第43話 深紅のオーガ
武器屋なんかも見て回りたいところだったが、遊びに来た訳ではないのでダンジョンにさっさと入る。
まずは例の特異個体を見つけ出すところから始めないといけない。
さいたまダンジョンの特長として、10階層毎にフィールドが変わるというモノがある。
まず10階層までの草原エリア。
ここには地球にいる動物に似たモンスターが出てくるフィールドだ。
食べられるモンスターも多く、さっき通った飲食店街にもモンスターの肉を出す店は存在する。
検閲が通れば外にも持ち出せるので、以前は父親が毎回のように鹿のモンスターを狩って帰ってきていた。
俺がその肉をうまいって言ってしまったからかもしれない。
困った父親である。
味自体はそこらのスーパーで売ってる肉よりも美味しいはずだけどね。
(今度梓さんはそういうの好きそう、あっ……)
あの娘はダンジョンのことにすごく興味があるし、モンスターの肉にも挑戦するかもしれない……、と、そんな馬鹿なことを考えてしまった。
もう一緒に過ごすことはないのに……。
(だから、遊びに来たんじゃないって!)
邪念を振り払い、遠くに見えた鹿のモンスターとは別の方向に向かう。
さっき、ちゃんと地図を買ってきたので次の階層のゲートの場所はわかっている。
(それにしても広い)
普通のフィールド型ダンジョンの倍くらい広いんじゃないだろうか?
その分次の階のゲートを探すのにも時間が掛かる。
目標は20階層。
間に合うのか?
この辺のモンスターに用はない。
走る……。
︙
︙
10階層台に入ってフィールドは洞窟エリアへと変わった。
迷路のようになっているが地図があるので却ってわかりやすい。
正解が用意されてるし、モンスターが来る方向も決まっているからね。
次のゲートまでの道順を辿ったら、【時間遡行】で戻って走りながら攻略する。
初見のダンジョンでも最速で攻略できるのが【時間遡行】の強みだね。
ステータスの影響で足もかなり速くなっている。
モンスター的には熊や狼、猪などの動物系が出てこない浦和支部のDランクダンジョンと言ったところだろうか?
慣れたものだ。
15階層を突破、セーフティエリアには寄らなくていいだろう。
ちなみに15階層毎にあるセーフティエリアだが、21階層から30階層までは森林エリアになるので30階層には無い。
洞窟型や迷宮型と違って部屋がないからね。
フィールド型でも偶に木の
つまり次のセーフティエリアは45階層ということになる。
(まあそこまで行くことはないから関係ないか……)
︙
︙
(見つけ……、え?【時間そ、こ……)
景色が歪むのは【時間遡行】の効果か、それとも……。
クルクルと景色が回る。
~~~~
「ハァ、ハァ、ハァ」
20階層。
21階層へと続くダンジョンゲートを見つけたが、入らずに更に奥へ。
そこでようやく例の特異個体を見つけた瞬間だった。
向こうもこっちを視認したのだろう。
何かされた。
(遠距離攻撃があるのか……)
今のでよく生きてたな。
いや、死んでたような気がするけど……。
HPが残っていたのか?
頭が胴から…。
(兎に角、ランタンはダメだな。自分の位置を知らせるようなものだ)
さりとて暗闇では俺は戦えない。
ランタンを置いてヤツが来るまで、隠れるのがいいだろう。
戻ったのは1分、すぐ近くにいるはずだ。
もう俺に気が付いているかもしれない。
さっそく隠れれる岩を見つけて、そこが陰になるにようにランタンを設置する。
(来たな……)
真っ赤なオーガだ。
オーガの肌は赤黒いと聞いていたけど、あの特異個体は真っ赤、深紅といった感じの色だ。
ランタンに近づいて行く深紅のオーガ。
(ここだ!【ウインドカッター】!)
岩の前を通り過ぎたところで、飛び出して背中を斬りつける。
先に魔法を傷を付けた場所……、のはずなのに……。
(浅い!?)
弾かれた。
オーガの皮膚は金属のように硬いという話は聞いたことがある。
だが皮膚の下も金属のような感触。
むしろ表面の皮膚だけを切り裂けた……。
(反撃!槍か!)
振り向いたオーガの猛攻を受ける。
手に持っていたのは槍。
1、2、3と飛んできた突きを何とかいなした後の横薙ぎの攻撃で吹っ飛ばされる。
(ダメだ。こうなったら勝てない。【時間遡行】!)
景色が歪む……。
あ……。
また、何か喰らった……。
~~~~
如何ともし難いステータス差がある。
オーガは本来30階台に出現するモンスター。
レベルは30以上ということになる。
俺のレベルは現在19。
少なくとも10、多ければ倍以上のレベル差があるのかもしれない。
接近戦では力で押されて勝てない。
かと言って離れて魔法で倒そうにも、向こうにはこちら以上の遠距離の攻撃手段があるようだ。
不意打ちでも一撃で仕留められない。
(俺じゃ無理か?)
15階層まで戻って人を呼ぶか?
いや、21階層まで行けば薬草探しをしているパーティーがいるはずだ。
しかし何と説明する?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます