第5話

父親が「最後に子供達に会いたい」と言ったらしい。

コンビニに連れて行かれ「好きなだけお菓子を買え」と言われた。

僕は「要らない」と言った。

なんであの日、弟にピーパリを買わなかったのか?と思った。

馬鹿な兄弟たちもその時は控えめに菓子を選んでいた。

つまらなかった。早く済ませたかった。

それから僕らは急な引っ越しが決まって、選ばれていた3学期のクラス委員を辞退した。

勉強は出来たけどフザケていたので選ばれたのは初めてだった。

その後もクラス委員に選ばれる事はなかった。

ずっと好きだった女の子の友達に呼び出され、その子と引き合わされたけど、何も喋れなかった。

当時、あたらしい父親は羽振りが良く、母親は家政婦という名目から奥さんになった。

有り難いと感じた。まるで馴染めなかったけど。

その頃にはもうひとり弟が居たが、父親が誰かはわからなかった。

わかっていても、認めたくなかった。

どちらとも違う男だったから。

僕らは名字が変わるのが嫌で、戸籍上は父親の方で、実際は名字が変わった母親と暮した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕が考えた世界 双葉紫明 @futabasimei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る