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タカラ兄が趣味で作っている“乾杯の酒”以外呑んだことがないというこの女。
缶ビールを半分くらい呑んだ所で急に眠そうな顔をしだした。
トロンとした顔で俺のことを見詰めてきて、口までゆるくなっているのかニヤニヤと笑ってきやがる。
「不細工な顔だと思いながら見てるんだろ!?
うるせーよ!!どうせ不細工な顔だよ!!」
「自分で不細工だと思ってるならナンパするのやめなよ。
社内でもほとんどの女の子に声かけてるでしょ。」
「うちの会社可愛い女の子沢山いるからな!!
俺は不細工だから数を打っていかないといけないだろ!?
女で化粧が出来るお前には永遠に分からねーよ!!」
「・・・うん、分からない。
全然分からない。
須崎が何を考えてるのか全然分からない。」
「俺の頭の中はいつも単純だよ!!
1回くらいやってみたいからに決まってるだろ!!」
「何をやるの?」
「セックス!!!」
俺が即答すると“のっぺらぼうのタマゴ”は酒で赤い顔をもっと赤くした。
そんな初めて見る顔を見て凄く愉快になってくる。
「お前、佐竹とやった?」
「するわけないでしょ、付き合ってもないのに。」
「勿体ねーな~、あれだけ男前な奴から口説かれまくってるのに1回もやらねーなんて。
俺がお前なら喜んで頷くのに。」
俺の言葉にこいつは小さく笑いながら少し下を向いた。
その顔を眺めながら軽い気持ちで言ってみる。
「佐竹の顔描いてみろよ。」
*
そして数分後、こいつが出してきたノートの中にいる自称佐竹の顔を見て、俺は愉快すぎて爆笑している。
「全然似てね~!!!」
「思い出しながら描いてるだけだからそれは似てないよ。」
上手い下手のレベルではなく全然似ていない佐竹の顔の絵を見ながら、俺はこいつのすぐ横に座った。
「目、二重の幅がもっと狭いだろ。
それで目の大きさはもう少し大きい。
鼻は小鼻がこんなに目立ってない、もう少し鼻筋が通ってるように描けるもん?」
俺の言葉にこいつは少し固まり、それから俺の言葉通りに鉛筆を動かし始めた。
描いては修正し、描いては修正し、そんなやり取りを繰り広げて数分後・・・
「オッ、これが佐竹だろ?」
「凄い・・・凄い!!!
須崎、記憶力凄いね!!!
こんなのなかなか出来ないからね!?」
“のっぺらぼうのタマゴ”が興奮しながら笑い、俺のことを見詰めてくる。
それには頭がムズムズとしてきて頭を掻いた。
「俺は自分が不細工だからな、人の顔とか姿はより意識して見てる。
こいつはこんな顔してるのかとかこんな体型してるのかとか。
ここがもう少し違えばこういう顔や体型になるなとか、そんなことも考えながら。」
「だから須崎の企画は“隠す”か“もっと目立たせる”、な企画が多いんだ。
ただ色をつけるだけじゃない、顔の造りまで変わって見えるような企画が多い。
本当に、顔面をキャンバスにした企画。」
こいつがそんなことを言って、俺のことを嬉しそうな顔で見詰めてくる。
それは佐竹の前で見せる顔とも全然違う。
すぐ隣でこんな顔を見せてくる。
こんな目で俺のことを見てくる。
だから、言ってみた・・・。
もう1度だけ・・・もう1度だけ、言ってみた・・・。
「俺の顔を描いて・・・。」
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