024:初めて役に立てるかも

 その後、勇達は夕食を食べ、寝泊まりする部屋に媛乃から案内されて、風呂に入るに至った。

 勇と巫実はお互いそれが当たり前かのように、脱衣所で服を脱いでいた。勇は巫実が胸を押さえ付けるために巻いているサラシを取り、巫実の衣服が入っている籠の中へとそれを突っ込んだ。

 巫実と勇が一緒の風呂に入るのは、サラシの問題もそれなりに大きく、やはり巫実1人だと、しっかり力を入れて巻くと時間がそれなりに掛かってしまうようだった。一方で、勇なら、力もあるし、そんなに苦労せずともサラシを巻けるので、極力一緒の風呂に入るようにしている、という訳である。


「あぅ……苦しかった……」


 巫実はサラシから解放された大きな胸をプルンと揺らしながら、一息吐いた。

 にしても、巫実の胸は相も変わらず大きい。臍が隠れるか隠れないかぐらいの大きさのこのバスト、生では滅多にお目にかかれないであろう。勇は何度もその大きさを目の前にしているはずなのだが、そのバストの魅力をまだまだ味わいきれていない、とさえ思う。


(やっぱり巫実さんは綺麗なデカパイ美少女じゃのう……こんな子を苛める奴等の気が知れん)


 勇はそんな事を思いながら、巫実と共に浴場の方へと入っていった。


 先程も媛乃にここを案内されて、その大きさは知って居たものの、やはりその規模は非常に大きいもので、少なくとも5人ぐらいまでの同時入浴なら余裕であろう広さである。普段、巫実とは一緒の風呂に入れど、普通の規模の浴槽だと、年頃の男女ではスペースがどうにもギチギチのギリギリである為、ここまで広い浴槽は2人にとって新鮮であった。

 とはいえ、浴槽に入る前に、頭と体をしっかり洗うのが風呂での鉄則である。


「じゃあ、巫実さん。洗うか」

「うん」


 巫実と勇は、それぞれ桶とバスチェアを手にし、シャワーの前に置いた。シャワーも3つ分あり、2人は一個分置いて、それぞれの体や髪の毛を洗い始めた。髪の毛の分が時間がかかる為、いつも通り勇の方が終わるのが早いと思われる。一応、この後に媛乃と助手が入る予定の為、そこまで時間を掛けていられないものの、1時間半ぐらい猶予があるなら大丈夫だろうとも思う。

 そうして、予想通りに勇から洗い終えて、とっとと浴槽の中へと入っていった。タオルを浴槽の縁に置き、寄りかかり、この広い空間を堪能した。


(毎日こんな風呂に入れたら、ワシも巫実さんも楽しいんじゃがのう)


 勇と巫実は常日頃から一緒の風呂に入っているものの、やはり、こういう広い風呂は欲しい。2人分も入れるかどうか微妙な浴槽で、みっちりと入り、イチャイチャするのも趣があるのだが、2人は今は成長期だし、そのうちそれどころでは無くなる筈だ。今はどちらも小柄で、余裕はあるものの――勇も自分が何処まで成長するか、未知数だ。

 勇は肩までゆっくりと浸かりながら、巫実がこちらへ来るのを待った。気が付けば、巫実は髪の毛を洗い終え、体を洗っている最中だった。

 勇はそんな巫実の背中姿を見つめながら、思う。


(巫実さん……エロいなぁ……)


 と、いつもの空っぽな感想であるが。

 横から見える爆大なバストに、程よく肉付きがよい白い四肢。こんな美少女、誰もが抱きたいと思えるだろうし、そんな彼女を独り占めできる自分は非常に幸せ者である。

 そんな普通に勇がいやらしい目で巫実を見ている間にも、彼女は体を洗い終えて、こちらに向かってきた。ちゃぷん、と、浴槽の中に巫実の足が入り、勇の隣にその姿は置かれた。


「えへへ、勇くん……広いね」

「お、おう……そうじゃのう」

(巫実さん、もう少し離れてても良いのに……この広さじゃし)


 この広さでこうやって2人で固まるのは、何処となく勿体無いような気はするのだが、別に嫌ではないので、ちょっと複雑である。


「勇くん……」


 巫実は勇の顔を見たかと思えば、ギュッと、彼の体に抱き着いた。彼女の爆乳が勇の体に押さえ付けられるように密着し、勇に思わず目線を逸らさせた。そして、彼女の意図を汲み取るなり、宥めた。


「巫実さん。ここ、他所の家の風呂じゃぞ。いつも通りとはいかんじゃろ」

「勇くん……説得力無いんだから」


 そう言って、巫実は勇の体を見つめつつ、むくれながら、勇の唇に自分の唇を重ねた。


「んっ、ん……」


 いつもの癖で、つい、巫実の腰に勇の手が回る。すりすりと腰を上下に撫でつつ、様子を見て、巫実の臀部へと手の位置を落とした。

 暫くして、お互いの唇が離れると、巫実は更に勇に誘惑をかけた。


「勇くん……ここ、勇くんのお母さんの実家だから、大丈夫だよね……?」

「ぐっ……そ、そうじゃな!」

(すまん、じーちゃん、ばーちゃんッ……!)


 とうとう巫実の誘いを断れ切れず、そのまま乗ってしまった。


「巫実さん。サラシ、巻くか?」

「ううん、大丈夫。お部屋でもする、から……」

「……」


 巫実に顔を真っ赤にしながらそう言われて、お互い元気だ、と、勇はつくづく思う。こんな乱れた生活でも、それなりに日常生活を送れているのだから不思議なものだ。

 2人は風呂から上がると、備え付けのドライヤーで各々の髪の毛を乾かし、持ってきていた浴衣に着替え、そのまま自分の部屋へと戻っていった。途中で媛乃と助手に出会さないかそわそわしていたものの、特に出会う事はなく、部屋へと辿り着いた。

 部屋に入り、先に用意していた布団の上に2人は座り込んだ。

 勇は布団の上でニヤニヤ笑いながら胡座をかき、巫実をこちらに誘導した。巫実が遠慮がちに、彼に自分の背面を向けながら、その上に座った途端、後ろの方から勇の手が伸び、胸元を掴まれた。


「あ、あぅっ……」

「風呂は後片付けが面倒だったからアレじゃったが、こうなったらこっちではワシの好きにするからのう」

「う、うぅ……勇くんのエッチ……」


 巫実の爆乳を揉み下しながら、勇はケラケラと笑った。巫実は顔を真っ赤にして、勇に身を委ねつつ、先程から心の中で考えていた事を口にして、漏らした。


「あ、あのね……勇くん」

「なんじゃ?」

「……あの……媛乃さんのお兄さんの事、なんだけど」

「……」


 勇はその話題を耳にした途端、巫実の胸を揉む手を止めた。

 勇は媛乃の兄――不知火暁月について、出来るだけ考えようとはしなかったものの、どうにも気になっていた。媛乃の寂しそうな顔もそうであったが、巫実の特殊な魔力の傾向がここにきて役に立つこと。さすれば、今後の巫実の魔法使い人生において、何かが切り拓けること。彼女にとって、これは大きな分岐点であり、これが成功すれば、実績にも成りうる。簡単に首を振れる案件でこそないものの、今後の為にも引き受けた方が良い要請である。

 巫実は勇の顔に自分の顔を向けると、そのまま続けた。


「私……勇くんが引き受けるなら、やってみようかなって思うの」

「巫実さん」


 勇は巫実のその決断に驚きつつ、彼女の言葉に耳を傾け続けた。


「私……魔法使いとして微塵も役に立ったことが無ければ、寧ろ皆に迷惑掛けっぱなしだったから。どんな魔法も碌に使えないダメな子で、学校の成績だって悪くて、ランクも一番下で……でも」


 と、続けて、


「そんな私がここで役に立てる、って思ったら、やっぱり引き受けたいなって……。でも、1人じゃ不安だから、勇くんには側に居て欲しいの。もし、私が何かしらの形で暴走した時、止められるの、勇くんだけだろうから……」

「……」

(まぁ、そうよなぁ)


 やはり、巫実はこの件で成長したいと思っており、それは勇も同じ気持ちだった。勇は魔法こそは使えないものの、巫実の盾役にはなれるだろうし、彼女が暴走した時のストッパーにもなれる。彼女が安心して魔法を使う為には、勇の存在が隣に必要不可欠なのである。

 だから、巫実は、勇が駄目と言えば、今は引き受けないし、逆に良いと言えば、媛乃に申し入れる。現状の自分の実力では、どのみちこちらの一存で引き受ける事は出来ないのだ。

 勇はそんな彼女の心情を受け取ると、彼女の頭をそっと撫でた。それから、ニッと笑みを浮かべて返した。


「巫実さんなら、そう言うと思っておったよ。ワシも巫実さんの今後を考えたら、この案件は何れは受けた方が良いと思っておったからの」

「勇くん……」

「巫実さんは今すぐでも引き受けたい、と思うんか? それで明日以降の予定変わるじゃろ」

「……」


 巫実は勇に問われて、少し考え込んだ。

 前向きに考えてみると言えども、今すぐはいやります、なんて簡単に言えるような案件ではないので、巫実が今すぐ無理だと言えば、それに従うだけである。媛乃だって明日明後日絶対やれ、と言っていているわけではないので、それにはしっかり甘えた方が良いだろう。ここで優先されるのは巫実と勇の意志、それだけなのである。

 巫実は暫く黙り込んでから、そっと口を開いた。


「勇くんは……勇くんは、明日とか、明後日でも大丈夫……?」

「勿論」


 勇はその問いに快く頷き、


「ワシは巫実さんが明日にでもやりたいって言うなら、付き合うぞ。こういうのは早い方が良いからのう」

「じゃあ……そうするね」


 勇のその言葉を聞いた巫実は、コクンと頷き、少し緊張した面持ちで続けた。


「勇くんにも少し負担は大きいかもしれないけど、私、絶対成功させたいから……失敗しても、また挑戦したいの。私の意思もだけど、勇くんが付き合ってくれるなら、何度でも出来るかもって思えるから……」

「ああ。巫実さんがそう思ってくれる限り、ワシも付き合う。だから、肩の力を抜いてくれ」

「うん……」


 巫実は勇の方に自分の体を向き直すと、そのまま彼に向かってギュッと抱き着いた。勇は巫実の事をその腕で優しく抱き締め返し、彼女の背中をポンポンと叩いた。

 それから、一旦、お互いの体を少し離すと、今度はその唇と唇を引き寄せ、ぴったりと逢瀬させた。勇が巫実の首後ろに自分の手を乗せて、自分の方へと寄せると、お互いの唇を押し付ける。


「んっ……ぁ……」


 巫実の甘い声が漏れた。勇はその可愛らしい声に辛抱堪らなくなったのか、彼女の大きな胸元を覆っている着物に手を掛け、そのままスルリとずり落とした。


「い、勇、く……んっ」


 巫実が顔を真っ赤にして恥ずかしがってる間にも、勇は彼女を押し倒して、体に貪りついた。


「アイツら、今頃仲良くやってんでしょうね。遠目の部屋に案内して良かったわ」


 媛乃は浴槽に浸かりながら、そんな事を言い放っていた。

 媛乃は勇と巫実が風呂から上がってから10分後ぐらいに、助手と共に浴場に来た。こちらもこちらでお互い旺盛ではある為、何もないわけはないものの、今はまだそれが起こっていないようである。

 助手は横から媛乃に抱き着き、その豊満な胸元に顔を埋めながら、上目遣いで彼女を見つめた。


「あの2人、大人の階段登ったんか?」

「そうね。ある日を境にハムスターの顔付きが変わったし、それと同時にガキジジイも自分が男である自覚持った顔し始めてるから、そうとしか思えないわ」


 佳奈芽だけではなく、媛乃もしっかりとその事は見破っていたようだ。特に媛乃は200年近くの含蓄もあるだろうし、佳奈芽よりもすぐに見破っていただろう。

 一方で、その事で特に彼らを揶揄ったりする事はなく、そっとしている。媛乃自身も、勇達の年代の頃は皇樹とそういう事ばかりしかしていないし、何よりも、巫実みたいな美少女はとっとと食っておかないと、他の男に奪われかねないであろう。勇がとっとと巫実を食った心情や、その快楽にあの2人が取り憑かれてしまうのは、どうしたって分かる話なのだ。

 助手は媛乃の胸に自分の手を置いて、返した。


「じゃあ、ぼくらも負けてられないのう。ママとぼくだってイチャイチャラブラブカップルだぞ」

「……そうねぇ」


 媛乃はそんな助手の頭をよしよし、と、軽く撫でながら、彼の頭の匂いを何となく嗅いでみた。体や髪の毛を洗ってから風呂に入っている為か、シャンプーやリンスの甘い匂いがふんわりと漂ってくるが、それと同時に、媛乃があの頃よく嗅いでいたものが、少し混じってきた。

 媛乃は思わず小さく笑みを漏らした。


(やっぱりここに居るんですね、先輩……)


 きっと、自分は助手から感じられる彼の面影に、助けられているのもあるかもしれない。媛乃はそう思うと、思わず助手のことを抱き締めてしまった。

 その意味がよく分かっていない助手は、媛乃をギュッと抱き締め返した。


「ママ……」

「ん……」


 それから、媛乃は彼の能力の事を思い出した。


(もし……この子の中に夢見の魔法を使えるだけの妖力が残っていたら……それで先輩に会えるとしたら……私は……)

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