第11話 田坂
朝。田坂が3日間休んでいる。理由は風邪。
まずいな・・・。
直感的にそう感じた。学生が風邪で休むのは珍しい事ではないが、田坂に関してはこのまま来なくなってしまう可能性が高い。
「・・・。」
真野を見るとこちらには目を合わさず、何も感じていなさそうに見える。
果たしてこの事をどう感じているのか気になる。
けれど今気にすべきは真野ではない。田坂だ。
家を訪問するべきだろうか。それとももう少し様子を見た方がよいだろうか。こういう時はいつも迷ってしまう。一つ手順を間違えると取り返しのつかない事態になってしまうのではないか。そんな恐怖心がいつも襲ってくる。
「それじゃあ次の授業の用意しておくように。」
内心のドキドキを見透かされないように平静を装う。生徒たちはガヤガヤと話し始める。
「・・・。」
教室を出る時に生徒の顔を見渡す。もしかしたら田坂はいじめを苦に学校に来なくなるかもしれない。その当事者たちかもしれない顔。みんな何も感じていなさそうで今が楽しければいい、と言うような表情をしている。
・・・クズどもが。
心の中でつぶやく。
きっとイジメているなんて思ってはいないのだろう。やっているほうは気が付かない。何故って自分は痛くないから。覚えているほうはいつだって被害者だ。かわいそうに。
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