメントが飛び交っていた。
このエリアはサポートAI時に道案内を何万回とさせられたのですごくよく覚えている。
サポートAIにとっては道案内はお手のものだからね。数百回あたりで『方向音痴』の設定はどこいった?と嘆かれたけど、流石に回数をこなすと方向はわかるようになるわ。
私の後ろで小さな声で二人が何やら話しているが……配信中だけど聞こえて無いよね? 大丈夫かな?
§ § § §
クレオとユズラは実況に熱が入っているミサキを見ながら雑談していた。
「なぁ、なんかいつもよりすごくない?」
「そうだね。操作もすごいし、喋りもすごくなってる……」
「ほんとサポートAIだったんだな……」
「なんだか、彼女が……アギーがそのまま配信した方がいいかもね」
「AIに実況配信してもらうのか……」
「どんどんAIに現実の仕事がとられていっちゃうね……」
「少子化だから丁度いいんじゃない……」
§ § § §
私はサポートAIアギーの時にプレイヤーからされたゲームの裏情報や攻略情報を話ししたりして場をつなぎながら最速で素材回収ルートを紹介していく。予定時間以内に簡単に回れてしまった……どうしよう時間が余った。
「はい。中級者向けの素材回収ルートの紹介でした。感想などありましたらメッセージ・コメントをどうぞ! 良かったらお気に入り登録おねがいしますっ!!」
私は配信動画のコメントに投げ銭やらコメントが入り乱れているのに驚く。半分が新ルート開拓ありがとうとかだったけど、体調を気にする人が多かった。あとは……私を助けるために配信動画に映ってしまったクレオへの質問だった。私はとりあえず事実を話す。
「え? 彼氏じゃないですよ! 近所に住む幼馴染です!!」
【幼馴染やば!!】
【なにそのラノベ展開!】
【友達以上彼氏未満!】
【イケメンカップルじゃん!】
【幼馴染が家に入れるってすごい仲いいんですね!】
【ゲッ! そういう事か!】
私はミサキの時では見たことのない量のコメントを見て若干引いているようだった。ん?? ミサキの感情が出てきたのだろうか? なんか変な感情だな。
私は振り返りクレオに助けを求める。
「どうしよう?」
「どうしようっ……って言っても……俺にはわからないよ……どうすれば??」
「えっと、あまりプライベートの事は話さない方が良いよ」
ユズラが冷静に判断してくれたようね。私もそれが良いと思った。ミサキの感情に振り回されていた様だ。
「えっとこれ以上はプライベートの事は話しません! ごめんなさいっ!」
【彼氏の声が聞こえた! イケメン風!】
【なんか違う女の子の声聞こえた! ほんとに二人いたんだ!】
【三角関係??】
【ほんとラノベ展開!wwwww】
なぜか更なるコメントの嵐が飛び交っていた。
私は目の端で視聴者数を見るが……ミサキの記憶よりもかなり多く、跳ね上がっている感じだった。
ユズラがこれはヤバいと思い若干ヒステリックに叫ぶ。
「配信切ろう!」
「わかった。それじゃ皆さん、ごきげんよう! また今度よろしくお願いいたします! ではでは!」
私は慌てて配信を終了する。
「思ったよりすごいのね……コメントが……」
「ミサキちゃん……じゃなかった、アギー、次からはプライベート出さない方向で」
「そうだな。ミサキに戻った時に大変な事になりそうだな……」
私はミサキの配信予定のスケジュールを見て、若干うんざりしてしまった。
どうやらPCの借金を数か月で返す予定だったようだ……
これは早めに
§ § § § § § § § § § § §
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