第19話 俺と新たな仲間と次の目的地
「やあ、来たな、君たち」
掲示板のところでアルマリレア氏と俺たちは合流する。
横には執事の格好をした老人(アルマリレア氏の専属執事なんだろうが)が袋を手にしていた。
「お待たせしました」
「うむ。ジル、報酬を彼らに」
ジルと呼ばれた執事が、俺に報酬を手渡してくれる。
さすがに、貨幣がそれなりに入っているだけに、ズシリと重く感じる袋だ。
「アレン坊ちゃんを見つけていただきありがとうございました」
「いえ、依頼を受けただけですし、そんな」
深々と頭を下げられると、謙遜してしまうのは日本人の性なのだろうか?
「さて、報奨金を渡したところで一つ提案なのだが、私も君たちのパーティに加えさせてもらえないだろうか?」
と、アルマリレア氏はそう提案してきた。
俺と龍也くんは顔を見合わせて、ゲーム通りの展開だなと苦笑をする。
「お兄ちゃん……」
「まあ、そうなるだろうなとは思ったさ。俺としては特に問題ないけれども、みんなはどうかな?」
一応確認のために、ユリアやエルメにそう聞く。
実際、戦力としては申し分ないし、パーティのバランス的にも丁度良かった。
「私は問題ないわよ。断る理由も無いしね」
「お、恐れ多いですけれども、私も大丈夫です」
それぞれ同意してくれる。
「ははは、まあ、確かに爵位はあるが、気にする必要は無いさ。仲間になる以上敬語も不要! 私の事は『アレン』と呼んでくれたまえ。親しい者にはそう呼んでもらっているからね」
快活に笑うアルマリレア氏……アレン。
ジルさんも、深々と頭を下げる。
「どうぞ、アレン坊ちゃんをよろしくお願いいたします、勇者様」
「勇者様……?」
「ジル」
「真の勇者様のパーティならば、旦那様も断る理由がございません。むしろ、勇者様に貢献したことをお喜びになるでしょう。私も勇者様とお会いできたこと、感無量でございます!!」
「ジル!!」
どうやら、ジルさんは勇者物語のファンだったようだ。
「すまない。ただまあ、私としては君たちに好感が持てたということが動機だよ。さっきも話した通り、王都には『勇者まがい』が多くいるからね」
「いや、まあ、『丸い耳』と呼ばれてる時点で察しもついてたしな……」
勇者物語がこの星において重要な伝承となっている以上は、この星の人々の特徴である『尖った耳』でない限りはそう言われても仕方がないことなのだろう。
とはいっても、この世界にかかわれるのも、ユリアの出している救難信号を受け取った星の船がやってきて、助けてもらえる間までである。
その救難信号も受け取ってもらえるのか、そして俺たちの処遇がどうなるかについてはいろいろと考える必要はあるけれどね。
「ま、何にしても前衛のアタッカーが増えるのは喜ばしいことです。俺達は歓迎しますよ」
「うむ、ありがとう!」
という感じで、アルマリレア氏……アレンが仲間になった。
「そう言えば、元のパーティだった人たちはどうなるんです?」
俺の単純な質問に、ジルさんが答えてくれる。
「適正な料金をお支払いしたのち、契約満了となりますな」
「そうなんだ。なんだか申し訳ないな、引き抜いた形になって」
「いえ、むしろ、アレン坊ちゃんを羨ましがるでしょうな。真の勇者様のパーティに加入するのですから」
この世界の異世界からの勇者に対する熱量と、そこに乗っかる期待値をひしひしと感じる発言だなと感じた。
残念ながら、異世界勇者的チート能力も無いし、期待に応えられるかはわからないんだがな。
「さて、次の目的地だけどどうするかな。一応王都を目指していたけれども、アレンさんの話だと『転生者』がわらわらいて近づかない方がいいって話だったし……」
俺が話題を変えるためにそう言うと、ジルさんが提案してくれる。
「それでしたら、交易都市の【ザッカール】を目指すと良いかもしれませんな。王都よりも少し遠い位置にありますが、他国とも交易をおこなっている港町になります。あとは、国境を介するところにある都市もありますが、治安があまりよろしくないのでおすすめはできませんな」
頭の中にこの国の地図を思い浮かべる。
丁度南部は海になっており、北部は陸続きという感じだ。この盆地になっている山を下り、南部に向かう感じだろう。
距離的には、日本で例えるならば4県ほどまたぐ必要がありそうだった。
「……結構な距離がありますね」
「馬車もありますので、それを乗り継ぐ形で行くと、3日ほどで到着するかと思います」
「むろん、案内は私ができる」
確かに、アレンさんがいるのでその点は心強かった。
ゲームみたいにガチで徒歩で向かいながら敵をシバキ倒して進むわけでもなさそうである。
「まあ、冒険者の場合は馬車を魔物から守ることも仕事の一つになるがね」
……訂正、結局魔物はシバキ倒す必要があるようであった。
「交易の際は商隊を組んで、護衛を雇うけれども、個人やパーティーで移動する場合は自分で身を守る必要があるというわけだ」
「なるほど、なら、基本的に商隊の護衛として移動したほうがよさそうですね」
「いや、護衛は基本的に大きな町で雇われて往復するから、私たちのような旅人には向かないかな」
「はい、むしろ、こっちがお金を払う必要がありますね」
アレンさんとエルメに否決される。
ならば、馬車を雇って自分自身で護衛をしながら移動するというのが基本になりそうだった。
「……世知辛いなぁ」
「ですね」
俺のつぶやきに、龍也くんが同意してくれる。
「ま、何にしても【ザッカール】を目指して旅をするわけでしょ。準備が終わったら明日、出発しましょ」
「そうだな。どちらにしても、今日は疲れたし明日にしよう」
ユリアの提案に俺は乗ることにした。
実際、坑道の探索から帰還までですっかり夕暮れである。
俺たちは新しい仲間である、アレンさんとともに、次の街に向かうことになったのだった。
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あとがき
これで一旦お話はおしまいです。
イメージとしてはSOとFFの混合になっています。
転生者については元から出す予定でしたが、最近よくある系の悪人異世界転生系になる予定でした。
というか、【ザッカール】までの道中に立ち寄る町でも出す予定です。
続きは気分が乗ったら書くかもしれないですが、とりあえず完結とします。
異世界美少女と異世界転移と思いきや、壮大な戦いに巻き込まれてしまった件 ちびだいず @yhoto
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