第31話 クラスの女子
日曜日、今日も早起きして、Dランクダンジョンにやってきた。
今は昼を回ったところだろうか?
昨日よりも更に早いペースで進んで来て、17階層に到着したところだ。
ここからはレベル上げを兼ねつつ進んで行くので、ペースは落ちることになる。
できればまだ戦っていない熊のモンスター、ブラッディベアと戦っておきたいね。
ブラッディベアはその名の通り、真っ赤な体毛の熊さんだ。
なんでレッドベアじゃなくて、ブラッディベアなんて物騒な名前にしたのか……。
コイツは洞窟だけじゃなく、山だったり、森だったり色んなダンジョンに出てくるらしく、数多くの探索者に血を流させたことからそう呼ばれるようになったとかなんとか……。
いや、【鑑定】した時の名前がブラッディベアだからブラッディベアだそうです。
【鑑定】は持ち帰った素材からでもモンスターの名前はわかるらしいので、国内の管理ダンジョンに出てくるモンスターの名前は大体わかってる。
(でもフリーダンジョンのボスなんかは未だに新種とかが出て来ているらしいね)
ブラッディベアは、この浦和支部のDランクダンジョンでも17階層から出てくる。
昨日は見つけることができなかったけどね。
たぶんこのダンジョンで一番強いモンスターだろう。
(お、あれか?)
【気配察知】スキルに反応あり。
少し離れた場所に2つの気配だ。
この階層でモンスターが2匹だけとパターンは初めてだ。
恐らくはブラッディベア。
距離と角度的に次の分かれ道で鉢合わせになるだろう。
荷物置き時計を確認。
何かあったらこの時間に戻るように【時間遡行】スタンバイだ。
(【武器強化】)
分かれ道に顔を出して、地面を叩いてブラッディベアをこちらに呼び寄せる。
すでにこちらの存在には気が付いてその場に止まっていたブラッディベア達だったが、俺の顔を見るなり猛然とダッシュしてくる。
(こわっ。ってか、デカッ!)
たぶんワイルドボアよりも大きい。
今まで見たモンスターの中で一番大きいか?
分かれ道の交差点から引っ込んで壁際に身を隠す。
(別にビビった訳じゃないんだからね。これは角待ちなんだから!)
クラスメイトの本庄さんがこういう話し方をする。
背の低い梓さんより更に小さい女の子だ。
でも梓さんとは違ってお皿じゃなくて……。
(おっと、ここだ!)
通路の向こうが見えなくても【気配察知】でブラッディベアの位置はわかる。
熊が顔出したとこで、首筋に剣を振り下ろす。
(硬い!?やばっ……)
硬い毛皮に阻まれたのか、それとも皮下の脂肪によって阻まれたのか。
振り下ろした剣は首に傷を付けはしたが、致命傷には至らず。
しかも首を振ったブラッディベアに力負けして、剣を放して尻餅をついてしまった。
そこに覆いかぶさるように襲い掛かって来たブラッディベアの牙が迫る。
(【時間遡行】!)
景色がゆが、うぎゃーーー。
――――
(ああああ、あ?あれ?)
間に合ったのか?
今、噛まれてたような?
首を摩るが何ともない。
まあ戻ってきたんだから当然だよね。
【時間遡行】ってなんかちょっとラグがあるんだよね。
発動してから景色が歪んで戻ってくるまでに1秒か、2秒か。
視界は歪んですでに見えなくなっていたが、噛まれていたような気がする……。
気を抜いて死ぬところだった。
【時間遡行】を使ったからって、油断しちゃいけないね。
(しかし、どうしたもんか……)
【武器強化】を使った上段からの振り下ろし、タイミングも悪くなかったと思う。
これ以上の攻撃となると……。
まあ一撃に拘らなくてもいいかもしれないが、ブラッディベアは2匹いる。
一匹との戦いに集中してしまうと、もう一匹に襲われるだろう。
(今後のことも考えて、うまく一匹減らせるパターンを作りたいところだな)
ブラッディベアの気配は止まっていて、こちら側を警戒しているようだ。
さっきと同じように通路から顔を出し、おびき寄せる。
やっぱりデカいな。
でもこれで実は子供なんだよ、っていうのがブラッディベアの話になると必ずされる会話である。
ここのダンジョンでもそうなのだが、Dランクダンジョンで多く見られるボスがこのブラッディべアの上位種であるマザーブラッディベアである。
ブラッディベアよりもさらに大きく、マザーと言う名がついていることから、ブラッディベアの母熊だとされている。
しかしダンジョンに出てくるブラッディベアは全部雄なので、ただ単に雌のブラッディベアなんじゃないかと言う意見もあるが、【鑑定】の結果がマザーブラッディベアなのだからしょうがない。
ゴブリンもオークも、ダンジョンに出てくる雑魚モンスターは雄だ。
逆に雌はマザーやクイーンなどの名前を冠するボスなどに多かったりする。
マザーで大きいと言えば、本庄さんの他にクラスの出席番号1番で相原さんという女の子がいる。
実はこの子に告白したらどうなるのかということで、例の検証がスタートしたのだ。
この子がまた黒川さんよりもすごくて、1年生にしてすでに学校一なんじゃないかと……。
(おっと、ここだ!【ウィンドカッター】!)
頭を出したブラッディベアの首筋に手を向けてゼロ距離での【ウィンドカッター】を放つ。
これが俺の一番威力の高い攻撃だと思う。
(浅いか?)
だがさっきの攻撃よりも効いたらしく、首から血を噴き出したブラッディベアがよろめいた。
今度は俺がその一瞬の隙を見逃さずに剣を【ウィンドカッター】で出来た傷口に刺し込む。
ゴリっと首の骨を削る手応え。
致命傷だろう。
そして刺したら素早く抜く。
もう一匹が来ているのだ。
その巨体同士故に目の前にいる方のブラッディベアを追い越しての攻撃は仕掛けてこられないようだが。
今にも飛び掛からんとしているのを目の端で捉えた。
なので一旦荷物の置いてある通路まで引く。
(まだ死んでないか?)
首から喉を切り裂いたブラッディベアはまだ息があるようだが、倒れ込んで動かない。
放っておいてもその内に力尽きるはずなので、あとは不用意に近づかなければ大丈夫だろう。
後は一対一。
ここからが本番だ。
回り込んできた残りの一匹が立ち上がる。
2メートル越えの熊相手では剣で有効打を与えられる気がしない……。
やはり武器は槍に代えるべきだったか?
でも長くなると、今度は洞窟や迷宮型のダンジョンでの取り回しの問題も出てくる。
たぶん父親も薬草採取の際に邪魔にならないように、腰にぶら下げられる大きさの剣を選んでいたんだと思う。
しかもこの剣は結構いい剣のようなので、同じクラスの槍を買うとなると100万円くらいするかもしれない。
お金と言えば、例の検証の時にいくら持っているの?と聞かれたことがあった。
アレはお金を……。
「くっ!」
ブラッディベアが立ち上がっての威嚇をやめて、覆いかぶさるように攻撃を仕掛けてきた。
後ろに引いて躱したが、叩きつけられた手の衝撃が地面を通して伝わってくる。
再び四つん這いになった、ブラッディベアの前足での攻撃を剣で何とか弾く。
力負けしている。
俺も【戦士】のジョブを持ってはいるが、相手も17階層に出てくるモンスターなのでレベル17。
熊と【戦士】では熊の方が強いらしい。
(さっきので懐に飛び込むべきだったか?)
コイツの体重はどれぐらいだろうか?
今のステータスなら上に乗られても持ち上げられるかもしれないか?
体重と言えばクラスの女子にちょっと恰幅のいい子がいるのだが、その子は実は学校一と噂される相原さんより……。
「グオーーー!」
おっと危ない。
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