第6話 大切な仲間達


私は愛妻弁当を祐樹さんに作ってあげた。

今頃は祐樹さんは愛妻弁当を食べてくれているだろう。

そう思いながら私は嬉しい気分でご飯を食べる。


すると目の前で一緒に食べていた友人の井上花林(いのうえかりん)が顔を上げた。

顔立ちが良く整っているギャルに近い女の子。

髪の毛とか茶色だし。

だけど私の大切なお友達だ。


「やけに今日はご機嫌だねぇ」

「そうだね。花林。ちょっと良い事があったから」

「そうなんだね。どんな良い事?」

「...色々かな」

「成程。それってもしかして言っていた男の人?」

「ち、違うよ!?」


あたふたする私。

すると花林はニヤニヤしながら「怪しいなぁ」と言ってくる。

「もー違うって」...と言いたいけど。

実際...ニヤニヤしている原因はそれだから反撃のしようが無い。


「もしかして探し出したの?」

「...う、うん。ここだけの話にしておいて。...私、結婚を前提に同棲している」

「ほぁ!?」

「...年上だけど...私はあの人にしか目が無い」

「はぁ...!それは凄い!」


そう言いながら花林は驚いた顔を見せる。

私はその姿を見ながら「えへへ」という感じで赤面する。

花林は「じゃあ内緒だね。これ」と笑顔になる。

そんな言葉に頷く私。


「先生とかにバレたら嫌だしね」

「そうだねぇ。全力で阻止されそう。でも親公認でしょ?」

「公認だよ。じゃないと犯罪じゃない」

「そうだね。...まあそれは確かにね。でもちょっと待って...16歳のピッチピチだけど相手側は襲ったりしないの?貴方を」

「そんな事をしない様な彼だから」

「凄いね。私の付き合った人達はみんな身体目当てだったから」


「ウザくなってみんな別れたけどね」と笑顔になる花林。

何というかそれもまた凄い話だ。

私は苦笑しながら花林を見る。

花林は苦笑しながら「でもおめでとさん。それでもし結婚する時は私を呼んでね」と言ってくる。

私は「必ず」と返事をした。


「でもちょっと不安がらせて申し訳無いんだけどそんな男性なら尚の事大丈夫なのかなって気はする」

「?...それはどういう意味?」

「いや。...優しいんだよね?包容力あるんだよね?」

「そうだね。...あ」

「そうそう。あ、ってなるよね。まだ同棲とは言えお付き合いしてない様だけど...他にモテているんじゃないの?」


「ま、まさか」

私は思いながら目を回す。

それから考え込む。

そして不安げになって花林に向く。


「ど、どうしよう?」

「アピールしてきたらマズいよね。それも同期の人とか」

「さ、さ、流石に無いと思うけど」

「0とは言えないよ?...そんな優しい人なら」

「...」


花林が不安をあおる。

私は顔を引き攣らせながら目をグルグルする。

だ、大丈夫だよね?きっと。

そんな事を思いながら考え込む。


「まあでも大丈夫だと思うけどねぇ。浮気もしなさそうだし」

「そ、そうだよね。アハハ、アハハ...」

「うん。心配のし過ぎだと思う」


それから私はホッとしながら胸に手を添える。

そしてご飯をまた食べ始める。

でも正直...。

もし。

うーん。


「...」

「大丈夫だよ。桜子。絶対にね。...彼は靡かないよ。男と10人付き合った私が言えるから」

「そっか。...有難う。花林」

「此方こそゴメン。不安を煽ったりして」

「ううん。良いの。有難う」


私はそう言いながら花林を見る。

花林はニコッとしながら私を見ていた。

私はそんな姿を見つつタコさんウィンナーを食べる。

すると花林は「そういえば嬉しい事ってもしかして愛妻弁当でも作ったの?」と聞いてきた。

私は赤面する。


「ち、違うよ」

「まあ嘘だね。貴方の目を見れば分かる。桜子は嘘が下手だから」

「もー。揶揄わないって言ったじゃない」

「揶揄わないとは言ってないよ。確か」

「...もー!!!!!」


私は拳を丸めてポカポカと花林を叩く。

花林は「アハハ。どうどう。...でもさ。私凄い嬉しいんだよ?これでも」と言いながら微笑む。

その言葉に私は花林を見た。

花林は笑顔になりながらも複雑な顔で「...心配だったから」と呟いた。


「...病弱な事?」

「そうだよ。...それしかない。...桜子って幸せになれるかなって不安だったから」

「...」

「私、貴方の隣にいつか大切な人が来てほしいって思っていたから」

「...花林...」

「桜子が普通だったらね。私はこんなに心配してない。だけど違うから」


その言葉に私は涙が浮かぶ。

それから拭ってから「ありがと」と花林を見る。

花林は「そうだね。私達の出会いも運命的だったけど本当に幸運な事ばかりだね」とご飯を食べる。

私は頷きながら同じ様にご飯を食べた。


「...でもそっかー。桜子が一番だったか。結婚まで」

「...きっと良い人が現れるよ。花林にも」

「そうだけど...私には幼馴染の相棒しか居ないしね」

「ああ。立花くん?」

「そー。頑固なお方です」

「そうだね...生徒会で忙しいみたいだね」


「そうだよ全く。恋愛感情とか皆無だろうけど」と困惑する花林。

立花要平(たちばなようへい)くん。

別クラスの花林の幼馴染のお固い性格の男の子。

恋愛とか全く興味無さそうでそして花林とは性格が正反対の彼。


「まあでも...それは置いておいて。良かったね。桜子」

「...花林のお陰もあるよ」

「私は友人として貴方をサポートしただけ。だから何もしてない」

「そう言うけどね。私は花林が好きだよ」

「...そっか。恥ずかしいけどね」


それから私は食べ終えてからお弁当の容器を片していると教室のドアが律儀に開けられて閉められた。

そこには噂の立花くんが居た。

花林を見ている。

「花林。プリントをお前に届けにきた」と言う。


「え?あ、うん」

「じゃあ」

「え?も、もう行くの?」

「?...そうだが」


ずっこける花林。

相変わらずだ。

そんな事を思いながら私は窓から外を見る。

それから苦笑いを浮かべた。

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