第3話

美空は良介とセックスレスになって何年経つ

んだろうとふと考えた。

新婚の頃は2日に1度は求められた記憶がある。

当時、良介が暮らしていたアパートに美空が同居する形で結婚生活はスタートした。

実家の近くだった職場がドアツードアで1時間半かかることになり身体が弱い美空はそれだけでもかなり体力を消耗した。

さらに趣味の剣道で帰りが遅い良介を待ち夕食をだしそこから洗濯をし…

そう美空を新婚時代から苦しめたのは良介の趣味だった。

剣道の稽古は週に5日行きバイクで仲間と数泊のツーリングにも行く。

資格取得にも忙しく土日は勉強会や試験の受験。

良介をサポートする形で始まった結婚生活。

職場の上司に「よ、新婚さん!」と言われた時のあの不思議な感情…

そうだ、私って「新婚さん」なんだよね。

こんなに疲れ切っているけれど周りからは甘い毎日を過ごしていると思われているんだ…

上司が茶化したような甘い生活ならあんなふうにからかわれて顔を赤らめた美空だったかもしれない。

でもその時の美空は何も言えず宙をみるような表情をしていた。

クタクタの毎日ではセックスなど楽しめる理由もなく美空はなんとか良介の求めに応じていた。

それは快楽も慈しみも感じられない良介が最終的に射精することだけを目的としたものだった。

良介しか知らない美空にはそれが「セックス」というものだった。

性に探究心がない良介にとってもまたそれが「セックス」というものだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る