第23話 ランタンと魔道具
「あ、太助君。よかったー。ウチにはもう来てくれないのかと思ってたわ。また他のダンジョンに行ってたの?」
土曜日になったのでダンジョンの攻略を再開するために浦和支部にやってきた。
え?土日は彼女とデートしろって?
いやいや、理解のある彼女でね。
元々俺の父親が探索者で病気の弟がいることも知っていたらしい。
この前のダンジョンブレイクで父親が死んだこともニュースでみて知っていたと……。
弟さんの為に頑張ってと温かい言葉をもらっていますよ。
理解があり過ぎて探索者のことを色々調べて、スキルとかを勧めてきたりする。
長物の方が有利ということで、武器も剣から槍に変えた方がいいとか言っていましたね。
そうは言われても先立つモノがね。
「いえ、普通に学校に行ってただけです。今日は一人ですか?」
Eランクダンジョンでも10階層、クリアするのには4時間以上かかる。
学校帰りには無理なのでしばらく休んでいたのだ。
【時間遡行】を使い過ぎての過労のこともあるしね。
毎日ちょっとだけレベル上げしようにも、レベル的に格上のモンスターを倒さないと、うまく経験値が入らない仕組みらしく、今の俺でも最低10階以上は進まないとレベルが上がらない。
薬草を得るために必要なレベルは20くらいなので、そこまで上げれればもうレベル上げの必要もないんだけどね。
一旦学校を休んで集中してレベル上げをするのもアリかもしれない。
ゴールデンウィークで20まで上がらなかったらそれも考えよう。
「そうなのよ。奥に何人かいるけど、受付は私だけよ。そういえば莉子なんだけどね、この前のことを支部長に報告したら喧嘩になっちゃったみたいなの。受付だけじゃなくてモンスターの間引きからも外したら、協会を辞めるって飛び出したちゃったのよ。元々探索者になりたかったみたいなんだけど、支部長が反対してて無理矢理ここで働かせてたの。だから太助君みたいに若い探索者に絡んでたのよねー。莉子、来月には二十歳だから親の許可も必要なくなるし、支部長も大慌てよ」
何じゃそりゃ。
まあ知ったこっちゃないけどね。
「あれ?職員さんって全員が探索者じゃないんですか?」
「当たり前じゃない。私達は社員証でダンジョンに入れるけど、探索者って訳では無いわね。休みの日もダンジョンに入りたいってワーカホリックな子達は探索者のライセンスも取ってるみたいだけどね。でも、ほとんどが私みたいに間引きにも参加しない事務方の職員よ」
なるほど、探索者協会も準公務員といえど会社だからね。
バーサーカーみたいな奴等が受付にいても困る訳だ。
「へー、あ、今日はDランクダンジョンでお願いします」
「え?一人で大丈夫?Dランクまで行くとパーティー推奨だよ?太助君と同じ時期に探索者になった二人もパーティー組んでるし、4月に入って新規さんも増えたからパーティーの募集とかしたほうがいいよ?」
チッ、あの二人まだパーティーが続いていたか……。
いや、落ち着け、俺もすでに彼女持ちだ。
広い心でおじさんを許してやろう。
「いえ、今日はレベル上げに来ただけなので1人の方が都合がいいです」
パーティーを組むとなると分配の話も出てくるしね。
高額で取引される薬草の分配は中々に厳しいものになるだろう。
そうなると俺にパーティーは無理かな?
レベルが上がったらDランクダンジョンを攻略するときだけパーティーを組むというのはありかも知れない……。
知れないけど、そしたらボス部屋で出る宝箱の分配が……。
ボスを倒すタイミングを計るのも難しくなるし……。
うーん、パーティーは組めないかもしれない。
「そう?でも気を付けてね。あと、ウチのDランクは洞窟型だから光源を忘れずに持って行ってね。魔道具のランタンが電池がいらないから便利よ。あ、買うならMP型じゃなくて魔石型の方ね」
魔道具の燃料は大きく分けて2通り。
1つはMP型。
MPを消費して魔道具を起動させるタイプだね。
スキルを使うのと同じ感覚で使える魔道具だ。
MP型の利点は魔石の交換がいらないこと。
戦闘中とかになると魔石を交換する手間が惜しい時があるからね。
それと燃料代がタダなのもいいね。
(武器系の魔道具はほとんどがMP型だと思う)
もう1つは魔石型。
燃料となる魔石を収納スペースに入れることで発動できる。
逆に魔石型の利点はMPの消費がないことになるかな?
探索者にとってMPは命。
お腹が減っていたり、怪我をしていなければMPは自動的に回復していくけど、今度は食料や時間との相談になるからね。
うまく節約することでより深い階層に潜ることが出来るのだ。
(でも魔石型の一番の利点は、MPがない一般人にも使えるということだろうね)
この魔石型の魔道具の普及によって、家電事情は変わりつつある。
今やテレビや洗濯機なんかも魔石で動いている家は多いだろう。
冷蔵庫は魔石の交換を忘れると大変なことになるので、今のところ普及していないが、電気の元となる発電所の方が魔石発電の割合が大きくなってきている。
自動車もそろそろ魔石自動車が電気自動車に並ぶんじゃないかって言われている。
魔石自動車の特長はモーターがないから軽いこと、ただあまり荷物は運べないから、大型のトラックはまだまだガソリンどころかディーゼル車なんて物が走ってるね。
「ありがとうございます。ランタンは持ってきてるので大丈夫です」
父親が残したヤツですね。
ランタンと言えど魔道具。
とてもお高いのだ。
いっそ電池型の方がいいまであるぞ。
いや、長い目で見たら魔石型のがいいのか?
俺にランタンを買わせようとした疑惑の残る黒川さんに見送られてDランクダンジョンへと入る。
(ざ、洞窟って感じだな。先は本当に真っ暗だ……。お?これは協会の【罠師】が置いてくれてるのかな?)
ダンジョンゲートの足元に協会が設置したであろう光源が置いてあって、この付近は明るいが道が続いてる先は何も見えない。
(【ステータス】)
名前:田中太助
ジョブ:【戦士】
Lv:12
HP:360/360
MP:170/170(180)
腕力:24
耐久:24
敏捷:24
魔力:18+1
スキル:【時間遡行】【皿洗い】【武器強化】【ファイヤーボール】【ファイヤーウォール】【ウインドカッター】【魔力+1】【エイミング】【継矢】【罠設置】【鍛冶・補修】
スキルポイント:12
出発前にステータスを確認する。
MPの括弧内の数値は本当の最大MPだね。
食料なんかが入った鞄に【罠設置】を掛けてあるから最大MPが10減っている状態なのだ。
この鞄は、そこに設置してある光源同様、地面に置いておいてもダンジョンに吸収されることはない。
戦闘中でも遠慮なく地面に投げ捨てておけるね。
(魔石、魔石、と)
魔道具のランタンにゴブリンの魔石を入れて、Dランクダンジョン攻略スタートだ。
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