第2話 視覚拡張メガネの問題点
シュレイノリアの作ってきた視野拡張メガネは視覚を確保できるが、パワードスーツ内で使う際ズレてしまった時に直す事が面倒で、場合によっては戦闘に差し支えが出るとレィオーンパードには大きかったメガネが下がったのを見て思いついた。
その事を指摘されたシュレイノリアは考え始めると直ぐに閃いた。
「だったら、兜の内側に映像を映し出せばいい。メガネじゃ無ければ問題ないはずだ」
それを聞いていたレィオーンパードが、気になるような表情をした。
「にいちゃん。あの兜だと下を向くのが難しいって言ってなかった? ほら、顎が当たるから下を向くのが面倒だとか。下はジックリ見る必要は無いけど見えないのは困らないか? 軽くでも視界に入っていた方がいいと思うんだけど」
少し難しそうな表情をして言うとジューネスティーンを見た。
「この機体はギルドに提出用だから、今のままでも良いかと思っていたけど、次の機体は首を固定して頭が動かないようにしようと思っていたんだ。頭を叩かれた時に兜だと固定されてないから首に強い力が加わってしまうからね。大型の魔物との対戦を考えると、自分の首の力だけでは不味いんじゃ無いかと思っていたんだ。特に盾役として接近戦がメインになると、魔物がこっちの頭を狙わないとも限らないからね」
二人にダメ出しをされてシュレイノリアは面白くなさそうにした。
「兜の内側に映像を出すにしても人は左右の目で見て遠近感を得ているから、内側に映像を見せたとして、その遠近感を得られにくいと思うよ。戦闘中の咄嗟の判断を要求されるとなると視界の制限は良い方法とは言えないかな。メガネのようなものなら顔と一緒に動いて、その方向を観れるから都合が良いと思うけど、完全に顔に固定しないと難しいかな」
その話を聞いたシュレイノリアは、メガネの方向性が見えたように思ったようだ。
「だったら!」
「いや、にいちゃん。メガネはダメだよ。あれって曇る事もあるから密閉された空間で呼吸したら息で曇ってしまうんじゃないの?」
シュレイノリアが意見を言おうとした時、レィオーンパードが被せるように新たな問題点を指摘したので、シュレイノリアは黙って腕を組んで考え込んでしまった。
その様子を見たレィオーンパードは、ジューネスティーンの顔に寄る。
「なんか、悪い事言っちゃったのかなぁ」
レィオーンパードとしたら、シュレイノリアは姉のような存在であり、転移した頃から、可愛い弟をかまいたがる姉のように、いたずらをされる事が多かった。
ヒョウの亜人だった事から、耳の形が違い尻尾も持っていたので、シュレイノリアは、人と亜人の違いに興味を持ち、一般的なタブーとされていた亜人の耳も尻尾も触り放題だった。
レィオーンパードが言いつけや約束を守らないときには、お仕置きと称して握られたりしていた事もあり、機嫌の悪いシュレイノリアには近づこうとはしない。
何か危険を感じた時は、ジューネスティーンに庇ってもらうために近づいて、追いかけられた場合に止めてもらおうと考えていた。
「大丈夫じゃないか? レオンの言った事は正論だから、その問題の対応を考えているだけだろうから、警戒しすぎだと思うよ」
しかし、言葉とは裏腹にジューネスティーンも不安なようだ。
シュレイノリアは黙って考え込んでしまったので、ジューネスティーンも少し怖いと思ったのか一歩後ろに下がると、レィオーンパードは、慌てて後ろに隠れるように移動した。
「おい、レオン。何で俺の後ろに隠れるんだ」
「だって、あの状態だと、アイデアが出るかもしれないとか言って、尻尾を握るかもしれないじゃないか!」
ジューネスティーンは、後ろを振り向くと体を屈めていたレィオーンパードのお尻を見た。
亜人特有のズボンは、お尻を覆い隠すように布が、腰から後ろだけ覆われているので、その布の淵からレィオーンパードの尻尾が見えていた。
(尻尾って腰骨の下から出ているから下着もズボンも穴が空いているもんな。女子の亜人は、長いスカートを好むのは、尻尾を面に出したがらないせいだろうけど、レオンのように男子は、スカートってわけにいかないから、後ろ半分の腰巻きだもんな。それに、シュレのやつは限度を知らなから尻尾の元の方まで握りかねないな)
ジューネスティーンは後ろに隠れるようにしているレィオーンパードの腰の辺りを見ているが、レィオーンパードはシュレイノリアを警戒するように見ていた。
体を戻してシュレイノリアを見ると、考えるような表情をしているが、アイデアが浮かばずイラついているようでもあった。
そんな時は、何か別の行動を行うのだが、その際にレィオーンパードを弄るような事もしていた。
(あのズボンも下着も、尻尾の周りは結構空いているから、尻尾の根元を触られたらお尻に指が入りそうなんだよなぁ。レオンだってシュレに尻尾を触られたら嫌なんだろうなぁ)
「あっ! そうか!」
ジューネスティーンが困った様子で考えているとシュレイノリアが声を上げた。
すると、シュレイノリアは、ズカズカとジューネスティーンの前に来るとニヤニヤした。
「ジュネス! メガネはやめよう」
「ん? 兜の内側に映そうって事か?」
ジューネスティーンが答えるとシュレイノリアは、自分の考えに酔ったように右手の人差し指を立てると左右に振った。
「いや、それにも問題がある。それなら、直接網膜に映すようにすればいい」
そのアイデアを聞いてジューネスティーンは考え始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます