第3話 シュレイノリアの提案
シュレイノリアは、勝ち誇ったように胸を逸らして鼻高々といった様子でジューネスティーンに向いていた。
「ジュネス! パワードスーツの駆動信号は微弱な脳波を魔法紋が検出して各部位を動かしている。その原理を逆にすれば良いだけだ」
どうだ凄いだろうと言わんばかりにニヤけた顔を向けた。
「パワードスーツは、脳波の受信を魔法紋が行って、各部位に伝達する。人の反射神経の速度の遅さを利用して解析と信号のやり取りをさせて動かしているから、内部の人の動きに付いていける。お前が中に入ってスムーズな動きをするのは、そのお陰なんだよ」
ジューネスティーンは呆気に取られたような表情をした。
「全く、ジュネスは、ソフトウエア部分を全部私に任せるから、魔法紋の設計にどれだけ頭を使ったか。人の反射神経には違いは有っても、光の反応より遅い事、その間に情報の解析を行うためのプロセスを単純化するために魔法紋をシンプルにするためにどれだけの労力を要したか分かったもんじゃなかったんだぞ」
シュレイノリアは、パワードスーツを人の動作と連動させて動かす為に魔法紋を使って外装骨格を動かす信号処理を担当していた。
外装骨格も外部装甲もジューネスティーンが錬成魔法を使って加工して作り駆動用の人工筋肉とハードウエア設計と製作、それと、ハード・ソフト面においての総合マネージメントを行っていた。
フルメタルアーマーから発展させたパーワードスーツだとはいえ、人体の動きに連動させて動く事が可能な外装骨格など存在しない状況において、アイデアを出し検討して設計を行い完成させていた。
外装骨格に人工筋肉と外部装甲を取り付ける事によって、外部装甲の重量を取り付ける事によって重くなった自重を人工筋肉が補う事によって動きをスムーズにさせている。
機械的な部分を考えて作った事も重要だが、その動作を人の動きに連動させたソフトウエアとして魔法紋の開発を行ったシュレイノリアの功績は大きい。
人が立つにしても重力の影響を無視して立っていられる事は無い。
何もしなければ倒れてしまうが、無意識のうちにバランスを保とうとしているから人は立っている事ができる。
無意識の部分を自身の身体の動きだけで理解する事は難しいが、シュレイノリアは、人を観察して動きを解析し人によって魔素が違う事を突き止め、ホバーボードの完成させる際、レィオーンパードをテストパイロットにしてバランスの取り方を確認していた。
走る・止まる・曲がるを行う時のレィオーンパードの動きを常に確認していた。
不安定なホバーボードに乗せた事によって、人がバランスを取る事に対する動きが体全体を使っており、バランスが悪い事によって動きが大きくなる事が幸いし、大きく動く身体を見る事によってバランスを取る為に身体全体を使っている事に気がついた。
そして、以前、ジューネスティーンが、歯磨きをしながら用をたした時の事を思い出した。
歯磨きをする際、腕を動かして磨くだけでも腰が振れている事から、身体の些細な動きでも全体に影響を及ぼしている事に繋がり、その内容を含めた動きを意識して開発を行っていた。
それによって、より人の動きに近づけられ、内部のジューネスティーンに大きな違和感を感じさせないように配慮されている。
シュレイノリアは、人の発する信号を受信するだけにとどまらず、人の動きを外から見た事によって、補正を加えられるように考えていた。
信号を受けるのであれば、その信号を与える事によって今度は外の映像を視界としてとらえられるようにしようと考えた。
シュレイノリアのドヤ顔に対して、今の話を聞いていたジューネスティーンは顔を顰めていた。
「なあ、シュレ。映像を可視化するために網膜に映像を描くのは良いけど、それって、網膜に悪影響を与えないか? 使いすぎたら視力に影響を及ぼさないか? 人の目は瞳孔や水晶体の動きによって見ているし、太陽のような眩しいものを見たら残像が残ってしまうだろう。その映像信号が強かったら、残像が残ってしまわないか?」
一瞬、ピクリと頬を動かしたようだが、余裕そうな表情は変わらなかった。
「そうかもしれない。だが、ジュネスが確認してくれれば良い」
問題の可能性を上げたジューネスティーンだったが、シュレイノリアは全く気にする様子も無く答えると、ジューネスティーンは嫌そうな表情をした。
「なんだ、実験台にならないといけないのかよ」
「ふん、問題無い。万一の時は、治癒魔法で治す。視力の回復位なら問題無い」
それでも、ジューネスティーンは不安そうな目で見ていた。
「神経組織の復活も問題無かった。視力のほとんどは神経組織だろうから、ダメだとしても修復は可能だろう」
シュレイノリアは、わずかだが視線をジューネスティーンから外した。
(シュレのやつ、確か、視力の回復とかは試した事は無かったはず。視神経の修復に自信無さそうな気がする。それに視神経はデリケートだって分かっているのか?)
その事をジューネスティーンは見逃さなかった。
「お前、ダメな時を前提で考えてないか?」
シュレイノリアは、気まずい表情をすると、必死に表情を元に戻そうとしたが、その様子を黙ってジューネスティーンが見ていたので、困った様子で視線を外した。
「い、いや、そんな事は、な、い」
黙ったままシュレイノリアを見ていたジューネスティーンだった事もあり、沈黙を嫌がったシュレイノリア答えるが動揺は隠せなかった。
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