第4話 整えられたスーツ
☆
翌日になって俺はゆっくりと味噌汁の香りで脳内が刺激され起き上がった。
そして俺は衝撃を受ける。
目の前の台所に女子高生...ああそうか。
ビビったが俺は確か...桜子と同居し始めたんだっけか。
いつもだったら1人だったしな。
「祐樹さん。おはようございます」
「ああ。おはよう。早いんだなお前」
「それはそうでしょう。だって祐樹さんの朝食を作らないと」
「気持ちは分からんでも無いが...お前が睡眠不足になったら意味無いんだが」
「アハハ。優しいですね。祐樹さん」
それはそうだろ。
年頃の女の子なんだから。
思いながら俺は真面目な顔で説教するがそれを「分かりました」とスルーされて「ご飯食べて下さい。早いんですよね?」と言ってくる桜子。
俺は「...ああ。そうだな。7時30分には出るよ」と言いながら桜子を見る。
桜子は「はい」と笑顔になった。
「...じゃあ準備しますね」
「準備?何の準備だ?」
「それはスーツのカッターですよ。...アイロンがけしました。夜中に」
「お前なぁ...寝ろって」
「それは分かりますが寝れなかったので」
「...仕方が無いのは分かるが寝れなくてしかも病気が酷くなったら...」
「分かります。だけどまあ...嬉しくて寝れなかったんです」
桜子は頬を朱色に染めながら俺を見てくる。
俺はその姿にドキッとしてしまった。
いけないいけない。
女子高生にこんな気持ちは。
俺はオッサンなんだからな...。
そう考えながら俺は立ち上がる。
それから顔を洗いに向かった。
そして戻って来ると滅茶苦茶パリッと整えられているスーツが...。
新品かな?
「さ、桜子。良く分かったな。このスーツは洗えると」
「そんなのカンタンですよ。洗えるかどうか見れば良いのですから」
「これはまさか...夜中に?」
「洗濯は朝にしました。だって住人の方が起きられても困ります」
「...そんな事にも気が付かずに爆睡か俺は」
「ですね。可愛かったです」
俺は「申し訳無い」と言う。
その言葉に「?」を浮かべる桜子。
全部コイツにやらせている様な感じだ。
それはいけない。
オッサンの威厳がある。
「オッサンから言わせてもら...」
「祐樹さん。オッサンではないですよ。貴方はお兄さんです」
「...しかしお前から見ればオッサンだろ」
「むー。違います」
「正直、25歳はオッサンに近付いているし」
「違いますー」
そう反応しながら俺にふくれっ面を見せる桜子。
俺はその姿に「まあどっちでも良いとして。本当に有難う。スーツを整えてくれて」と言う。
それから俺は物凄く整っているカッターシャツを着てからスッキリした感じで朝食を食べていると「靴も磨きました」と桜子は言う。
その言葉に「!!!!?」となる俺。
「...いや。お前本当に倒れるから」
「...嬉しかったんです。本当に。だから寝れませんでしたから」
「全くこの阿呆が...」
「大丈夫です。高校で休み休みに動きます」
「...そういう問題じゃ無いんだが」
「...大丈夫です。祐樹さん。昔と違いますから」
そして俺に笑顔を浮かべる桜子。
俺はその姿に考え込む。
それから桜子をデコピンした。
「!?」となる桜子。
涙目になる。
「お前が本気で倒れるっての。もし無理をしていれば現実的だから。...もう絶対に調子が良いからって無理はするな。マジに頼む」
「...祐樹さん...」
「俺は...お前を預けられた身としてそれは見過ごせない。絶対に寝ろ」
「...はい。すいませんでした」
「夜中に動くのはなるだけ禁止だからな。疲労で倒れたらマジに意味無いから」と静かに真剣に怒りながら桜子を見る。
桜子は「...心配してくれているんですね」と困惑した。
当たり前の事を言わせるね。
「俺はお前を心配してないと思ったか?...そんな訳無い。俺はとてもお前が心配だよ。だからこそ絶対に無理はするな」
「...分かりました。無理はしません。持病の悪化も考えられますから」
「それで良い」
そして俺は腕時計を見てから「ああ。すまない。出勤だ」と言いながら桜子を見る。
桜子はその言葉に俺に対して慌てて「これお弁当です。愛妻弁当です」と渡してく...おい!?
俺はボッと赤面しながら布に包まれた愛妻弁当なる弁当を見る。
「こんなものまで作ったのか。有難うな」と桜子を見る。
桜子は「ノープロブレムですよ。...私が作りたかったので」と言ってくる。
そんな言葉を俺は頬を掻きながら受け取る。
それから俺は桜子を見る。
桜子は自らの制服のリボンに手を添える。
「私も鍵を掛けて高校に行きます」とニコニコしながら手を振って来る。
この辺りの高校だろうか。
そんな事が頭を過った。
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