第12話 俺と異世界での旅立ち

「あの!」


 着替え終わり、お互いの格好を確認し、村長にお礼を言っていると、声を上げたのがエルメだった。


「私も旅にお供してもいいでしょうか?」

「エ、エルメ?!」

「何を言っているんだい?!」


 エルメの言葉に、その場にいた村人たちがざわめく。


「……本気なのだな?」

「はい、昨日、お父さん、お母さんには伝えてあります」


 エルメは真剣な目をしている。

 まあ、村で可愛がっている一人娘が旅に出るといえばそりゃ驚くか。


「ヨシヒロさんたちには、現地の事がわかっている案内人が必要です。常識とか、きっと元の世界では存在しないような困難なことに遭遇した時に、きっと私が役に立てると思うんです」

「だが、エルメ……!」

「お父さん、お母さんは賛成してくれました。いや、お母さんはちょっと反対だったけれども、最終的には応援してくれることになりました」


 俺としては、ついてきてくれるならそれはそれで嬉しいけれども、どちらでもいい。

 どちらかというと決めるのはユリアじゃないかとも思う。

 ユリアと仲良くなっていたしね。


「ユリアさん「ユリア、でいいわよ」、……ユリアはどうしたい?」

「私としては、ついてきてくれたらうれしいわ。この星で初めての友達だしね」

「ヨシヒロさんはどうですか?」


 エルメにそう振られる。


「俺? 俺はまあついてくるんだったらせめて自分の身は自分で守る覚悟はほしいかな。残念ながら勇者チートみたいなものは持ち合わせていないし、俺の守れる範囲はそう多くないからさ」

「勇者チート……?」


 もちろん、守るために最大限尽くすのは前提だけれどね。

 それでも手が届かないタイミングは必ず発生する。特に旅なんてするならば、危険な目に合う覚悟は必須だと俺は思う。

 それに、ユリアとともに旅をするならば、あのサメ異星人の襲撃も気を付けなければならないだろう。

 俺と龍也くんが助かるためには、ユリアとともにいる必要があるので避けられないが、エルメは現地人であるがゆえにかかわらない選択ができる。


「とにかく、俺と龍也くん、ユリアはともに旅をする理由はあるんだが、エルメさんはエルメさん自身の決断が主な理由になる。冷たい言い方をするけれども、エルメさんの自由意志なんだ。もちろん、付いてきてくれるならうれしいし、守る努力はする。けれども、想像もできないような危険に遭遇することは事実なんだ。その覚悟があるならば、エルメさんが旅の仲間に加わるのは問題ないかなって話」

「……覚悟はできてます!」


 思ったよりも力強い声音で返答が返ってきた。

 どうして、エルメがそこまで旅についてきたいのかはわからないが、そこまで覚悟が決まっているならば俺としては何も言うことはない。

 個人的には、俺みたいな一般人にそこまでベットしてくれるのかは気にはなるが、期待されている以上はヒーローにあこがれる身としては責務を果たす必要があるだろう。

 ……やることや抱える重荷が増えてしまったな。


「わかった。なら、俺からは特には反対する理由は無いかな」

「はい!」


 龍也くんの方を見ると、龍也くんは首を横に振る。自分に聞くなと言いたそうだった。

 まあ、パーティメンバーの二人が賛成している以上、龍也くんとしても反対はしないだろう。

 意外としっかりしているなぁ、なんて感心してしまう。

 まあ、龍也くんがしっかりしているのは今に始まったことではないが。そう考えると、大学生の俺の方がしっかりしないとなと身が引き締まる思いだ。


「エルメ」


 と、村長が声をかける。


「はい」

「勇者様、ヨシヒロ様にあまりご迷惑はおかけしないように」

「もちろんです」


 という感じで、俺たちの旅にエルメが同行することになった。


 俺たちは【リリティティス村】から旅経つことになった。

 村長たちに見送られ、俺たちは【リリティティスの森】を後にする。

 右手には農村が見えるし、森から流れている川を引いているのが見える。

 川をまたぐ橋を渡りながら、俺は次の目的地についてエルメに質問をすることにした。


「エルメさん、この道を道なりに進んでいくとたどり着くのが次の街なんだっけ」

「はい。【リリティティス平原】を抜けた先に一度【ノーヴェルン村】にたどり着きます」

「【ノーヴェルン村】ね」

「【ノーヴェルン村】は【リリティティス平原】の東端に位置する村で、丁度交易ポイントになる村ですね。あの【ミッカルド山】から流れてくる川を渡るためにも寄る必要があります」


【ミッカルド山】というのは、俺たちがいる位置から北東北に見える位置にある山だ。そもそも、この周辺は山に囲まれており、平原というが盆地という方が正しい地形に見える。


「それにしても、こんなただっぴろい平原にどうして村を作らないのかしら?」

「川との距離があるんだろうな」

「はい。それに、魔物も出てきます。ちょうど街道沿いにはあまり出てきませんが、山に近い森近辺まで近づくとさらに危険な魔物と出会う可能性もありますから、人が住むには適してないという感じですね」


 地球では思っても無い場所に人間が集落を気づくことが多いが、この世界では魔物の存在がそれを邪魔しているようである。

 こんな平原があるならば、遊牧民の集落があるといっても違和感が無いが……。


「……魔物がいるな」


 街道の上にオオカミの姿をした魔物がいる。


「ガルムですね」


 全員が武器を構える。

 あっちも俺たちに気が付いたのか、臨戦態勢に入った。


「ヨシヒロ!」

「ああ、前線は任せな! ユリアは魔法で援護を頼む!」

「僕はエルメお姉ちゃんと一緒に支援するよ!」

「任せた」

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