【短編】パズル
作梶慎
本文
気がつくと、私の体はバラバラだった。
片方の目は私の足の裏が私の背中を蹴っている所を写し、もう一方は……なんだろう。どこかの断面だろうか。何か赤いものが見える気がするが、何せ暗くてよく分からない。
少し重さは感じるので、きっと体の一部でも乗っかっているのだろう。
……自分でも驚いている。状況に対して落ち着きすぎではないだろうか。
状況が飲み込めていないからか、意識がはっきりしていないからか、元々自分に興味が持てなかったからか……。
最後に覚えているのは少し揺れががあったことだけだ。
ところで、ここはどこだろう。調べるには身体を組み立てる必要があるな。
指を動かしてみる。動く。右手は手のひらが上になっている。ジタバタすることしかできないのがもどかしい。腕さえあればひっくり返せたりしないだろうか。
左手は……。いける。良かった。地面を掴むようにかけば移動が可能だ。
移動の問題は解決。とすると、次は視界か。
動き回って背中にさえ到達すれば目で見えるだろうか。
…………………………。
ところどころ棒のようなものや細長い肉にぶつかりぶつかられしていたが、なんとか背中に触れることに成功。
視界の端にも指が映っている!
定点カメラな視界に苦戦しながらも目玉に辿り着き、それを親指と人差し指でつまむ。
自分の目玉は石のように冷たく、手は氷水で冷やしたかのように冷たかった。
自分の生死は気になるところだが、身の回りを確認しなければ。
目玉を持ち上げ確認してみる。
足やら手やら胴などの身体パーツの他、筆記用具なども落ちている。
思ったよりも強い揺れだったのだろうか……。
だが、視界と移動手段さえあれば、あとは勝手知ったる自分の体だ。
組み立てて何事もなかったように、またここで自分の役目を果たし続けよう。
……ついでに他のものも拾っておくか。
「おはようございます〜。昨日夜中ぐらいに結構揺れましたよね〜」
「そうなんですか?寝てて気がつきませんでしたよ」
「机の上とかペンとか結構倒れてて大変だったんですよ?
田中先生、1限目理科室でしたよね?始まる前に確認したほうがいいんじゃないですか?」
「まあ、そうですね。ちょっと行ってきます」
…………………
「別にいつも通りでしたよ。ペン一本、落ちていませんでした」
「ええ〜!?ホントですかぁ?でも例の模型とか……」
「佐藤先生、そろそろ朝礼の時間ですよ」
「えっ!あっ!はいっ!お疲れ様です!」
【短編】パズル 作梶慎 @sakukazisin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます