第4話:めちゃ構ってちゃん。

「無理です〜・・・ブツブツ」


「だからさ・・・声が小さいって」


タダとは言え、どうしたもんかね・・・まあ多少はバグがあっても不思議じゃない

とは思うけど・・・。


「セシル、今、なんて言ったの?」


「未来ちゃん、オンブして」


「お、オンブ?・・・オンブだって?・・・」

「すごい構ってちゃんだな・・・」

「それは無理だろ?・・・自分の足で歩いてくれる、頼むから」


「歩きたくない・・・」

「あ、そこのおじさん、オンブして?」


「こら、誰に声かけてんだよ、見ず知らずのおっさんに声かけちゃダメだろ? 」


「だって〜」


「あのさ・・・万が一俺がセシルをオンブしたとして・・・体重、何キロあんだよ」


「普通の女の子よりは少しだけ重いと思うけど・・・」


「ガイノイドが基本、普通の女の子より少しなんてありえないだろ?」


「セシルを・・・オンブなんかしたら、俺の腰か足の骨が重さに耐えられなくて

ボキボキッて折れちゃうだろ」

「君をマンションに連れて帰る前に俺が病院送りになるわ 」


タダとが言え、ちょっとやっかいな子を背負い込んじゃったんじゃないかって

ちょっと不安がよぎる。


「いいから歩いて・・・タクシーなんか拾わないからな」


そういって俺はセシルを引っ張って、電車に乗り、バスに乗り、のろのろ歩いて

ようやくマンションまで帰って来た。


「未来ちゃん・・・私疲れた・・・もう歩けないですぅ」


「ガイノイドが?、疲れたりするのか?、人間みたいに?」

「ほら、もう少しだから・・・」


問題はエレベーターか?・・・・大丈夫かな?

定員オーバーにならないかな。


恐る恐るセシルをエレベーターに乗せてみた。

そのあと俺が乗り込もうとしたら案の定、定員オーバーのブザーが鳴った。


「セシルひとりならなんとかクリアできるのか・・・」

「彼女ひとりでエレベーターにも乗れないとなるとのちのち買い物も行けない

もんな」


「あのさ、セシルだけなら大丈夫そうだから五階まで上がってエレベーター

降りてよ 」


「え〜こんな狭いところにひとりになるのヤだ」

「未来ちゃんと一緒じゃなきゃヤダ」

「それに私、閉所恐怖症だし暗いとこ怖いし、高所恐怖症もあるし・・・

おまけに芋虫嫌いだし・・・ゴッキーも嫌いだし・・・アトピーだし・・・」

「あ、花粉症もあるの・・・」


「アトピーだって?・・・花粉症?・・・ガイノイドが?・・・言うに事欠いて?」

「そんなの聞いたことないけどな・・・」


「まあいいわ・・・俺も後からすぐ上がるから・・・先に行って・・・頼むから」

「そうしないとバカみたいにずっとここにいなきゃいけなくなるだろ?」

「階段って手もあるけど歩くのイヤなんだろ?」


「ヤダ・・・死んでもヤダ」


もう勘弁してくれないかな・・・初日からこれかよ。

どこのメーカーがセシルを作ったのか知らないけど、みんなこんな感じなのか?

つうか、最初っから手間がかかるように作ってあるのかよ。


「あの未来ちゃん・・・私、服全部脱いじゃってもダメ?」


「服の重量減ったからってどれだけ軽くなるんだよ」

「しかも裸の女がエレベーターから降りて来たりしたらマンションの他の住人が

見たらパニックになるだろ? 」


「頼むからさ勇気出して一人で行ってくれよ」


「分かった、ひとりで行って来る・・・でも早く来てね」

「3秒で来て!!」


「行けるか!!」


その時点でセシルは絶対家政婦、無理そうな気がした・・・。

たぶん保証もないくらいだし、タダだから返却ももう効かないだろうし・・・。


まあ、なにも出来なくてもセシルのビジュアル眺めてるだけでもいいけど・・・。

でっかい床の間コレクションにはなりそうだけど、この性格だとまず俺に飽きる

暇はなさそうだな・・・飽きる、じゃなくて呆れる?

かもしれないけどね・・・。


つづく。



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