第7話
よし、覚悟完了。
「なんか大変なことになりそうだねぇ」
『現実逃避するな』
「いやいや、覚悟を決めたんだよ?」
『ホントかー?いや、ホントっぽいな……』
ロキは僕の心を読める癖に何故か訝しんでいる。
とりあえず目の前のダンジョンコアで迷宮の設定を変更するか。
(よし、ダンジョンコアで『迷宮を停止』)
ダンジョンコアが一瞬黒い光を放ち、心なしかダンジョンが静かになったような気がする。
(ダンジョンを停止したから新しくモンスターは湧かないんだっけ?)
『ああ、既に湧いてたモンスターがまだ迷宮内を徘徊しているだろうがな』
(ところで、このダンジョンコアって収納しても大丈夫かな?)
僕は1メートル程の黒い球体の上に手を置いてロキへと尋ねる。
『夢幻帯星の欠片を内包してるからそもそも収納は無理……、いや、本体ではないなら生きてはいないか。試してみないと分からん』
ロキでも分からないのなら試すしかない。
(『次元収納』、ダンジョンコア)
そう念じた瞬間、黒い球体は一瞬で消え去り収納された。
(おっ、収納できた。ダンジョンへの影響も……無さそう)
もしかしたらダンジョンコアが無くなったことでダンジョンから追い出されるかもと思ったが、特に何も起こらない。
『迷宮を最小化じゃなくて良かったのか?』
(色々と検証しながら歩きたいからね)
そう返答し、これまで歩いてきた道を引き返す。
「『つよさをみる』」
──────────
名前:久保幹兎
所有ポイント:306
固有スキル:初回限定ドロップ
スキル:次元収納、超然再生、物理破壊耐性、腐蝕耐性、超酸射出、悪食、大食い、詐術、猛毒耐性、古代北欧魔術、神話級鍛治、変神、迷宮の覇者
[機能]
──────────
僕はそのままスキル欄の最後に追加された『迷宮の覇者』をタップする。
──────────
迷宮の覇者(ランク1)
スキル名を唱えることで発動。発動中、半径1キロメートル以内のモンスターの位置を探知する。迷宮外で使用すると、半径1キロメートル以内のモンスターと迷宮の位置を探知する。
──────────
効果はモンスターの居場所を探知するもので、かなり使えそうだ。
更に、ダンジョンの外で使うと効果範囲中のダンジョンの場所が分かるらしい。
ついでに機能からステータスを呼び出して、所有ポイントを振り分けてみようかな。
つよさをみるの画面から機能を呼び出し、ステータス画面を開く。
────────────
VITA 312/312
MANA 680/680
STR 276
DEF 180
AGI 366
MAG 720
RES 639
LUK 495
────────────
ん?
えっ!?
「つよッ!?」
待って待って、何でこんなに高いんだ?
前見た時はこんなに高くはなかったのに。
『変神スキルの効果だな。肉体そのものを作り変えるから、ステータスは肉体に引っ張られる』
言われるまで忘れていたが、今の僕の身体は女の子なんだった。
「こんな華奢っぽい身体なのにどうしてこんな高いの!?」
『そりゃあ、その身体の参考にした奴は「神話時代」の人間だからなぁ』
神話時代の人間、スペックが高過ぎる。
前と比べて筋力は3倍、守りは2倍、素早さは3倍強。
加えて、前まではゼロだった魔力と魔力量が爆発的に増えている。
(でもちょうど良かった。魔力に割り振って魔法の練習をしようと思ってたんだ)
『魔術の修行か?確かに
ロキによると魔法は難しいらしい。
ついでに、ステータスのMANAは魔力、MAGは魔技と呼称するのが正確なようだ。
(そんなに難しいの?)
『ああ。
そんなに時間がかかるんだ。
よし、早速やってみよう。
自らの体内に意識を向け、魔力と呼ばれるものを探してみる。
すぐに身体から溢れる得体の知れない力を発見する。
(これかな?)
『そんなすぐ感じ取れる訳ないだろ』
ロキにそう言われたので、魔力を手のひらへと集める。
(どう?)
『あ、……集まってる!?何で!?』
実はこの魔力、僕が厨二病の頃にイメージしていたオーラの感覚とぴったり合致していた。
(うん、オーラに似ている)
『オーラ!?今の人間世界にはそんなもんがあるのか!?』
(いや、無いけど)
『な、無いの!!??』
脳内でロキの困惑の叫び声が響く。
小さい頃から僕はなるべくお金の掛からない趣味を探してきた。
特に中学生の頃は好きな漫画の影響でオーラに目覚める為に毎日瞑想したり、オーラを感じ取る修行をしていた。
それが偶然マナを扱う感覚とミラクルフィットしてしまい、オーラの為の3年分の修行がそのまま魔力の修行になっていたらしい。
「とりあえず、これで魔力はOKだね」
『納得いかねぇ……。まあ、良いか。オマエは古代北欧魔術のスキルを持ってるから魔術を教えてやるよ』
「おおー、ところで呼び方にこだわりがあるようだけど、魔術と魔法って何か違うの?」
『ん?んー、魔術は安定してるが使用した魔力の分しか神秘を起こせない。魔法は不安定だが爆発力がある感じだな。魔術が10+10=20なら、魔法は10と10で0になったり100になったりする』
「なるほど」
分からん。
『で、オマエが学ぶのは安定してる方の魔術だな。古代北欧魔術の基礎は3つ。魔力を飛ばすガンド、強化を行うメギン、精神干渉するセイズだ』
「が、ガンド、めぎん、せ、せ……」
急に横文字を言われ、頭がこんらががる、こんがが、こんがらがる。
『いっぺんに覚えようとするとパニクりそうだから、まずは「ガンド」だけ覚えような』
「そうしてくれるとありがたい」
『ガンドは身体から魔力を放つ魔術だ。1番ポピュラーなのは指先から魔力をぶっ放して相手にぶつける。これを普通にガンドと呼んでいる』
「へえ、霊丸みたいな」
『?』
僕の感想にロキは?マークを浮かべているのを感じる。
『……まあ良い、オマエの魔力制御なら使えるはずだ。指先に使う分の魔力を集め、イメージし、魔術名を唱えて発動に至る』
僕は壁に向かって指を差し、指先に魔力を集めて脳内で魔力の弾丸が飛ぶ
『魔術は魔術名が発動に必須だ。慣れたら脳内で唱えても発動出来る。オマエが使う魔術の名は、ガンド』
「『ガンド』」
術名を唱えると同時に、指先に集めていた魔力が脳裏に思い描いていた通りに放たれ、硬そうな岩の壁に当たって粉塵を舞い上げる。
空気中を舞っていた塵が晴れると、岩壁には銃痕のような小さな穴が空いていた。
「おお!」
初めて使った魔術に感動を覚える。
威力も中々高そうだ。
それに、魔術名を唱えて発射というのは寝ている時の誤射を防いでくれそうで安心感がある。
そう考えると、なんかパスワードみたいだ。
「そういえば、君がサーモンだった時になんかガンドみたいなの使ってたよね」
『覚えてたのか。オイラが使ったのは「ロギガンド」。ロギはオイラの神話において野火という意味で、弱い炎属性を表す。ま、要するに魔力を炎の塊にしてぶつけるガンドだな』
「へぇ、属性とかもあるんだ」
『オイラは炎の神としての一面もあるから炎属性が得意だな。オイラの神性を取り込んだし、オマエも多分炎属性は得意なはず』
「覚えておく」
でも、指先に炎を灯して撃つのは火傷しそうだしちょっと怖かった。
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