第7話 桜子と恵の遭遇


書類が順調に記載などが終わったのでその後のパソコン作業とかも無く。

取り敢えず定時には帰れそうだった。

俺はパソコンの電源を切ってから「さあ帰るか」という感じで立ち上がる。

それから帰宅の準備をしていると世田谷がやって来た。

「お疲れさん」と言いながらだ。


「居酒屋にでも一杯飲みに行かないか?」

「あー。悪い。実は今日はちょっと用事が」

「うん?用事か?珍しいな。独りぼっちのお前が」

「とげが有りまくりだぞお前。殺されたいのか」

「ハハハ。冗談だ。でも帰るっつーなら...」


とそこまで言っていると豊崎がやって来た。

「えー。先輩。飲みに行きましょうよ」という感じでだ。

俺は「すまん。今日はやっぱ帰るわ」と言いながらそそくさと帰ろうとする。

すると俺のスーツの袖が引っ張られた。

犯人は豊崎だった。


「先輩。何だか避けていませんか?私達を」

「うん?そんな事は無いぞ。...ただ今日は帰りたい」

「...何か隠してません?先輩」

「い、いや。そんな事はない。...だから」

「怪しいなぁ」


「また今度必ず飲みに行くから。だから今日は2人で行ってくれ」と言いながら俺はそのまま帰宅の準備を整える。

それから訝しげな感じを見せる2人を置いて去った。

するとタイミング良くメッセージが届いた。


(祐樹さん。今日は早く帰れますか)


という感じでだ。

俺はその言葉に苦笑しながら(ああ。もう終わった)とメッセージを送る。

そして俺は会社を出てから歩き出す。

すると...100メートルぐらい歩いたところで桜子を見掛けた。

私服姿でパーカーを着ている。


「何をしているんだお前は」

「見て分かりませんか?お出迎えです」

「待ちきれなかったって感じか」

「そうですね。制服だとパパ活に間違えられちゃいますので。このパーカー可愛いくないですか?」

「そうだな。確かに可愛いよ」


それから俺は苦笑しながら桜子を見る。

桜子は微笑みながら俺を見ていた。

そうしていると「先輩」と声がした。

まさかの声に俺はバッと振り返る。


「...その方はどちら様ですか?」

「お、まえ!?付いて来ていたのか!?」

「そうですね。...何だか怪しかったので」

「...!!!!!」


俺はかっちんこっちんに固まる。

それから冷や汗をかく。

すると桜子が目をパチクリしながらハッとする。

そして「もしかして祐樹さんの...後輩さんとかですか?」と聞く。


「私は豊崎恵です」

「私は...佐島桜子です」

「...貴方は...その。...先輩の何ですか?」

「私は祐樹さんの許嫁です」


そう話すと豊崎は「!!!!?」となりながら思いっきり見開いて俺を見てくる。

俺は「桜子...お前...」となる。

豊崎は悲しげな顔をした。


そして「そうですか」と返事をする。

それから2人は沈黙した。

桜子が何かに気が付いた様にハッとする。


「成程」


そう言いながら桜子は「えっと。豊崎さん」と言葉を発して俺を見る。

それから「祐樹さんの家に上がりませんか」と優しげに笑む。

豊崎は「...?」となりながら俺達を見る。


「...その。...お話がしたいです」

「でも...ご迷惑じゃ」

「まあ来たら良いじゃないか。バレちまったものは仕方が無い」

「...分かりました。じゃあ少しだけお邪魔します」


そして豊崎は俺達に付いて来る。

それから俺達は家に帰って来ながら豊崎を迎え入れた。

しかし...さっきのハッとした感じは何だったのだろうか?

それが少しだけ気になるが。



「豊崎さん。お茶飲みます?」

「あ。お願いします」


とよさきは礼儀正しく座布団に正座している。

俺はその姿を見ながら沈黙する。

そんな沈黙を豊崎が破った。


「...その。...桜子さんはお幾つなんですか。先輩。かなり若い様に見えます」

「彼女は...16歳だ」

「...ご両親の認可は得ているんですか?」

「...じゃなかったら誘拐じゃないか」

「そうなんですね...」


豊崎は考え込む。

そうしていると桜子がお茶を持って来た。

お茶菓子も持って来る。

それから桜子も正座をした。


「...先輩。これはあくまで助言ですが...18歳未満のしかも16歳の女子高校生と男性が一緒に暮らすのは...流石にいきなりはマズいんじゃないですか。幾らご両親の許可が取れているとはいえ」

「...それは俺も思ったけどな。...帰らないんだよ彼女は」

「うーん...」


そして悩み込む豊崎。

それから豊崎は桜子を見る。

「桜子ちゃん。もう少しだけ成長してから同棲を始めた方が」と言う。

すると桜子は「いえ。お兄ちゃん感覚でもあるので」と断った。


「...先輩も困っていますし」

「...それは...」

「大人の世界は何でもごり押しで通じるものじゃないよ。だって...一人暮らしの男の人だよ?私も先輩は信頼しているけどマズいと思うよ。世間体的に」

「...」


桜子は沈黙する。

そして豊崎は俺を見てくる。

「先輩。先輩ももっと強く言った方が」と言う。

俺は考え込みながら溜息を吐く。

それから「分かってる」と言った。


「...何というか女性のお前に言われたら何とも言えないしな。事実だ。お前の言っている事は」

「じゃあ...」


そこまで言う豊崎に桜子が「豊崎さん」と声を上げた。

それから「もし私がエッチな事をあくまで無理矢理されたりしたら...その時は幾ら何でも考えます。だけど祐樹さんは一切その点は犯罪行為を何もしない。今は両親公認の義兄妹という事で良いんじゃないですかね」とごり押しで言う。

豊崎はまさかの言葉に唖然として「...」と黙る。


「...」


豊崎は何も言えない様な感じだったが。

「羨ましいのに」と呟いた気がした。

うん?羨ましいって何だ。

思いながらだったが聞き返せる雰囲気では無かった。

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