『私立探偵👓沢村の裏稼業』昼は名探偵👓夜は暗殺者🔪メガネでウラを取る執行者。でも幼馴染デカ(♀)の心をまだ覗けない。

ケイティBr

闇に潜み、闇を暴く

 俺の名前は沢村 影人さわむら かげと。夜が深まる頃、街の裏通りは静寂に包まれていた。


 今夜もまた、重い足取りで、ある任務を遂行するため夜闇に潜み息を殺していた。


 俺の背中には、代々受け継がれた家業の業がのしかかっている。


 そんな俺は二つの顔を持つ。昼は私立探偵として、夜は……裏社会に雇われた殺し屋として活動する。


 ターゲットの屋敷に近づき、俺はポケットから古びたメガネを取り出し、そっとかけた。


 このメガネを通して見る世界は、一般人には見えない真実を映し出す。


 今日のターゲットは、とある政治家の政敵だった。


 闇夜に紛れ、豪華な屋敷に忍び込んだ俺は、ターゲットの部屋の窓を静かに破り、音もなく中に滑り込んだ。


 部屋の中央で、男は書類に目を通している。情報通りだ。奴はいつもこの時間、読書に没頭している。


 俺は深呼吸を一つした。この仕事に慣れてはいるが、命を奪う瞬間に躊躇することは、今でもある。


 しかし、そんな感情を抱く余裕はない。俺はもう引き返せない所まで来てしまったのだから。


 ターゲットの背後に忍び寄り、俺はナイフを彼の首元に当てた。


「こんばんは、良い夜ですね」と、俺は冷ややかに言った。


「何者だ!!」男は驚き、椅子から立ち上がろうとした。そんな彼に俺は、重たい圧を掛けた。


「秘密をバラされたくなければ静かにしろ。お前、大陸やつらと随分仲が良いみたいじゃないか、何か良い商品でも入ったのか?」

「な、何を馬鹿なことを……経済で大陸と繋がるのは当たり前のことだ」


 声はしっかりしていたが、ターゲットの背筋が冷えているのを俺は見逃さなかった。


「経済か、それは大事だな」

「あぁ、当然だ」

「お前が麻薬を売りさばいてなければな。それを知れれば、妻や娘はどう思うだろうな?」

「な、なんのことだか分からないな。脅しのつもりか?」


 俺は、ターゲットにとある写真を見せた。それは、麻薬売人の取引現場を押さえた写真だった。


 更にその売人とターゲットが仲良く食事をして、握手をしている写真も有った。


「こんな物はでっち上げだ……きっと何かの誤解だ」男は怯えながらも、反論しようとするが、俺は彼を制し、尋問を続けた。


 俺はメガネを通してターゲットの裏を見た。このメガネが、俺に真実を見せてくれる。


 「2つの道を選ばせてやる。全てを話して死ぬか、何も話さずに死ぬかだ」


 真実を引き出すため、この一連の任務を完遂するため。俺は自身の心を殺す。


 尋問は続き、俺はターゲットから必要な情報を引き出す。その情報は、俺の次のターゲットを指し示していた。


「ありがとう。では死ね」と俺は言い、そして、静かに男の命を絶った。


 彼の命は、あまりにも早く、あまりにも儚く終わる。


 ――任務を終え、俺は夜の闇に消えるように部屋を後にした。


 外に出ると、夜風が俺の汗ばんだ顔を冷やす。心の中には、いつもと変わらない虚無感が広がっていた。


 この道を選んだのは俺自身だ。だが、俺はいつも、この仕事に疑問を持ち続けている。本当にこれでいいのか、と。


 今の俺には後悔をしている暇はない。組織の為、次の任務が、俺を待っている。


 けれど、いつか、俺はこの連鎖を断ち切らなければならない。その時が来るまで、俺は戦い続けるしかないのだ。


 ――目的地を離れる足取りは重く、心は悲鳴を上げ葛藤していた。


 ポケットの中で、古いメガネが冷たく感じられる。俺が人の心の裏を読む能力を持つのは、このメガネのおかげだ。


 だが、使えば使うほど、視力を失っていく。まるで、真実を見る代償として、自分の大切な人を失っていくようだ。


 帰り道、俺はふと、隣家の灯りに目を留めた。


 そこは、俺の幼なじみ鳴海 里紗なるみ りさの家だ。彼女の家族は昔、残酷な事件で命を落としてしまった。


 里紗りさの家を見ながら、俺はボーッと立ち尽くしていた。


影人かげと、どうしたの? こんな夜中に」聞き覚えのある声が背後から聞こえた。


 振り返ると、そこには里紗りさが居て、手にはコンビ二の袋が下げられていた。


 そんな彼女は心配そうに眉根を寄せて俺を見ていた。


「ああ、なんでもない。ただ、ちょっと疲れてるだけさ」


「一人で抱え込まないで。何かあったら、私にも話してよ。今の私は警察官なんだからね」


 と里紗りさは胸を張って言った。彼女は両親の仇を追う為に警察官となり、今は悪を捕まえる正義の人なのだ。


 すでに闇に落ちてしまった俺には、彼女は眩しすぎた。


「ありがとうな、里紗りさ。でも、今は大丈夫だ」と俺は強く言い聞かせるように重ねた。


「ふぅん、本当に大丈夫? あなたがそんな顔するの、珍しいから」


 と言いながら里紗りさは俺の目をじっと見つめた。


 彼女の視線はまるで、俺の中に有る秘密を暴こうとするかのよう。俺はつい彼女から瞳を反らしてしまった。


「私たち幼馴染だし。影人かげととはずっと一緒に居たいの。一番大変な時に私を支えてくれたでしょ? だから今度は私の番よ」


 里紗りさは俺の冷え切った手を取り、励ますように俺に語りかけてくれる。


 その瞬間、俺はメガネをかけたくなった。本当の事を彼女に打ち明けて、心の裏を見て、君が何を思っているのか知りたい。だが、その行為が、俺たちの関係に亀裂を入れることも知っている。


「大丈夫だって。心配かけさせて悪いな」


 俺は里紗りさに微笑み、彼女の手をそっと解いてから背を向けた。


 歩き出す足が重い。俺は、彼女の復讐心がどれほど深いのかを知っている。嘆き悲しみ、そして立ち上がった里紗りさの過去を俺は隣で見てきたからだ。


 今の俺たちの間に流れる空気は、一見穏やかだが、その裏には解決されない過去の事件が重くのしかかっている。


 だが、俺はさらなる闇にこの身を沈めないとならない。


 それがあの日、未解決事件の真相を知ってしまった俺の役割だからだ。


 でも、俺はいつか、真実を里紗りさに打ち明けなければならない時が来ると知っていた。


 彼女の両親を殺したのは、俺の父親だという真実を。


―――――――――――――――――――――――――――

あとがき


KACお題 メガネ


最後のお題ですね。

探偵x殺し屋xメガネと組み合わせたらダークな感じに。


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