視野拡張めがね  パワードスーツ ガイファント序章

逢明日いずな

第1話 2号機の問題点


 ギルドの高等学校に特待生として入学したジューネスティーンは、卒業までに設計していたパワードスーツを完成させて提出する事になっていた。

 卒業までに提出できなかった場合は、特待生として入学金・学費・寮費、そして、パワードスーツ用に提供した材料・機材等、全ての費用の支払いを行うことになっていた。

 しかし、3年生に進級するとパワードスーツは完成させてしまったので、問題は無いように見えたが、ジューネスティーンの表情は明るく無かった。


 学校の教室を一つ使わせてもらい、パワードスーツを完成させていたが、その姿を見てジューネスティーンは浮かない顔をしているとレィオーンパードが横に来た。

「にいちゃん。パワードスーツが完成したなら、ギルドに提出してしまった方がいいんじゃないの?」

 浮かない顔のジューネスティーンにヒョウの亜人であるレィオーンパードが声をかけた。


 レィオーンパードは、ジューネスティーンとシュレイノリアが転移した4年後に転移してきた。

 ジューネスティーンとシュレイノリアは、レィオーンパードを受け入れ、種族の違いはあるが弟のような存在となって、二人が言葉や生活習慣を教え冒険者として活動を始めた。

 その後、3人はギルドの高等学校への入学を最初の目標としていたところ、ギルド側からシュレイノリアの特待生での入学は認められた。

 しかし、ジューネスティーンとレィオーンパードのは一般学生としてとなら許可が出るに止まった。

 当時の3人には、特待生で無い二人分の入学費用と学費を用意することが出来ていなかった事から三人は話し合って、二人分の費用を捻出するため冒険者として活動した。

 その転機が訪れたのは、ジューネスティーンの考えるパワードスーツについて興味を持った商会の支配人であるジュエルイアンが3人の元を訪れた事による。

 寮の黒板に描かれたパワードスーツに興味を持った事から、ジューネスティーンの高等学校へ特待生として認めさせるようにと、ギルドマスターであるエリスリーンに掛け合った事でギルド本部との折衝が始まった。

 しかし、ギルド本部からの結果は、ジューネスティーンが設計していたパワードスーツを卒業までに完成させて、現在使っているフルメタルアーマーを改造したパワードスーツと一緒に提出する事が条件となり、卒業までに提出できなかった場合は、特待生としての身分は剥奪され、それまでに掛かった費用の全てを返す事となった。

 そして、レィオーンパードの特待生は認められなかった。

 ジューネスティーンとシュレイノリアの二人が特待生として、ギルドの高等学校への入学が、ジューネスティーンの条件付きではあったが許可された事で、レィオーンパードは、別れる事になってしまうかと思っていたが、ジューネスティーンとシュレイノリアが貯めていた金額とレィオーンパードの貯めていた金額とで辛うじてレィオーンパードも費用の捻出ができ、3人はギルドの高等学校に入学していた。


 教室でパワードスーツを見ていたジューネスティーンには、完成させた2台目のパワードスーツには二つの問題が有った事に思案をめぐらせていた。

 そんなところにレィオーンパードは声を掛けていた。

「支給された材料で完成させたのは良かったんだけど、あまりに重くてね。これだと動きが鈍いんだ。シュレの魔法紋の強化も試してみたけど、重さを軽くできないかと思っていたんだ。でも、これは、鉄の比重が高いから仕方が無いのかもしれないなぁ」

「ふーん、でも、問題は、それだけじゃ無いんでしょ」

「ああ、後は視界の悪さだな。ほら、肩と胸の部分を覆うようにしてあるから、兜が顎のあたりまで来ると動かし難くなっているからね」

「うん、確かに上下に動かすと当たってしまうね」

 二人が完成したパワードスーツを見て悩んでいると、シュレイノリアが入ってきた。

「おい、ジュネス! 視界の確保用にメガネを考えた。メガネに視界を表示させてしまえば、兜だって視界を確保する為にスリットを入れる必要も無くなる。どうだ!」

 シュレイノリアは、市販されている伊達メガネに魔法紋を描いて視界をレンズに映し出してみせた。

「うん、面白い発想だね」

 ジューネスティーンは答えると、受け取ったメガネを掛けた。

 そこには目の前の視界が映し出されており、左右に顔を振ると追随して視界も動いた。

「へー、上手くできているね」

「ねえ、僕にも使わせてよ」

 ジューネスティーンの掛けたメガネをレィオーンパードが興味深そうにした。

「ああ」

 そう言って、掛けていたメガネを外してレィオーンパードに渡すと嬉しそうに掛けた。

 しかし、渡されたメガネを掛けると、ジューネスティーンよりわずかに顔が小さいレィオーンパードはメガネが下がってしまい、耳には引っ掛かってはいるが、直ぐに目の下にメガネが落ちてしまった。

 その様子を見てジューネスティーンは苦笑いをした。

「レオンには、ちょっと大きかったみたいだね」

 そう言われてレィオーンパードは慌ててメガネの位置を合わせるように上げた。

 その様子を見てジューネスティーンは面白く無いと思った様子をすると考えだした。

 そして、メガネを持ってきたシュレイノリアに申し訳なさそうな表情を向けた。

「とても良い発明だと思うんだが、メガネだと衝撃だとか振動とかで位置がズレてしまうよね」

「それがどうした!」

「戦闘中に、兜をかぶった状態で、メガネを直していられるかなぁ」

 シュレイノリアは嬉しそうな表情をしていたが、今の一言で曇ってしまった。

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